山口徹――カクテル片手に才能を紡ぎ上げる唯才の人New Generation Chronicle(1/5 ページ)

ハッカーは先天的な能力か? ZIGOROuこと山口徹氏は「ものの考え方をどう養っていくかと、単純に努力したか」であると話す。自分の特性を知った上で、自分を最大限に生かして人生を切り開く彼は、過去2回に登場したハッカーたちをその道に進ませた優れたコーチャーでもある。

» 2008年03月18日 00時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]
「New Generation Chronicle:Web2.0スレッド」これまでの登場人物

 「恩師であり、自分の人生を変えてくれた」――サイボウズ・ラボのamachangは山口徹氏をこう評す。事実、amachangはサイボウズ・ラボへと転職を果たした彼を追うようにサイボウズ・ラボへと入社した。

 山口氏が開発チームにおいて優れたチームマネジメントを行っていたであろう軌跡は、amachangに限らず、斉藤のり子(id:dropdb)さんといった、いずれも山口氏と肩を並べて仕事をした経験を持つ人物が示し合わせたように彼の人徳と能力の高さを口にするところからもうかがえる。

山口徹氏。「ZIGOROu」というidから「ジゴロ=何か怖い人」という勝手なイメージを抱いていた記者の予想は大きく覆された。質問に言葉を選んで分かりやすく回答しようと気を配ってくれる山口氏は、さすがに多くの開発者が兄貴のように慕うだけはある

 バーテンダーからハッカーへとジョブチェンジを果たした山口氏は現在31歳。GREEの田中良和氏やmixiの笠原健治氏などと同じナナロク世代である。Perlハッカーとして、また、最近では自身のブログ「Yet Another Hackadelic」でOpenIDについてのエントリを数多く送り出すOpenIDハッカーとしてその名を知る人も多い山口氏に「New Generation Chronicle」のWeb2.0系スレッドを継承していただいた。


注いだ情熱を裏切らないのがプログラム

―― ネット上ではどんな名前で通していますか? その由来は?

ZIGOROuないしはzigorouです。神奈川県民だったので、といえば分かる人は分かるでしょう。ちなみに「あかぎあい」派です。

神奈川県民でない方のための豆知識

テレビ神奈川で月〜金の朝に放送されている情報番組「SAKU SAKU」に登場していたキャラクターが増田ジゴロウ(ZIGOROゥ)。名前の由来は賭博破戒録カイジの地下チンチロ編でもおなじみの「シゴロ賽(さい)」から。山口さんのいう「あかぎあい」とは初期のSAKU SAKUを増田ジゴロウとともに支えた女性で、後に結婚、出産。


―― 座右の銘は何ですか?

「楽するために努力する」ですね。基本的に仕事をしたくないんですよ。プログラミングなんて基本的にはこのためにやっているようなものですし。

―― 現在、ブラウザ、メーラー、テキストエディタはそれぞれどんなものを使っていますか?

Firefox、Thunderbird/gmail、Emacsですね。Firefoxのエクステンションは以下のような感じです。Sxipperは便利ですよ。開発の3種の神器を挙げるなら、Emacs、Firefox、あとプロジェクト管理ツールのTracですかね。

エクステンション 機能
ColorZilla 画面の色情報を取得する
del.icio.us Bookmark del.icio.usと連動するブックマーク
FaviconizeTab 特定のタブの幅を縮める
Firebug(default off) amachangもお気に入りのWebデバッグツール
Greasemonkey ユーザースクリプトを実現するためのエクステンション
Japanize 外国語のWebサイトのユーザーインタフェースを日本語化
Live HTTP Headers 送受信しているHTTPヘッダを表示
MeasureIt Webページ要素の表示サイズを測定
MozLab リモートシェル「MozRepl」などを含むエクステンション
Pathtraq アクセスログを共有し、その情報からランキングページなどを生成
Sxipper OpenIDをサポートしたパスワードマネージャ
Tab Mix Plus タブ系のエクステンション
Web Developer Web制作者向けの機能が詰まったエクステンション
ZIGOROuさんが利用しているFirefoxのエクステンション

―― 今の自分が形成される上で最も影響があったと思う出来事は?

プログラミングを始めて2年で転職(今から見て前職)したのですが、そこでいきなりプロジェクトマネジャーになったことです。プログラマーとして入社したはずだったのですが(笑)。とはいえ、もっと大きな仕事がしたいと思っての転職だったので、入社してすぐに非常に大きなプロジェクトに就かせていただいたという点ではいい転職でした。

 その後、サイボウズ・ラボに移り、プロマネからまたプログラマーに戻るという一般的にはおかしなパスを通っていますが、プロマネを経験したことで、違う視点も持てるようになったことは有意義だと感じています。例えば、目前にある技術についてのみ執着してしまうのではなく、それはあくまで選択肢であり、「ビジネス的にどうなのか、開発するにあたって必要なものは何か」なども併せて考えられるようになり、アドホックな考えをすることが少なくなったように思います。

―― はじめてPCに触れたのはいつごろですか?

MSXをPCというなら確か中学生くらいですね。MSX Basicでディスクマガジンの何かを作った覚えがあります。当時はゲームが作りたかったのです。その後、大学入学後にWindows 95のマシンを親に買ってもらいました。

―― 最近メインで使っている言語は? なぜその言語に引かれたのですか?

Perlです。書いていて楽なんですよね。喋るような感覚で使えるからですかね。Perlのコミュニティーの懐の深さも好きです。小飼さんのような方がおられるにふさわしい場所だと思うし、そうかと思えば宮川さんのようなスマートな方もおられますし、ゆーすけべーさんのようなエロい方もいますしねw

―― では、Perlの素晴らしさを100文字程度で語ってみてください

Perlは凄い柔軟なシンタックスを持っていて、自分の好みのスタイルを無理矢理作ることもできます。逆に言えばそれをやられる可能性もあるので、いつ何が来てもよいといった心構えができているのも強みかなと。またCPANやPerl Mongersを中心としたコミュニティーが活発で、自由な気風もとても好きです。今始めるならぜひPerlですよー、とは言いづらいのですがw

―― 自分のコーディングにクセやこだわりはありますか?

改行を適切に入れること。見通しが悪くなるとどうもいらいらしてきます。

―― コーディングスタイルで許せないことは?

関数名の後に、改行を入れてブレースを書くスタイルが嫌です。後、if文のブレース閉じの後に改行を入れないでelse句がくるのも好きじゃないです。

―― 美しいと思うコードはどんなものですか?

Plaggerは感動しました。ありゃ教科書ですね。

―― プログラムをするようになって、「自分のここが変わった」というものは?

プログラムやサービスを愛せるようになったこと。自分にとってプログラムって会話なのかもしれません。しかも自分がそこに情熱を注げば注ぐほど、応えてくれるのは素敵ですし。人間、特に異性の方がよっぽど扱いづらいですよねwww

―― Web2.0という言葉をどう定義していますか?

何ですか、その単語?

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