ハイアベイラビリティにまつわる誤解(3/3 ページ)

» 2007年01月15日 08時00分 公開
[Matt Fairbanks,ITmedia]
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誤解その2:ハイアベイラビリティは複雑すぎる

 ハイアベイラビリティは、一般に複雑だと考えられている。その理由は、従来のハードウェアによるアプローチでは、ベンダーにクラスタを(高い費用で)インストールしてもらい、新しいアプリケーションをオンラインにするたびに専門サービスを受けて料金を支払う必要があるからだ。

 管理が労働集約的であるという問題もある。さまざまな種類のサーバとOS、アプリケーションを使って実現したハイアベイラビリティを管理することは、時間がかかる大変な作業である。5種類のサーバプラットフォームで複数のアプリケーションを使用している場合、プラットフォームごとに異なるクラスタリングソリューションが必要であり、もともとコストのかさんでいた管理費がさらに上昇する結果になる。

 複数のプラットフォームとOSにわたり単一のクラスタリングプラットフォームが使えるソフトウェアであれば、ハイアベイラビリティを実現すると同時に複雑度を引き下げ、コストを削減することも可能である。最初のクラスタを設置した後は(ここまでに要する時間はわずか数分である)、管理者であれば誰でも、容易かつ迅速に、そのクラスタを拡大したり新しいクラスタを構築したりすることができる。

 このようなクラスタリングツールでは、ノードの構成を変更した後、その変更を全ノードに適用することもできる。1つのGUIからすべてのノードを管理可能で、クラスタ内のノード間やリモートのノードとの間でフェイルオーバーを簡単に行うことができる。

誤解その3:効果測定が難しすぎる

 従来のハイアベイラビリティアプローチが抱える問題の1つに、その成果を十分に測定する方法がないということが挙げられる。5回の夜間運転でダウンタイムを2時間以下にするというSLA(サービスレベル保証契約)をIT部門が事業部に対して締結していたとしよう。この目標を達成することは可能かもしれないが、達成できたかどうかを確認する方法がないのだ。あるいはアベイラビリティに問題が生じたかもしれないが、SLAが計測不可能であり履歴レポートもないという状態では、実際上、パフォーマンスを検証したり問題を特定したりすることは不可能である。アプリケーション障害なのか、コンポーネント障害なのか、はたまた人為的ミスなのか。残念ながら、誰にもわからないことが多い。

 しかし、統合レポーティングツールの登場により、アベイラビリティの追跡や結果のレポート、トレンドの解析、問題の特定ができるようになった。このツールがあれば、SLA要件を満たしていると断言できるし、それを履歴レポートによって証明することもできるのだ。

誤解その4:テストが難しすぎる

 災害復旧ソリューションを実装する際、IT管理者が直面する問題に不確実性がある。ある構成を稼働しても、深刻なダウンタイムが発生するまでは、採用した構成が必ず上手く働いてくれると100%の自信をもって言うことはできない。しかし、このダウンタイムこそ発生しないように防止したいことである。つまり、システムをテストしてみる必要があるのだ。

 しかし、アベイラビリティのテストは矛盾をはらんでいる。アベイラビリティシステムが正しく動作することを確認するためには、アベイラビリティを失うリスクを冒さなければならない。企業はテストによってダウンタイムが発生するリスクを冒したくないと考えるため、結局、数百万ドルもの費用をかけて実装した災害復旧計画が正しく機能してくれるかどうか、確かめることができないでいることが多い。ただ、盲目的に信じて運用しているとも言える。

 実際に災害復旧計画のテストを行うと決めた場合でも、テストは面倒で長時間が必要だ。数多くのステップが必要であるし、ほとんどの場合、作業は週末や深夜に行わなければならない。

 これに対し、ファイアドリル(避難訓練)プロセスにより、予備システム上で災害復旧のテストを行ってからプロダクション環境へ持って行くという方法がある。ファイアドリルでは、クラスタリングプロセスや複製プロセスを含めて環境のクローンコピーを構築し、コピーに対してテストを行う。そのため、プロダクション環境が影響を受けることはない。そして、策定した災害復旧計画がどの程度の効果を持つのか、明確に知ることができる。

災害復旧

コストがかかりすぎるというだけの理由で、災害復旧機構を実装しない企業が多い。多くは、予備サイトへのデータ保護を中心に考えるが、そのデータにアクセスできるよう、ダウンしたアプリケーションをもう一度走らせるということは考えない。アプリケーションを自動的に修復することは今の技術では不可能だと考えられており、データ保護に焦点が当てられているのだ。

 コスト効果に優れた最近のソフトウェア技術は、ビジネスクリティカルなアプリケーションとデータの両方について統合された修復が可能である。災害復旧プロセスを自動化し、人為的ミスによるダウンタイムの可能性をなくすこともできる。文字通り、ワンクリックの動作だ。単一のクラスタの単一のソリューションから、統合的な修復機能を実装することが可能である。ローカルでも通りの向こうからでも、あるいは、地球の反対側からでも、どのような位置からでも可能である。

複製

 企業の多くは、今も従来型のハードウェアによるアプローチで複製を行っている。この場合、主要サイトと同じコンピューティングハードウェアとストレージハードウェアを予備のサイトにも設置しなければならない。これは広く普及している方法だが、一方でベンダーやOSをIT部門が自由に選択することもできなければ、他社からの購入もできないため、コストが非常にかかる方法でもある。さらに、二重の専用FibreChannelが必要となるため、短期的には距離に制限が生じる。長期的には、FibreChannel-over-IPコンバータが必要となり、コストはさらに膨らむ。

 このようにハードウェアを二重化するのではなく、ボリュームを二重化したらいいのではないだろうか。ボリューム管理ソフトウェアツールなら、どのようなハードウェアでもどのようなネットワーク経由でも、また、どれほど遠方からでも完璧な複製が行えるため、非常に低コストでデータの回復が可能だ。


 画期的なソフトウェア技術の使い方がわかれば、ハイアベイラビリティにまつわる誤解を解消することができる。この方法は、従来のハードウェアソリューションよりもはるかに低コストである。管理も複雑ではない。実際、管理は大幅に簡素化される。分単位の時間で実装できるし、測定や解析、報告も簡単に行える。ハイアベイラビリティが、ほとんどの企業にとって手の届くものとなるのである。

マット・フェアバンクス(Matt Fairbanks)

シマンテックコーポレーション ストレージ&サーバマネジメントグループ プロダクトマネジメント シニアディレクター



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