「地球シミュレータ」は東京を長周期地震動から救えるか――地球シミュレータと耐震ビルがつながる未来コンテンツ時代の未来予想図(4/6 ページ)

» 2005年11月22日 13時28分 公開
[中村文雄,ITmedia]

地球シミュレータによる“夢の耐震システム”は可能か

 東海地震のシミュレーションでは200メートル四方ごとの長周期地震動の大きさが分かり、それを基本データにすれば、建物ごとの揺れも算出できるはずだ。高層ビルのような大規模構造物の場合は、地下の状況を詳細に調査してから建設されているので、それらの情報から正確な揺れが予測できる。

 古村助教授は、東京工業大学の市村強助教授の協力を得て、東海地震の長周期地震動による都市の構造物の振動をシミュレーションした。東京都心は震源から400キロ離れているので、震度は4〜5程度だが、7秒前後の長周期地震動が強く表れる。シミュレーションでは、7秒前後の長周期地震動が5分から10分続き、高層ビルが大きな影響を受けることが判明した。このシミュレーションでは、高層ビルが設計基準を満たしており、劣化していなければ十分耐えられる数字が算出された。古村助教授らは、長周期地震動のシミュレーションを続けて、さらに詳細な結果を出していく考えだ。

東海地震の長周期地震動による東京都心の構造物の振動シミュレーション。計算結果は東京工業大学の市村強助教授によるもの

 気象庁は、2004年2月より「緊急地震速報」の試験運用を開始した。2005年8月16日に起きた宮城県沖地震では、11時46分40.6秒に震源に最も近い観測点で地震波を検知し、その4.5秒後に緊急地震速報の第一報を発信している。第一報がもたらされた10秒後に震度5強の揺れが宮城県石巻市に到達した。つまり、地震の大きな揺れが到達する前に、地震の発生を知ることが可能になったのだ。

 そこで、緊急地震速報によって、自動的にガス栓を遮断したり、暖房器具を止める自動防災システムの開発が進んでいる(関連記事)。それをさらに進化させたのが、冒頭に記した「地震の第1波をキャッチして自動的に耐震対策を実行する高層ビル」という“夢の耐震システム”。具体的には次のようなものだ。

 地震の第1波から発生エネルギー、震源の断層面と断層方向などを割り出し、その震源モデルを地球シミュレータにリアルタイムで入力する。地球シミュレータは長周期地震動が到達する前に危険地域の振動を計算して各高層ビルに送信。その結果を受信した高層ビルのコンピュータがビルの揺れを分析して、耐震装置が揺れを軽減する。

 例えば、東海地震の場合、震源から都心までは400キロ以上あり、地震波が到達する時間は90秒程度である。地球シミュレータを使えば、長周期地震動による危険地域の振動を90秒以内に計算することは可能だろう。データの精度に関する課題などをクリアできれば、将来、“夢の耐震システム”が実現するかもしれない。

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