EM・ONEを起動するとWindows Mobile 5(以下、WM5)の初期画面(Today画面と呼ばれる)が表示される。ここでスタイラスペンを使って「スタート」アイコンをクリックするとメニューが表示され、プログラムの起動や設定などが行える。しかし、EM・ONEを「ノートPCの代わり」と思って使おうとすると、かなり面食らうに違いない。
WM5の仕様は、普通のWindowsとはかなり異なる独特のものである。例えば、付属アプリケーションを右上の「×」ボタンで終わらせたつもりでも、それはウィンドウが閉じただけであり、アプリケーションは起動したままなのだ。終了させるにはToday画面に登録されている「実行中のプログラム」をタップし、アプリケーションを選んで「終了」をタップする必要がある。
WM5では複数のアプリケーションを同時に起動できるので、終了させずに次々とアプリケーションを起動させていくと、すぐにメモリが足りなくなる。プログラム実行用のメモリ領域は111.2MBしかなく、同時起動プロセス数は最大32まで。1プロセス当たりのメモリサイズは32MBまでだ。これはWM5の仕様である。
また、ファイル操作の方法もWindows XPやWindows Vistaとはかなり違う。ファイルを参照するには「プログラム」から「ファイルエクスプローラ」を起動する必要があり、ファイルのコピーや削除などの操作はWindowsの「右クリックメニュー」のようなメニューで行う。「じかにハードディスクやフォルダをダブルクリックし、マウスでドラッグ&ドロップして……」というわけにはいかない。
このほか、付属するOutlookはメールの振り分け機能がなかったり、「SHメール」はSSLメールに対応していないなど、PCで普通に通用してきた常識が通用しないことがある。こうした環境は、モバイルの世界をよく知るユーザーにとっては当たり前とも言えることだが、機能が制限されているがゆえに、その制約をどうクリアしてEM・ONEの良さを引き出すかが勝負になるのだ。
しかし、モバイルの世界を知らない一般的なユーザーは、恐らくEM・ONEを渡されて「今日から使ってね」と言われても戸惑うはずだ。EM・ONEを企業に導入する際は、モバイル環境に熟知したユーザー、もしくは管理者がWM5の利用環境を整えた上で、十分な社員教育を施す必要がある。
早速、インターネットアクセスから検証してみよう。筆者の仕事場は、幸いなことにイー・モバイルの電波が良好に受信できる。まずは、HSDPA方式のデータ通信の快適度をチェックしてみることにしよう。
Internet Explorerを使って「ITmedia Enterprise」のトップページにアクセスすると、すべての内容を表示するまでの時間はおよそ1分。やや重たいページであるにもかかわらず、かなり快適だ。これなら、Webブラウズも実用的なレベルと言えるだろう。また、Webサーバにある10MBのファイルをブラウザ経由でダウンロードしてみると、およそ50秒前後(1.6Mbps)だった。PHS通信と比べてもダントツの速さだ。
次に、オフィスの無線LANに接続して同様の検証を行ってみた。EM・ONEはIEEE 802.11b/gの無線LAN規格に対応している。しかし、Webブラウズやファイルのダウンロード時間はHSDPA接続時とほとんど変わらない。恐らくこの原因は、EM・ONE自体のCPU(PXA270/520MHz)という組み込みプロセッサ)のパワーやWindows Mobile 5の処理能力がボトルネックになっているものと思われる。
通信方式 | 処理 | 所要時間 |
---|---|---|
HSDPA接続 | Webブラウズ(Opera) | 1分11秒 |
ファイルダウンロード | 51秒(1.6Mbps) | |
無線LAN | Webブラウズ(Opera) | 1分4秒 |
ファイルダウンロード | 52秒(1.6Mbps) | |
Webブラウザは「Opera」を使っている。OperaではITmedia Enterpriseのページを70%に縮小すると全体が表示できた。Internet Explorerでもアクセスしてみたが、なぜか読み込みが途中でストップしてそのままフリーズしてしまった |
なお、ずっとWebブラウジングをしていると、およそ2時間弱でバッテリー警告が表示される。使っていないときはまめに電源を切り、ワンセグ放送の受信や動画再生などを行わないようにしないと、あっという間にバッテリーが空になってしまう。標準のバッテリー容量は1200mAhだが、オプションで2000mAhの大容量バッテリー(8820円)も用意されている。こちらを購入しておくことをお勧めしたい。なお、筆者が使った限りでは、およそ3時間半〜4時間の連続使用が可能だった。
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