携帯電話で介護記録を入力しリアルタイムで情報共有介護事業者の業務効率向上(1/2 ページ)

特定非営利活動法人「あおば」は、ケアプランを中心にヘルパーのサービス提供記録(トレーサビリティ)を紙ベースからデジタル化し、リアルタイムに関係者が確認できるSaaS形式のシステムを導入した。

» 2008年04月03日 06時34分 公開
[ITmedia]

導入前の課題

介護ヘルパーは業務終了時にサービス提供記録という書類に記録を残さなくてはならないが、その作業を軽減して、より充実した介護をしたいという要望が上がっていた。

ヘルパーが記述したサービス提供記録を集約し、報酬額を請求する作業が毎月発生する。その業務の負荷を減らしたかった。


導入後の効果

携帯電話を使ってサービス提供記録への記入ができるようになり、省力化が実現。介護する時間も増え、サービスの向上も実現した。

サービス提供記録が電子化され、入力など作業も省力化され、報酬額に関する事務作業も改善されつつある。


確実に広がるSaaS活用

 特定非営利活動法人「あおば」は、2006年から介護事業所として活動を開始した。中野区を中心として首都圏を主な活動範囲としており、やさしさあふれる地域密着型介護を目指し、介護支援を必要とされている人々へのさまざまなサービスを提供している。

 あおばは、2008年、ケアプランを中心にヘルパーのサービス提供記録(トレーサビリティ)を紙ベースからデジタル化し、リアルタイムに関係者が確認できるSaaS形式のシステムを導入、ヘルパーと事業所スタッフの業務効率向上を実現させている。

特定非営利活動法人あおば 所長 白濱俊彦 氏

 介護事業において、ヘルパーが介護を必要とする人たちの自宅へ赴き、介護業務を行う段階で、すでに立てられた計画に則って行われる。このケアプランが確実に行われているか、そしてその日の介護を受ける人の状態はどうか、といったことをヘルパーはサービス提供記録として残す必要がある。

 通常、この記録は紙の記録用紙に記入する形で行われているが、一通りの業務が終わった後、その場で記録していくので、ヘルパーは記入時間も考慮に入れて、業務を行わざるを得ない。

 あおばの白濱俊彦所長は次のように語る。

 「効率よく仕事をするのは、介護を受けられる方へのサービス向上にもつながります。しかし、記録時間がもっと短くできれば、その分よりよいサービスを提供できるのに、という声は多くのヘルパーさんから聞いていました。しかし記録がおろそかになるのもいけない。どうすれば短い時間で確実に記録が残せるようにできるのか、頭を悩ませていたのです」

携帯電話を活用した仕組み

 実は、このサービス提供記録は、あおばの事務スタッフにとっても、悩みの種だった。というのも、月に一度この記録をもとに、報酬額の請求を行う必要があるからだ。各ヘルパーへの支払いはもちろんだが、上部機関に記録をまとめて提出しなくてはならない。その際ケアマネジャーと確認を取るなど、さまざまな事務作業に忙殺される。

 こうした悩みを聞いて、新しいシステムを作り出したのは、ITサービス(モバイルSaaS)会社のPrivate Stockである。もともと同社とあおばの事務所は近隣にあり、地域活動を通じた付き合いもあった。Private Stockが構築したサービスは、SaaS形式のもので、携帯電話を活用する。

 ユーザー登録をしたヘルパーは、介護を受ける人の自宅に訪れた際、用意していた紙に印刷されたQRコードを携帯電話で読み取る。そして介護業務が終了すると、携帯電話からこのシステムのセンターにログインして、フォームに則ってサービス提供記録に必要な項目を入力していく。

 携帯電話の画面には、紙に記入していた時と同様の項目がフォーム化されていて、ヘルパーはほとんどボタンで入力するだけで、入力は完了する。入力が完了すると送信し、最後にQRコードをもう一度読み取り、業務は完了となる。こうして記録時間はかなり短縮化され、サービスの充実が実現しつつあるという。

 また、このシステムは、使用する携帯電話にQRコード読み取り機能が装備されているものであればそのまますぐに利用できるので、通信キャリアや機種を新たに統一する必要がないのも大きなメリットである。

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