売るのはソフトではない、「チームワーク」だ「2009 逆風に立ち向かう企業」サイボウズ(2/2 ページ)

» 2009年01月13日 08時00分 公開
[石森将文,ITmedia]
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「使いやすさ」よりも「皆が使えること」が大事

ITmedia 既存ユーザーへの対応重視という施策には、「市場の飽和」という事情もあるのでしょうか。

青野 確かに、グループウェア市場は飽和した、といわれることは多いですね。しかしわたしは、まだまだ伸びると考えています。例えばグループウェアを未導入の中堅中小企業にもっと使ってほしいですし、既存ユーザーにだって、社内の部門グループウェアとして新規で使ってほしい。グループウェアはスケジューラや掲示板だけではありません。SNS機能、ブログ機能なども取り込み、周辺機能へも拡大できると考えています。

 市場がまだ伸びる根拠としては、われわれが提供するアプリケーションの変化、そしてそれに伴うユーザー層の変化という事情もあります。サイボウズではグループウェア製品に対し、大規模マネジメント機能の実装を進めてきました。ログ管理、アクセスコントロールといった面が強化されたことで、これまでの強みであった中堅中小企業に加え、エンタープライズクラスのユーザーも増えました。例えば実績としては、岡山県庁で1万6000ユーザー、大和証券で4500ユーザー(今後増加予定)の稼働にいたりました。

青野社長 「ユーザーが使っているかどうか」を重視する青野社長の発言からは、「売りっ放しはしない」というこだわりが見て取れる

 同時に、中堅中小、そしてそれ以下の規模でビジネスを進めているユーザーも重視します。使い方もそうですが、まず導入がカンタンでなければならない。サーバーレス、あるいはASP(SaaS)として利用でき、本当に「らくちんぽん」な運用(笑)ができること。これが重要です。

 例えばソフトウェアの世界では、「使いやすさ」が重要だとよくいわれますね。でも大切なのは「使いやすいこと」よりも「皆が使えること」だと思います。使いやすさを重視しすぎると、機能のショートカットに走ってしまう。銀行のATMを考えてみてください。たとえ迂遠であっても、引き出し・振込みまでのすべての段階をタッチパネルで選択させる。皆が使えるためには「急がば回れ」の精神も必要なのです。

 わたしは、導入したユーザーから「みんなサイボウズを使っています」という声を聞けると、とてもうれしいのです。なぜならグループウェアというものは、1人でも使ってくれない人がいると、別の伝達手段を考えなければならず、メンバー全体の満足度が下がってしまうから。わたしは前職で、ある大手ベンダーのグループウェアを利用していたのですが、上司が「難しい」と使ってくれず、困りました。サイボウズOfficeの開発を始めたときも、「当時の上司でも使えるように」ということを意識したくらいです。

 ただ、最近ではサイボウズOfficeもだいぶ高機能になってきました。ITビギナーには取っ付き辛くなっているかもしれないし、すべての機能を使っているというユーザーも少ないでしょう。2009年は今一度初心に立ち返り、「全員が使ってくれるように」ということを原点に、サービスを展開したいですね。

ITmedia 具体的にはどのようなサービスでしょう。

 現状では、デヂエでしょうか。この景気が悪い状況だからこそ、特に中堅企業に使ってほしい。Web上でポチポチと(笑)データベースを作成できるという、カンタンで便利なサービスです。サイボウズOfficeとの連携も、大きく改善を図りました。またライセンスも安くなっています。相当売れないと、サイボウズは儲からないくらいです(笑)。同様のサービスをSIerに依頼すると、かなり高くつくのではないでしょうか。EUC(エンドユーザーコンピューティング)を本当の意味で実現したソフトウェアだと自負しています。

ITmedia 2009年のビジョンははどのようなものですか。

 わたしもそうですが、社内では「チームワーク」をキーワードにしています。われわれがグループウェアでビジネスをしているのはなぜでしょう? それはエンドユーザーの情報共有がうまくいったり、チームワークが向上したりすることを願うからです。そのことを再定義します。そしてサイボウズが「チームワーク創造カンパニー」であることをうたっていきます。われわれはソフトウェアベンダーではありません。「チームワーク屋さん」なのです。

ITmedia 今後、サイボウズの新しい展開があれば教えてください。

この1、2年で、携帯電話の世界が大きく変わりました。従来は各キャリアのプロプライエタリなプラットフォームであったものが、Windows Mobile、Android、またはiPhoneといったオープンなプラットフォームが浸透してきたのです。サイボウズとしても、モバイル向けの新サービスを考えています。時期や内容をお話できないのが残念ですが、期待してください。

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