インターネットモデルで普及を目指す――WiMAX Forumが事業説明を開催

6月に日本事務所を開設したWiMAX Forumが活動内容とWiMAXの最新動向を紹介。オープンなインターネットモデルで普及を狙う。

» 2007年09月03日 18時18分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 次世代無線ブロードバンド技術「WiMAX」(IEEE 802.16−2004とモバイル対応のIEEE 802.16e)の標準化ならびに相互接続性の検証を行う米WiMAX Forumは9月3日、WiMAXの最新動向と国内で6月に開設した日本事務所の活動内容について説明を行った。

吉田社長

 冒頭の挨拶でインテルの吉田和正代表取締役共同社長は、「(フォーラムメンバーの)IntelはWiMAXで利用されるOFDM技術の吸収とIEEEやITU-Rでの標準化を支援すべく活動を行ってきた。WiMAXは、次世代無線ブロード通信の本命で、WiFiのような利便性を(1つの基地局で)広範囲に提供するものだ。日本でのフォーラムの活動をマクロレベルから広く支援していく」と述べた。

6番目の標準規格へ

 WiMAX Forumのボードメンバー兼マーケティング担当副代表のモハンマド・ジャクリ氏(Alvarion戦略担当副社長)は、WiMAX普及の原動力として「いつでもどこでも使えるオープンなインターネットモデルが欠かせない」と話した。

ジャクリ副代表

 またWiMAXがビジネスとして成立するためには、収益性を伴った料金体系、通信容量の変化への柔軟な対応、収益性を伴ったコンテンツマネジメントの3つの要素が欠かせないとジャクリ氏は説明。「(携帯電話事業者がインフラ/サービスを包括的に提供する)既存のネットワークではオープンなビジネスモデルが難しい。WiMAXは3Gの携帯電話を補うオープンな存在になる」と話し、WiMAXが携帯電話と競合関係になるものではないと語った。

 WiMAX ForumとIEEEの802.16ワーキンググループは、長らくWiMAXを第3世代(3G)携帯電話の「IMT-2000」の6番目の標準規格として採用するようにITU-Rに求めてきたが、10月15日からスイスのジュネーブで開催される世界無線通信会議(WRC)で承認される見通しとなった。「WiMAXが3Gととも無線ブロードバンドを支えるインフラとして正式に認められるのは大変喜ばしい」(ジャクリ氏)。

2012年には全世界で5000万ユーザーが見込まれる

 WiMAXは2008年から商用サービスが世界各国で順次始められる見込みだが、利用される周波数帯域は2.5GHz帯(日米など)や3.5GHz帯(欧州など)が中心。WiMAX Forumではさらに700MHz帯(国内ではテレビ放送用)を国際的なWiMAX向け周波数帯域とすることを目的とした活動や、時速数百kmの超高速移動環境下で170Mbps以上のブロードバンド通信を実現する「次世代版モバイルWiMAX(IEEE 802.16m)」の検討に入った。これらの課題は、2012年ごろ以降に具体的なサービスモデルが明らかになる見通しだ。

冲中氏

 同じくボードメンバーを務めるKDDIの冲中秀夫執行役員技術渉外室長は、「日本は携帯電話インターネットの利用では先進国ながらも通信環境が事業者によって異なるために国際的なものではない。WiMAX Forumでは国ごとの電波規制を調整しながら標準化を行い、国や地域を跨いでの利用が可能だ。国内の企業にとっても国際標準の舞台でビジネスチャンスが広がるだろう」と話した。

実用レベルの相互接続

 WiMAX Forumの日本事務所は6月21日の開設され(関連記事)、現在までに通信事業者や通信設備メーカー20社が参加。国際間ローミングの体制やWiMAXの電波利用料、認証方法について検討を行う「テクニカル&レギュラーワーキンググループ(WG)」とWiMAXの普及活動を行う「アプリケーション&マーケティングWG」が組織されている。

齊藤代表

 日本事務所の代表を務める齊藤忠夫東京大学名誉教授は、WiMAX Forumの活動の特色として「標準化を行うだけでなく、実際に使うことができるものに仕上げる」と説明した。その1例として、WiMAX Forumでは「プラグフェス」と呼ばれる端末やソフトウェア間の相互接続試験を世界で行っている。

 従来は、新技術が標準化されると接続性を確認するための統一化されたテスト環境が制定されて実際に製品間での検証が行われるプロセスが取られてきた。だが、WiMAX Forumでは標準化プロセスと並行してプラグフェスを行っている。「従来のプロセスは製品間の接続性を確認するまで非常に時間がかかる。Forumのプロセスはインターネット技術の接続性検証と似ており、製品の市場投入を迅速化できる」(齊藤氏)

庄納副代表

 日本事務所の今後の活動について副代表の庄納崇氏(インテル研究開発本部ワイヤレス・システム・グループ主幹研究員)は、「全国規模でWiMAXを展開するための活動と当面の課題を解決していく」と説明し、WiMAXの課題解決に向けた総務省など関連当局への働きかけやセミナー開催、メディアを活用したWiMAXの啓発を推進していくとしている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ