ERPは一つの製品でなく技術基盤で支えるべきあらゆるベンダーが狙うSMB ERP市場(1/2 ページ)

マイクロソフトは2007年6月に、中堅企業に向けたERP製品「Microsoft Dynamics AX 4.0 日本語版」を発売した。同製品でSMB ERP市場に切り込むマイクロソフトの戦略とは?

» 2008年02月13日 07時00分 公開
[松岡功,ITmedia]

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 マイクロソフトが日本市場で中堅企業向けERP製品「Microsoft Dynamics AX」の販売を開始してから半年余り。従来のERP製品とは違うアプローチで挑んだ同製品で、思惑通り日本市場に根付かせることができるのか。同社ビジネスソリューション事業統括部マーケティング部ERPプロダクトマネージャの國持重隆氏に聞いた。

 Microsoft Dynamics AXは、会計、人事、生産管理、SCM、CRM、プロジェクト管理、業務分析など、特に年商50億−500億円規模の中堅企業向け基幹業務システムに必要な機能を持ち、それらを柔軟に組み合わせて利用することができるERP製品である。Microsoft Office製品との親和性や操作性の同一感をはじめ、Microsoft .NETをベースにしたアドオン開発の容易さ、将来のアップグレードへの対応のしやすさなどが売りだ。さらに同社製品との連携に加えて、パートナー企業のソフトと組み合わせたソリューション展開にも力を入れており、同社ではこのMicrosoft Dynamics AXを、アプリケーションにとどまらずERPの“プラットフォーム”としての役割を担った製品と位置付けている。

 その真骨頂は、SAPやオラクルなど従来の有力なERP製品とのアプローチの違いに顕著に表れている。

 「従来のERP製品は、ERP側が規定したルールや作業画面にユーザー側が従う形でした。これに対し、Microsoft Dynamics AXはユーザー個人の嗜好や業務にERP側が対応します。これによって、ユーザー毎に利用する言語を切り替えたり、表示項目を変更したりといった個人レベルでのカスタマイズが可能になり、生産性を向上させることができます」(國持氏)

國持重隆氏 マイクロソフトビジネスソリューション事業統括部 マーケティング部 ERPプロダクトマネージャ 國持重隆氏

 つまり、“ユーザーがERPの仕様や規定に合わせるのではなく、ERPがユーザーニーズに柔軟に対応する”のである。同社がMicrosoft Dynamics AXを、ERPの“プラットフォーム”と位置付けているのも、こうしたアプローチの違いがあるからだ。

失敗から学んだユーザーに「好感触」のMicrosoft Dynamics AX

 日本市場では昨年6月20日に発売されたMicrosoft Dynamics AX。半年余り経った今、同社は市場での手応えをどう捉えているのか。

 「Microsoft Dynamics AXの特長を理解していただけるユーザーは着実に増えています。メインターゲットは中堅規模の企業ですが、最近では大手企業の支社や支店、あるいは個別の事業部門で導入されるケースも増えてきており、その区別でいうと、現状では中堅と大手の割合が半々といったところです。中堅企業からの声で最も手応えを感じているのは、ERPに求めるものが明確なユーザーほど、Microsoft Dynamics AXに対する関心が高いことです。その理由を聞いてみると、以前にほかのERPを導入しようとして失敗し、その経験からERPで何をやりたいのか明確なイメージを持つようになった。柔軟性のあるMicrosoft Dynamics AXならば、それを具現化できるのではと考えた。そういうユーザーが少なくありません。逆にいえば、Microsoft Dynamics AXは、そうしたユーザーにこそ、最も効果的だといえます」(國持氏)

 確かに日本でERPが利用されるようになって10年以上経った現在、中堅企業でもこうした失敗の経験から学んだというユーザーは意外に多いのかもしれない。Microsoft Dynamics AXがそうしたユーザーに受け入れられつつあるのは、同製品が時代の要請に応えたものであることを裏付けているともいえる。

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