アプリケーションデリバリーとそれを裏で支える仮想化技術Citrix Application Delivery Conference 2008 Report

Citrixが都内で開催した「Citrix Application Delivery Conference 2008」では、同社の技術によるアプリケーションデリバリーの価値が余すところなく伝えられた。

» 2008年07月12日 00時00分 公開
[渡邉利和,ITmedia]

 Citrixは7月9日、プライベートイベント“Citrix Application Delivery Conference 2008”を東京都内のホテルを会場に開催した。

基調講演

シトリックス・ジャパン代表取締役社長の大古俊輔氏

 基調講演の冒頭に登壇した同社の代表取締役社長の大古俊輔氏はイベントのテーマを「Citrixが考えるアプリケーションデリバリーと、それを裏から支えるテクノロジーである仮想化」だと位置付けた。

 続いて同氏は、現在のIT環境を取り巻く環境の変化と、ITに求められるようになってきた新たな役割について、さまざまなデータを紹介しながら力強く語った。同氏は現在日本のGDPが560兆円で、そのうちの5%に当たる28兆円が毎年原油の輸入に費やされているというデータを紹介し、「(電力消費を節減することで)原油のコストの10%を削減できたら、2兆8000億円の現金が国内に残ることになる。これをIT投資に回せるとしたら、どれほどの革新が達成できるか」と語り、GreenITへの取り組み環境保護といったボランティア的な活動に留まるものではなく、企業の競争力を高める直接的な対策になりうることを示した。さらに同氏は自動車産業が以前直面した排ガス規制の強化(米マスキー法)などへの対応の時のエピソードを紹介し、「多くの自動車メーカーがマスキー法への対応は不可能だといった中で、日本の1社がそれをいち早く実現した」「その会社は、自社の自動車の価値が日本国内で製造されていることにあるのではなく、自社で設計/製造し、自社のブランドで販売されていることにあることをいち早く気づき、米国内に工場を移転することで大きな成功を収めた」として、革新のためにはパラダイムシフトが必要なこと、ITでもこうしたパラダイムシフトを実現する必要があることを力説した。

 同氏は、「Citrixが考えるパラダイムシフトとは、エンド・ツー・エンドの仮想化」だとし、「ユーザーの机上のPCにアプリケーションがフィジカルに存在しなくてはいけないのか?」「そこにフィジカルに存在しなくても、使いたいものがあたかもそこにあるかのように使えればよいのではないか。デリバーできればよいのではないか」と続けて、同社の技術によるアプリケーションデリバリーの価値を明らかにした。

ゴードン・ペイン氏

 続いて登壇した米Citrixのデリバリーシステム部門担当上級副社長兼ジェネラルマネジャーのゴードン・ペイン氏は、Citrixの企業概要の紹介から始め、現在の同社の中核的なソリューションである「サーバの仮想化(XenServer)」「アプリケーションの仮想化(XenApp)」「ネットワークの高速化(NetScaler/WANSclaler)」「デスクトップの仮想化(XenDesktop)」といった、エンド・ツー・エンドの全域に渡る製品展開の概要を一気に紹介した。

 さらにその後、製品のデモが公開され、XenServerとProvisiong Serverを組み合わせた迅速なプロビジョニングの実行、XenAppによるアプリケーション配信、XenDesktopとXenAppの組み合わせによるデスクトップの効率的な管理やモバイル環境への対応、といった具体的な利用状況を具体的に紹介した。

ブレークアウトセッション

 午前中の基調講演に続き、午後には「アプリケーション仮想化」「サーバ仮想化」「デスクトップ仮想化」「アプリケーションネットワーキング」「ユーザー事例」の5つのトラックに分かれ、計20本のブレークアウトセッションが行なわれた。

 「XenServer仮想化テクノロジー徹底解説」では、XenServerの機能や技術的なアーキテクチャが丁寧に解説されたのに続き、次バージョンであるXenServer 4.2の新機能や今後の開発ロードマップなども紹介された。

 また、「Why XenDesktop? デスクトップ仮想化の大本命といえる理由とは」というセッションでは、基調講演のデモで概略が紹介されたXenDesktopについて、さらに詳細な説明が行なわれた。ここでは、デスクトップの仮想化がサーバの仮想化に続く「ITシステムの仮想化の第2フェーズ」と位置付けられ、デスクトップの仮想化がデスクトップのユーザーとシステム管理者の双方に大きなメリットをもたらす技術であることや、従来のローカルのPC上にOSやアプリケーションをインストールすることに比べ、アプリケーションの使い勝手や運用管理の面でどれほどの柔軟性が達成されるかということが詳細に語られた。

 Citrixは、かつてのMetaFrameによるアプリケーション配信から仮想化技術の全面的な活用に向けて大きく変貌を遂げ、製品ラインアップを急速に充実させた。Citrix Application Delivery 2008は、そうしたCitrixの現状を網羅的に理解するための良い機会となったと評価できるだろう。

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