W-ZERO3購入者の多くはSE?――企業の導入拡大を期待するウィルコム日本企業のためのスマートフォン導入術(1/2 ページ)

スマートフォンの火付け役となったウィルコム。2008年はW-ZERO3シリーズの企業導入に拍車がかかると期待する。

» 2008年03月03日 07時30分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 スマートフォンが国内で注目されるきっかけとなったのは、ウィルコムが2005年11月に発売した「W-ZERO3」だろう。2006年以降、NTTドコモやソフトバンクモバイル、イー・モバイルも相次いでスマートフォン端末を投入し、2007年は10機種以上が市場に登場した。これまではコンシューマーユーザーがスマートフォンの普及を牽引したが、2008年からは企業ユーザーの利用拡大にも注目が集まる。

ユーザー増の波は企業にも?

 プロジェクト営業部担当部長の稲垣健二氏は、「2006年頃からW-ZERO3の利用に関心を持つ企業が増え始めた」と話す。2008年は、企業でのスマートフォン導入が加速すると同氏は予測している。

 その理由は大きく2つ。1つめは、同社が販売店の店頭で行ったW-ZERO3購入者アンケートで、約6割がシステムエンジニアなどIT関連の職種だと判明したこと。2つめは、2006年後半からW-ZERO3を試験導入する企業が増えていることだという。

アプリケーションと通話の両機能の使いやすさを向上させ、進化を続けるW-ZERO3シリーズ

 ユーザーの多くは個人として購入したものと思われる。だが、スマートフォンという、企業にとっては新しいデバイスを情報システムの中に取り入れる場合に、「情報システム部門に携わる人物がスマートフォンに明るいことは大きなアドバンテージ」(稲垣氏)になる。

 ウィルコムがこれまでに手掛けた企業のスマートフォン導入案件では、検討段階から運用開始までの期間は平均6カ月〜1年ほど。期間は導入目的や規模によって異なるが、2008年はW-ZERO3を試験導入している多くの企業が本格運用に移行すると稲垣氏はみている。

法人スマートフォンの体制強化

 スマートフォンの特徴の1つに汎用性の高いアプリケーションを利用できる点がある。「W-ZERO3に搭載されているWindows Mobile OSは、PC版Windowsと親和性が高く、サードベンダー製品を組み合わせやすい」(稲垣氏)。また、マイクロソフトの組み込み機器向けOSのWindows CEを搭載したハンディターミナル端末から、同じCEをべースにしたWindows Mobileスマートフォンへの移行も容易だろう。

 ウィルコムで手掛けているスマートフォン導入案件は、業務端末の更新に伴ってスマートフォンに置き換えるケースが目立つ。従来から専用の携帯業務端末を利用している保守・メンテナンスサービスでの利用が多く、通信用の携帯電話とデータ処理用の端末をスマートフォンで1台に集約し、業務効率を高めるのとコスト削減を図る効果を目指す場合が多い。

 最近ではこうした業務内容にとどまらず、電子メール/グループウェア連携、小売・流通業での在庫管理、SFA(営業支援)システムやCRM(顧客管理)システムとの連携利用も広がり始めたという。

 企業のスマートフォン利用シーンの広がりで、セキュリティ対策ニーズも強まる。携帯性の高いスマートフォンでは、特に紛失対策が求められ、管理者が遠隔操作で端末内のデータを消去する、ロックをかけるといった機能は必須だ。さらにアンチウイルスソフトやVPN接続サービスもあり、PCと同様のセキュリティ対策を取ることができる。「最近ではシンクライアント端末としても機能し、セキュリティ要件が厳しい金融機関でもスマートフォンを運用している」(稲垣氏)

 また、顧客からの問い合わせ内容も通信回線から本体や周辺機器のハードウェア領域、OSや業務アプリケーションのソフトウェア領域まで多様化しつつある。ウィルコムでは2007年末からスマートフォンユーザー企業を対象として専用のサポート窓口を開設した。「トラブル内容に関わらず窓口を一本化することでユーザーの利便性を高めたい」と稲垣氏。当面は大規模ユーザーを対象にサービスを提供していくという。

 このほか、スマートフォンはPCと操作性が異なるなど、初心者には使いにくいという一面もある。「導入後に使われなくなるリスクもあり、携帯電話のような使い勝手の良さを目指している」といい、アプリケーションのショートカット機能を企業の業務環境に応じてカスタマイズして提供するなどの取り組みもしている。

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