LANケーブルからの卒業――無線のブロードバンド時代が到来「行く年来る年2007」ITmediaエンタープライズ版(1/3 ページ)

「遅い」「高い」……。かつて、無線のデータ通信はこのように評された。2007年は無線のブロードバンド化が一気に進み、料金にも値ごろ感が出てきた。2008年はどのような進化を遂げるのか?

» 2007年12月28日 05時30分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 2007年は、無線データ通信のブロードバンド化が進んだ1年となった。以前はウィルコムの独断場だったが、3月末にはイー・モバイルが高速データ通信に特化したサービスを始め、既存の携帯電話事業者もデータ通信サービスを強化した。通信速度は、「kbps」から「Mbps」へ、料金も従量制から定額制へのシフトをしつつある。2008年は、さらにどのような進化を遂げるのだろうか。

 一般ユーザーにとって無線データ通信が身近な存在となったきかっけは、ウィルコムが2001年に開始した「Air H"(エアーエッジ)」だろう。当時、社会人1年目で一人暮らしを始めたばかりだった筆者は、高額な電話加入権を払い、1.5MbpsのADSL回線を引くか、32kbpsのエアーエッジを利用するかで思い悩んだのを覚えている。結果的に、通信速度は遅いながらも、ケーブルレスなエアーエッジの魅力に取りつかれた。

 その後もウィルコムは、複数の基地局に同時接続することで、通信速度の高速化を進めてきた。現在では最大512kbpsの「W-OAM typeG」方式を導入している。同社ではバックボーン回線のIP化を進めており、最大800kbps程度まで高速化できるという。

無線BB化はなぜ?

 13年ぶりの新規携帯電話事業者となったイー・モバイルは、第3世代通信方式W-CDMAの高速化規格「HSDPA」を採用し、最大3.6Mbps、月額5980円の定額料金制で無線データ通信市場に参入した。開業時、千本倖生会長兼CEOは、「無線ブロードバンドで通信市場に風穴を開ける」と宣言した

 同社はその後、月額2480円から利用できる「ライトデータプラン(年間契約割引適用の場合)」や月額3980円で約1Gバイトまでのデータ通信ができる「ギガデータプラン」を導入。12月には7.2Mbpsのサービスも始めた。加入数は11月中旬までに16万件強を獲得し、「無線ブロードバンド」という概念をデータ通信市場に定着化させつつあるようだ。

会社名 NTTドコモ KDDI イー・モバイル ウィルコム
下り最大速度 3.6Mbps 3.1Mbps 7.2Mbps 512kbps
上り最大速度 384kbps 1.8Mbps 384kbps 512kbps
月額料 4200〜1万500円 5985〜6930円 2480〜1万980円 1万1088〜1万2915円
定額適用外時の通信料(/1パケット) 0.012円 0.0525円 0.0105円 なし
対応端末 FOMA A2502ほか W05K D02HW AX530IN
メリット 通常のFOMAエリアも利用可 上り速度は国内最速 下り速度は国内最速 無線LANアクセスポイントも利用可
デメリット 月額料の上限が高額 従量課金でのパケット単価が高額 サービスエリアが大都市部に限定 月額料が高額
下り速度が最大となる携帯電話・PHS各社の定額制データ通信サービス(2段階式定額を含む。月額料は契約年数・割引プランなどにより異なる)

 以前から従量課金制でデータ通信サービスを提供してきたNTTドコモとKDDIも、相次いで定額制サービスを開始した。NTTドコモは当初、インターネット接続と電子メール利用に制限していたが、現在ではVPN接続などができるようにしている。KDDIは、基地局やバックボーン回線のトラフィック状態によって利用を制限するとしながら、基本的にはFTPなど多彩な通信プロトコルの利用を認めるサービス内容となっている。

携帯電話各社の音声・データ通信ARPUの推移(各社決算資料より作成)

 既存の携帯電話事業者がこうした動きを強める背景には、通話料収入の減少に伴うデータ通信料収入の拡大があるといわれる。各社の決算発表などで公開しているARPU(加入者1人当たりの月間収入)をみると、各社とも通話料収入の割合が減少し、データ通信量収入が拡大していることが分かる。各社とも、データ通信利用の拡大に期待し、ARPUを高めることへ注力している様子がうかがえる。

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