マイクロソフト、企業向けWindows Mobileソリューションを発表スマートフォンは企業導入フェーズへ

マイクロソフトは、スマートフォン向けOS「Windows Mobile 6.1 日本語版」とスマートフォン管理ツールを発表。法人向けのスマートフォンソリューションを拡充する。

» 2008年06月18日 18時35分 公開
[ITmedia]

 「法人におけるスマートフォンはパイロット(試験)フェーズから導入・運用フェーズに入った」――マイクロソフトは6月18日、スマートフォン向けOSの最新版「Windows Mobile 6.1 日本語版」とスマートフォン管理ツール「System Center Mobile Device Manager(SCMDM) 2008 日本語版」を発表した。法人へのスマートフォン導入の拡大を図る。

佐分利氏

 冒頭、ビジネス&マーケティング担当の佐分利ユージン執行役常務は「Windows Mobile搭載の端末は2002年の出荷開始から累計で2000万台を達成する見通しとなり、従来のビジネスコンシューマー中心のユーザー層が法人へ本格的に移行するタイミングが来た」と話した。国内では2005年にウィルコムが発売した「W-ZERO3」以降、NTTドコモやソフトバンクモバイル、イー・モバイルが相次いで発売し、端末数も13機種(SIMフリーモデルを含む)にまで拡大した。

 佐分利氏によれば、スマートフォンの企業導入はこの1、2年で急速に拡大しつつあり、数カ月から1年程度の期間を掛けてテスト運用を継続してきた企業での大規模導入が始まった。「2007年度の案件数は前年度に比べて52%増になった」(佐分利氏)。法人側では、グリーンITの観点から複数のデバイスをスマートフォンに集約することでのコスト削減、無線ブロードバンド回線の普及に伴うリモートアクセス時のパフォーマンス向上といった点が注目されているという。

 法人市場へのスマートフォン展開について、佐分利氏はPCやサーバ製品と同様にプラットフォーム戦略が起点になると説明。多用なデバイスやアプリケーションをWindows Mobileがサポートし、ソリューションパートナーとの連携によって、さまざまな企業ニーズへ対処していくとの考えを明らかにした。

法人ユーザーのための機能強化

 Windows Mobile 6.1は、2007年1月に発表したWindows Mobile 6.0のマイナーバージョンアップながら、企業ユースに耐える操作性や管理性、セキュリティ機能を重点に機能を拡充したという。

 操作性では、初期設定の容易にするウィザード設定やBluetooth対応機器の容易な連携(ペアリング)、タスク管理機能の向上など図った。さらに、送信メール作成時にアドレス入力を簡略化するオートコンプリート機能の採用や電子メールのデータサイズを送受信時に最適化する機能を搭載した。管理性やセキュリティ機能では、SCMDM 2008への標準対応やVPN機能の拡充、無線網を介したセキュリティポリシーやインベントリ収集、ソフトウェア配布などの機能を向上した。

研究機関など機密情報を取り扱う場所では携帯カメラを禁止する場合が多いが、スマートフォンでは管理者がセキュリティポリシーを強制できる

 SCMDM 2008は、スマートフォン端末を一元管理するためのツールで、管理者はセキュリティポリシーやアプリケーションの端末に一斉配布できるほか、OSおよびソフトウェア、ハードウェア状態の情報収集・管理、端末紛失時のセキュリティ機能(紛失端末からのアクセス拒否、遠隔操作でのデータ消去など)を操作できる。

 SQL ServerやActive Directoryと連携し、SQL Serverを利用したログの管理や分析、リポート作成のほか、Active Directoryの権限管理にスマートフォンユーザーのアクセス権限管理機能を盛り込むといったことができるようになる。SCMDM 2008がサポートするのはWindows Mobile 6.1のみで、旧バージョンのWindows Mobile 5.0や同6.0を搭載するスマートフォン端末を管理するには、Exchange Serverのモバイル管理機能を利用する形になる。

SCMDM 2008の管理コンソール画面

 マイクロソフトは、Windows Mobile 6.1およびSCMDM 2008によるソリューションパートナーも発表。ウィルコムとソフトバンクモバイル、日本総研ソリューションズ、三井情報の4社がWindows Mobileスマートフォンの管理システム導入を支援するとしている。すでにユーザー企業も現れ、製薬のファイザーが社内コミュニーションの向上を目的に2008年度下期の運用開始を目指す。プロジェクトを担当する福崎巧氏は、「われわれの求めている管理性が実現し、導入を決めた」と経緯を説明した。将来的にCRM(顧客管理)を中心とした業務アプリケーションのスマートフォンでの運用も計画しているという。

ファイザーの導入概要

 日本総研ソリューションズは、企業でのスマートフォンの実用性を評価する独自プロジェクトを実施。アプリケーションとワークフロー、コミュニケーションや個人情報管理について運用検証を3カ月間行った。その結果、Windows Mobileは基本機能やセキュリティ機能で企業ユースに耐えるものという評価を得たが、運用上ではユーザーのリテラシーに左右されないようにシンプルな業務フロー設計が必要になるほか、導入機種を複数用意してユーザーが操作しやすい端末を選べるようにすることが重要になるとの結論を得たという。

 同社の平野保製品企画担当部長は、今後の法人スマートフォン市場について「端末を数千台規模で導入し、しっかり管理したいというエンタープライズのニーズと、中小企業や経営層だけが利用するといった小規模ニーズに二極化するだろう」と話した。

 法人向けスマートフォン市場では、カナダResearch In Motionの「BlackBerry」が企業ユーザーを数多く持つほか、米AppleのiPhoneが企業向けの開発環境を強化するといった動向が注目されている。Windows Mobileの強みについて、マイクロソフトモバイル&エンベデッドデバイス本部の梅田成二本部長は、「クライアント、サーバ、サービス、モバイルのカテゴリを持つのはわれわれだけであり、製品連携を強化していく」と語った。

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