PCでは計画的、モバイルでは駆け込み――キーワードでみるモバイル検索の使われ方モバイル検索の利用者が増加

検索広告サービスのオーバーチュアによれば、モバイル検索の利用はPC検索と類似する傾向にあるが、キーワードによっては独自の様相も見せ始めているという。

» 2008年06月18日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 近年、モバイルサイトが企業のマーケティング活動の場として注目されるようになった。携帯電話の契約件数が1億件規模に成長し、ユーザー数もPCインターネットと肩を並べるまでになった。検索連動広告サービスのオーバーチュアによれば、この背景にはデータ通信料金の定額制普及や検索サービスの利用拡大があるという。

 同社では、Webサイト検索で使用されるキーワードからPC検索の利用者とモバイル検索利用者の動向を比較調査した。調査結果から、話題の事象や季節、イベントに関連するキーワードと定常的に利用されるキーワードは、PCとモバイルで大きな違いがあることが判明した。

「旬」のキーワードはPC検索に類似

 まず、世間で話題となった言葉やイベント、季節に関連したキーワードの検索動向を見ると、検索数の推移はPCもモバイルも同様の傾向になることが分かった。例えば人気DVD作品のタイトルをキーワードにした検索数は、今年3〜5月までの検索のピークがほぼ重なった。「バレンタインデー」および「ホワイトデー」といったイベントをキーワードにした場合でも、PCとモバイルは似た傾向を示した。

 調査を担当した平澤新人氏(ソリューションマーケティングマネジャー)によれば、検索全体に占めるモバイルの割合は、DVD作品のタイトルで22%、バレンタインデーで15%、ホワイトデーで13%となり、「モバイルユーザーの検索は無視できない存在になりつつある」という。

人気DVD作品のタイトルをキーワードにした検索の動向(ピンク色はPC、青色はモバイル:オーバーチュア資料より)

 しかし、キーワードによっては差異も見受けられた。バレンタインデーでは検索のピークのタイミングがPCとモバイルで重なったものの、ホワイトデーではモバイルのピークがPCよりも3日遅くなった。「母の日」の場合でも、PCの検索ピークが5月8日だったのに対し、モバイル検索のピークは5月11日となっている。

「ホワイトデー」をキーワードにした検索の動向(ピンク色はPC、青色はモバイル:オーバーチュア資料より)

 「バレンタインデーで調べるのは女性、ホワイトデーで調べるのは男性が多いと仮定すれば、女性はPCとモバイルの検索を併用し、男性は“駆け込み的”にモバイル検索を使うようだ」と、平澤氏は性別による特徴を指摘する。モバイル検索はPC検索を同じ動きを見せるが、さらに細かく見ていくと、モバイル検索はピークの一週間前から上昇傾向を示すこともあり、「全般的には、期日の直前になって“駆け込み”的にモバイル検索を利用するユーザーが多い様子がうかがえる」(平澤氏)という。

平日と週末の検索に違い

 日常的に利用されるキーワードの場合、PCとモバイルの検索動向には大きな違いが存在するという。平澤氏は、「対象物や目的が定まっている場合はモバイルの方が活用される傾向にあるようだ」と話す。

 例えばキーワードが航空会社名の場合、PC検索では週末に検索数が減少するのに対してモバイル検索は曜日による増減が少なかった。「ホテル」の場合、PC検索では平日の利用が多いのに対してモバイル検索では週末にピークを迎える。

航空会社名をキーワードにした検索の動向(オーバーチュア資料より)

 「航空会社サイトでは予約変更や空席確認などのサービスもあり、曜日を問わずモバイルサイトを利用するユーザーが多いと想定される。ホテルの場合はPCで事前に調べるユーザーが多いようだ」(平澤氏)

 ゴールデンウィーク期間を対象にした「国内旅行」のキーワード検索では、PC検索がゴールデンウィークの2カ月前と直前にピークが訪れたが、モバイル検索はPC検索のピークが過ぎた時期から利用が増えることが判明した。平澤氏は、「PCとモバイルの検索を行き来するユーザーも多く、それぞれのデバイス環境に適した情報提供も重要になると推測される」と話す。

「国内旅行」をキーワードにした検索の動向(オーバーチュア資料より)

モバイルサイトへの集客ポイントは?

 モバイル検索は今後、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクモバイルの大手3キャリアがグーグルやヤフーの検索サービスを導入したことで、利用者の大幅な増加が期待される。企業がモバイルサイトへの集客を図るポイントして、平澤氏はユーザーの検索動向に応じたキーワード広告の運用とPCサイトの連携が重要になると指摘する。

 「モバイルに適したサイト作りやSEO(サーチエンジン最適化)対策と同時に、ユーザーの特性を考慮したキーワード展開が即効性の高い対策になる」(平澤氏)。最近では、一度に複数のキーワードで検索するユーザーも増加しつつあるといい、キーワードを選定する際には「日常会話に用いられるような平易なものが良いだろう」(同氏)とアドバイスする。

 今後の見通しについて、平澤氏は「大手キャリアの検索対応が本格化したことで、新たな傾向が生まれることが想定される。キャリアごとにユーザーの動向を把握してキーワードの運用方法を変えるといった新しい動きへ柔軟に対応していくことが大切ではないか」と話す。さらに、ブログやSNS(ソーシャルネットワーキングサイト)などのユーザーも検索を活用するようになり始めており、検索サイト以外のモバイルユーザーを取り込むことも重要になると指摘している。

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