ハイアベイラビリティにまつわる誤解(2/3 ページ)

» 2007年01月15日 08時00分 公開
[Matt Fairbanks,ITmedia]

ソフトウェア技術 vs. アベイラビリティへの脅威

 このような脅威から私たちの環境を守ってくれるツールを概観してみよう。アベイラビリティで最も基本となるレベルは、ITインフラの基本的な安全網となる、ディスクやテープへのバックアップである。毎日のバックアップをどの程度の頻度で行っているかにもよるが、バックアップによりデータ破損で失われるデータ量をおよそ24時間分まで引き下げることができる。

 24時間分ものデータを失うのは多すぎるという場合は、次の段階として、ローカルな環境のミラーリングがある。データセンター内でリアルタイムなアベイラビリティが提供できるように、ディスク上の最新データのコピーを常に作っておくのである。

 データのアベイラビリティが確立できたら、次はサーバとビジネスアプリケーションの保護である。ローカルな環境にクラスタリング技術を導入すれば、複数のサーバを1つのリソースとしてグループ化することができる。サーバ1台に障害が発生しても、クラスタ内のほかのサーバへフェイルオーバーが行われる。ダウンタイムは数分程度、場合によっては数秒程度まで削減することができる。

 バックアップとミラーリング、ローカルな環境のクラスタリングを行えば、アベイラビリティに対するローカルな脅威、つまり、前述した脅威のうち最初の5項目への防御は万全である。しかし、災害によってサイト全体が停止するなど、予想外の事態が起きた場合はどうすればいいのだろうか。環境全体は、リモートサイトにおいてデータとリソースのアベイラビリティを確立することによって保護することができる。このような場合に利用可能なツールは、複製とクラスタリングの2種類である。

 複製技術を利用することにより、別の場所に用意されたディスクストレージへ、オンラインでリアルタイムにデータのコピーを作成することができる。クラスタリングでは、これ以上のことが行える。データだけでなくアプリケーションも複製するのだ。つまり、主要なサイトが完全に停止しても、ボタンをクリックするだけでバックアップ環境でサービスを復活させることができる。これが、実現が可能な最高レベルのアベイラビリティである。

 このような技術の組合せは、年中無休のアベイラビリティを提供できるだけでなく、IT部門において大幅なコスト削減と優れたROI(投資回収率)を実現できる。これを念頭に置いた上で、最初に紹介した4種類の誤解について、詳しく見ていこう。

誤解その1:ハイアベイラビリティはコストがかかりすぎる

 一般に、ハイアベイラビリティを実現するためには、ハードウェア全体を二重化しなければならないと考えられている。アプリケーションに対するサーバ容量を二重化し、システムを二重化し、サイトを二重化し、しかも、両サイトとも同じタイプのサーバと同じレベルのOSを使っていなければならないというわけだ。クラスタリングソフトウェアを採用している企業の多くはアクティブ/パッシブ環境としており、障害に備えて多くのサーバがアイドル状態となっている。

 ハードウェアの稼働率が低く、OSの制限にも甘んじなければハイアベイラビリティを得ることができないというこの考えは、幸いなことに間違っている。ハードウェアの買い増しをしなくとも、クラスタリングとハイアベイラビリティを環境に付与することはできるのだ。OSの制限なく、複数ベンダーのプラットフォームが混在していても、現在持っているリソースによってハイアベイラビリティ環境を構築できるソフトウェアが存在するからだ。Sun Solaris、HP-UX、IBM AIX、Windows、Linuxと多種多様なOS(1つのOSで複数のバージョンが混在していてもよい)が稼働している、異なるサーバ群にも、単一のクラスタリングソリューションによって、高いサーバ稼働率を持つ統一的なハイアベイラビリティ環境を構築することができるのだ。

 では、典型的なものとして、ペア構成のサーバと各種OSを使用した環境を考えてみよう。ペア構成の一部はアクティブ/パッシブとなっている。これは最高のアベイラビリティが得られる構成だが、片方のサーバは完全に待機状態で、障害発生をただ待っているだけの最もコストがかかるアプローチでもある。ペア構成の一部はコスト効果がもっと高いアクティブ/アクティブとなっている。

 ただし、アクティブ/パッシブ型のアプローチよりもアベイラビリティは大幅に低くなる。片方のサーバに障害が発生すると、もう一方が2台分働かなければならなくなり、結果としてパフォーマンスが落ち、ソリューション全体のアベイラビリティは低くなるからだ。

 これに対し、1つのソリューションをすべてのプラットフォームに適用し、すべてのサーバを単一のクラスタ環境にまとめてしまうことができる。結果として、高いアベイラビリティと高いサーバ稼働率を実現し、ハードウェア投資を最大限に活用できる。ハイアベイラビリティは高コストであるという誤解を打ち砕くことが可能なのである。

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