高精細ビデオ、アニメーション、3Dなど表現力を豊かにする機能がある程度進化したリッチクライアントは、今後、カスタマー・エクスペリエンス(邦訳:顧客経験価値)を実現する方向へ進化する。
カスタマー・エクスペリエンスとは、商品/サービスを購入したり使用したりする過程(経験)の価値を訴求するマーケティングのコンセプトである。例えば、Webサイトも「商品情報を見る」だけでなく「商品情報を見る経験をしている」。
野村総合研究所ではITのカスタマー・エクスペリエンスを高める技術を特に「エクスペリエンス・テクノロジー(経験創出技術)」と呼んでおり、リッチクライアントはその1つとして進化すると予測している(図2参照)。
萌芽事例には、2008年5月に開催された「2008 Java One」で公表された「Project Insight」がある。これは「どういうユーザーが」「どのようなコンテンツを」「どのくらい利用しているか」などのユーザー行動を収集する仕組みを提供するもので、これをリッチクライアントであるJavaFXを使って行うというのだ。
もちろん今後は、ユーザーインタフェースを顧客の好みに最適化したり、掲載する情報を最適化したりする技術と組み合わせていく必要があるが、ユーザー行動を収集するモニタリングは、ユーザーごとに最適なエクスペリエンスを提供するために欠かせない仕組みである。
インターネットが普及した現在、企業のWebサイトはあって当たり前であり、既に「企業の顔」「お客様をおもてなしする場」へとその役割は重要なものへと変化し、Webサイトの良し悪しが顧客ロイヤリティやエンゲージメントの獲得/維持に影響を与えている。
そんな中、リッチクライアントが持つ表現力や操作性の高いポテンシャルはWebサイトのユーザーインタフェースを実装する上で不可欠な存在となりつつある。さらに単にユーザーインタフェースの表現力を豊かにする機能だけでなく、エクスペリエンス・テクノロジーの1つとして進化するトレンドも生まれ始めている。
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