「名刺代わり」で終わらせない戦略的Webサイトとは?ゼロから始める中小企業IT化への道

企業が自社のWebサイトを持つの当然。自社サイトを持たない企業の方がむしろまれな存在となった。しかし、中小企業がWebサイト作成しても単なる「名刺代わり」になっていることが多いのではないだろうか。

» 2006年05月17日 12時00分 公開
[伊嶋謙二,ITmedia]

 中小企業においても自社のWebサイトを設置し、ビジネスに活用しようとするケースが増えてきた。しかしその思いとは裏腹に、せっかく設置したWebサイトを有効に活用できている企業は少ないのではないだろうか。今回から2回にわたって中小企業がすぐにできる戦略的なWebサイトの活用法について考えてみよう。

サイトは使える営業ツール

 中小企業のWebサイトを見てみると、そのスタイルは企業によってさまざまだ。単に企業情報のみを開示して更新を行わず「名刺代わり」にしている企業もあれば、ECサイトを立ち上げてインターネット上で商売を行っている企業もある。

 企業にとってWebサイトを持つ意味は、大ざっぱだが2種類に分類できる。実際に行っているビジネス(リアルビジネス)を補完するためと、サイトそのものでビジネスを展開するための2つだ。今回は、あくまでリアルビジネスを補完する意味でのツールとしてWebサイトを有効活用する方法を考えてみよう。

 そこで最初に問題となるのは、Webサイトの内容である。「ただ置いてあるだけ=名刺代わり」のサイトを見たユーザーが顧客につながるとは考えにくい。リアルビジネスを補完するツールとしてWebサイトを活用するには、ユーザーにとって必要最低限の内容をそろえていることが肝要だ。つまり、Webサイトを見たユーザーが「これは利用価値がある」と思えるような内容が掲載されている必要がある。

 1つの例として、ノークリサーチが、中小企業がコンピュータを導入・検討する際、どのような目的でWebサイトにアクセスするのか、調査した結果がある。この結果からは企業サイトにアクセスしてくる顧客が求めている最低限の内容が分かる。中小企業にとっても参考になるだろう。

図1 出典:ノークリサーチ「2005年版中堅・中小企業のITソリューションの実態と展望」

 コンピュータの導入を検討する中小企業がメーカーのWebサイトにアクセスする目的のトップは、「最新製品の情報入手」で79.0%と圧倒的に高く、次いで「価格情報の入手」53.4%、「サポート情報の入手」52.0%となっている。その後「導入製品のメーカー選定」43.5%、「製品の購入」21.6%などと続く。

 この結果から明らかなように、顧客が企業のWebサイトにアクセスする目的は、最新情報を入手するためだ。例えば、顧客がある製品・サービスの導入を検討するにあたっては、特に(1)最新製品・サービスの情報、(2)予算に合う製品の有無――の2点を優先している。しかも最新情報を調べる上で、実際の顧客は圧倒的に企業のサイトを利用しているのだ。

 Webサイトであれば、顧客が好きなときにアクセスすることができ、好きなだけ情報を入手できる。そのため、上図のように、最新製品、価格、サポート情報などの情報入手を目的とする顧客が多くなっている。サイトにこのような情報を載せることで、顧客は「このサイトは利用価値がある」と思い、顧客を獲得できる可能性が広がってくる。

 ただし、いくら必要な情報を掲載していても、1年間も更新されないサイトではユーザーが離れてしまう。サイトの更新頻度を高め、アクセスしてくるユーザーに常にフレッシュな情報が得られると感じ取らせる必要がある。例えば、毎週月曜日に更新するように決めておけば、顧客は自社サイトに月曜日にアクセスしてくれるようになったりする。このようなタイミングに合わせて、各種の販促キャンペーンなどを告知すれば、Webサイトを名刺代わり以上の有効なツールとして機能させることができるだろう。

サイトの充実が顧客獲得への第一歩

 これまでの流れから、顧客が利用したいと思うサイトは「ユーザーにとって有益な情報があり、更新頻度の高いサイト」だということが分かっただろう。そのほかにも、「見やすさ」「使いやすさ」も大切な要素となってくるが、まず中小企業ができることとしてサイトの内容と更新頻度に気を遣うのがいいだろう。役立つ情報を顧客に定期的に発信(更新)することで、サイトや企業への信頼は高まり、営業や販売に必ず役立ってくるのである。

 とはいっても、誰にも知られないところで、充実したサイトを作っていても仕方がない。次回は、戦略的なサイト活用で最も重要な「いかにサイトにアクセスしてもらうか」について述べたい。

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