第8回 ケータイ、PHS、それともイー・モバイル?(後編)再考・ワイヤレスネットワーク(2/3 ページ)

» 2007年05月31日 08時00分 公開
[池田冬彦,ITmedia]

最初は戸惑う独特の操作インタフェース

 EM・ONEを起動するとWindows Mobile 5(以下、WM5)の初期画面(Today画面と呼ばれる)が表示される。ここでスタイラスペンを使って「スタート」アイコンをクリックするとメニューが表示され、プログラムの起動や設定などが行える。しかし、EM・ONEを「ノートPCの代わり」と思って使おうとすると、かなり面食らうに違いない。

図4 EM・ONEを起動するとこの画面(Today画面)が表示される。デスクトップもなくマルチウィンドウにも対応していないため、最初は操作に戸惑うユーザーもいることだろう(クリックで拡大)

 WM5の仕様は、普通のWindowsとはかなり異なる独特のものである。例えば、付属アプリケーションを右上の「×」ボタンで終わらせたつもりでも、それはウィンドウが閉じただけであり、アプリケーションは起動したままなのだ。終了させるにはToday画面に登録されている「実行中のプログラム」をタップし、アプリケーションを選んで「終了」をタップする必要がある。

図5 主にマイクロソフト製アプリケーションはメニューに「終了」がない。終了させるには「設定」の「メモリ」画面で「終了」もしくは「すべてを終了」をタップする必要がある(クリックで拡大)

 WM5では複数のアプリケーションを同時に起動できるので、終了させずに次々とアプリケーションを起動させていくと、すぐにメモリが足りなくなる。プログラム実行用のメモリ領域は111.2MBしかなく、同時起動プロセス数は最大32まで。1プロセス当たりのメモリサイズは32MBまでだ。これはWM5の仕様である。

 また、ファイル操作の方法もWindows XPやWindows Vistaとはかなり違う。ファイルを参照するには「プログラム」から「ファイルエクスプローラ」を起動する必要があり、ファイルのコピーや削除などの操作はWindowsの「右クリックメニュー」のようなメニューで行う。「じかにハードディスクやフォルダをダブルクリックし、マウスでドラッグ&ドロップして……」というわけにはいかない。

 このほか、付属するOutlookはメールの振り分け機能がなかったり、「SHメール」はSSLメールに対応していないなど、PCで普通に通用してきた常識が通用しないことがある。こうした環境は、モバイルの世界をよく知るユーザーにとっては当たり前とも言えることだが、機能が制限されているがゆえに、その制約をどうクリアしてEM・ONEの良さを引き出すかが勝負になるのだ。

 しかし、モバイルの世界を知らない一般的なユーザーは、恐らくEM・ONEを渡されて「今日から使ってね」と言われても戸惑うはずだ。EM・ONEを企業に導入する際は、モバイル環境に熟知したユーザー、もしくは管理者がWM5の利用環境を整えた上で、十分な社員教育を施す必要がある。

HSDPAはやっぱり速い!

 早速、インターネットアクセスから検証してみよう。筆者の仕事場は、幸いなことにイー・モバイルの電波が良好に受信できる。まずは、HSDPA方式のデータ通信の快適度をチェックしてみることにしよう。

 Internet Explorerを使って「ITmedia Enterprise」のトップページにアクセスすると、すべての内容を表示するまでの時間はおよそ1分。やや重たいページであるにもかかわらず、かなり快適だ。これなら、Webブラウズも実用的なレベルと言えるだろう。また、Webサーバにある10MBのファイルをブラウザ経由でダウンロードしてみると、およそ50秒前後(1.6Mbps)だった。PHS通信と比べてもダントツの速さだ。

図6 Operaで「ITmedia Enterprise」のページを表示したところ(クリックで拡大)

 次に、オフィスの無線LANに接続して同様の検証を行ってみた。EM・ONEはIEEE 802.11b/gの無線LAN規格に対応している。しかし、Webブラウズやファイルのダウンロード時間はHSDPA接続時とほとんど変わらない。恐らくこの原因は、EM・ONE自体のCPU(PXA270/520MHz)という組み込みプロセッサ)のパワーやWindows Mobile 5の処理能力がボトルネックになっているものと思われる。

通信速度の計測結果
通信方式 処理 所要時間
HSDPA接続 Webブラウズ(Opera) 1分11秒
ファイルダウンロード 51秒(1.6Mbps)
無線LAN Webブラウズ(Opera) 1分4秒
ファイルダウンロード 52秒(1.6Mbps)
Webブラウザは「Opera」を使っている。OperaではITmedia Enterpriseのページを70%に縮小すると全体が表示できた。Internet Explorerでもアクセスしてみたが、なぜか読み込みが途中でストップしてそのままフリーズしてしまった

 なお、ずっとWebブラウジングをしていると、およそ2時間弱でバッテリー警告が表示される。使っていないときはまめに電源を切り、ワンセグ放送の受信や動画再生などを行わないようにしないと、あっという間にバッテリーが空になってしまう。標準のバッテリー容量は1200mAhだが、オプションで2000mAhの大容量バッテリー(8820円)も用意されている。こちらを購入しておくことをお勧めしたい。なお、筆者が使った限りでは、およそ3時間半〜4時間の連続使用が可能だった。

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