エクストリコム、「11n」の性能を引き出す独自技術を披露同一チャンネルがポイント

エクストリコムは、無線LANの電波干渉対策やスムーズな接続を可能にする技術を公開。IEEE 802.11n Draft2.0対応機器を発売する。

» 2008年06月05日 18時22分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 エクストリコムジャパンは6月5日、無線LAN機器に関する記者会見を開き、IEEE 802.11n Draft2.0対応製品の展開と独自技術について説明した。

 Extricomは2002年にイスラエルで設立され、無線LANアクセスポイント(AP)および無線LANスイッチを開発、製造する。日本には2006年に進出し、企業や医療・教育機関など国内で40件の導入実績がある。

 無線LANの課題となる、隣接するAP同士の電波干渉やAPから離れた場所でのスループットの低下、AP間を移動する際の再接続処理に伴う遅延を解決する独自技術が強みだという。

安藤氏

 無線LAN網を構築する場合は隣接するAP同士が電波干渉しないよう、APごとに異なる無線チャンネルを設定することが多い。同社では「Channel Blanket」という、複数のAPに同一のチャンネルを設定しても電波干渉が起きない仕組みを開発。APに接続する機器の認証処理や高度な無線処理をさせず、無線LANスイッチ側で集中処理を行う。これにより、エリア全体を同一のチャンネルでカバーできるようになる。

 安藤博昭営業本部長によれば、APはパケットの転送処理だけを行うが、スイッチへ転送する際にAPに接続する端末の受信強度情報を添付して送信するという。スイッチ側では受信強度を分析し、電波環境がより良いAPに端末が接続するように制御する。通信容量が増加しても、APを追加するだけで対処できる拡張性を持つ。

APごとに管理する従来型無線LAN網(上)とChannel Blanketの無線LAN網

 さらに、Channel Blanket技術では、同時に複数のチャンネルを展開できるという。例えば、IEEE 802.11n Draft2.0とIEEE 802.11b/g、IEEE802.11aをチャンネルごとに割り当て、11aではデータ通信、11b/gでは音声(VoIP)、11nではワイヤレスビデオ会議を利用するといったことが可能になるという。

 安藤氏は、「エリア設計時の電波干渉調査や計算の手間がなくなる。APはCPUやメモリを搭載せず、消費電力も少ない。企業にとって最適な無線LANソリューションの1つになるだろう」と話した。

「11nの“側面”に気付くべき」

コンファロニエリ氏

 製品開発に携わったExrticomマーケティング担当副社長のデビッド・コンファロニエリ氏は、「11nは大容量高速通信ばかりが注目されるが、導入するなら“負の側面”も理解しておくべきだ」と話した。

 IEEE 802.11nは、IEEE 802.11a/b/gと同一の周波数帯を使用しながらも、100Mbps以上の通信が可能な次世代無線LANとして期待されている。

 「この性能を発揮するには、占有する帯域を広く取り、MIMO(Multi Input Multi Output)を利用することになる。だが、11a/b/gと混在させれば当然速度は下がる(下位互換性のため)。MIMOは非常に電力を消費し、壁など遮へい物の多い場所には適さない。企業は、11nがオフィスのような場所での利用を考慮していないということを知っておいた方がよい」(コンファロニエリ氏)

無線LANアクセスコントローラとスイッチ

 同氏は、既存の11a/b/gによる無線LAN環境へ11nを統合するのは有効ではないと指摘。Channel Blanketを利用してチャンネルを切り分ければ、混在運用での速度低下が解消される。11n専用チャネルではMIMOを効率的に使用できるとし、「Channel Blanketの仕組みで無線LAN網を再構築してほしい」と話した。

 エクストリコムジャパンは、6月下旬からIEEE 802.11a/b/g/n Draft2.0対応のAP「EXRP-40En」などの新製品を順次発売する予定。丸紅情報システムズとアライドテレシス、住友電線、三技協から提供される。

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