サイボウズ、「まだ無名」のグループウェアで海外展開を本格化へ09年1月期中間決算発表

2009年1月期の中間決算発表会で、サイボウズの青野社長は「海外展開を本格化する」と意気込んだ。同社のグループウェア事業は国内では盤石だが、海外では「まだ無名」。誰もが使える“ユーザビリティ”を売りに、ライバルの手が届いていない地域の市場開拓に乗り出す。

» 2008年09月18日 09時05分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 サイボウズは9月17日、東京証券取引所で2009年1月期(2008年2月〜7月)の中間決算説明会を開催した。説明会では業績の推移に加え、ソフトウェア事業を柱にした海外市場の開拓に言及。海外のグループウェア市場の覇権争いに乗り出す姿勢を見せた。

 09年1月期の決算発表によると、連結では子会社2社の売却が響いたものの、特別損失の減少や子会社の業績向上、業務委託で人件費を抑えたことなどが影響し、減収増益となった。一方サイボウズ単体では、グループウェア事業が堅調に推移したものの、思うように利益は伸びず、増収減益だった。

サイボウズの青野社長 グループウェア部門への集中を図り、海外展開を強化すると青野慶久社長

 連結の売上高は前年同期比17.8%減の48億400万円、経常利益は同24.3%増の5億3900万円となった。一方単体では、売上高は同5.9%増の21億2400万円だったが、経常利益は同1.6%減の6億8100万円にとどまった。

 サイボウズ単体の業績を見ると、売上高は中間予想を2000万円程度上回った。グループウェア「サイボウズ Office」や大規模企業向けの「ガルーン」シリーズなど、既存顧客へのライセンスの販売が好調を維持。イントラネット内のネットワークに接続できる「リモートサービス」の売り上げも堅調に推移し、売上高の増加を下支えした。広告宣伝費を下期に重点的に配分する方式を取ったことで、利益への圧迫を回避した。

 同社はグループウェアの販売を含むソフトウェア事業を利益拡大の柱に掲げる。「グループウェアの成長と海外展開の強化をにらみ、シナジーの効果が出ない会社は切り離すのも1つの手」(石井和彦執行役員)とし、グループの再編を進めている。今期には、連結子会社のクロス・ヘッドおよび沖縄クロス・ヘッドを売却し、連結の対象外とした。連結の売上高は前期より落ち込んだものの、売上総利益は65%に膨らみ、前期比58%から上昇した。

 ソフトウェア事業は「堅く推移すると予測しているものの、(景況感や業績悪化への懸念から)楽観視はできない」(石井執行役員)という見方。2009年通期の業績予想は連結、単体ともに期初発表の数値を据え置いた。

2009年1月中間期の決算ダイジェスト(左)、業績サマリー(中央)、業績予想(右)

来年には海外展開、真っ向勝負ができるアジアに注力か

 サイボウズはグループウェア部門の集中を進め、サイボウズ Officeおよびガルーンシリーズを2本柱として、国内のグループウェア市場を開拓してきた。

 具体的には、大企業の個別のカスタマイズ要望にも応えられるよう、システムインテグレーション事業を2月に旗揚げ。大企業専用の営業部署を設立するなど、国内の大企業に向け販売体制を整備してきた。こうした下積みが実り、ガルーン2の最新版は、大和証券のグループ4500ユーザーの導入が決まるなど、「セキュリティに特に厳しい業界の企業からも支持を集めるようになってきた」(青野慶久社長)。

 国内でのグループウェア事業は盤石といえるが、「海外ではまだ無名」(青野社長)。国内においてグループウェアのトップシェアを獲得した勢いを追い風に、「来年度以降に海外に挑戦する」。

 海外展開の具体的な計画については「欧米やアジアなどの市場を調査中」と明言を避けたが、「製品展開のために、海外の企業との資本提携も考えている」とし、本業への積極投資を辞さない姿勢を見せた。

image 青野社長と石井執行役員

 また、地域に応じた製品展開にも注力する。例えば「IT関連の先進国はグループワークに業務の生産性の向上を求め、後進国は業務プロセスの管理を必要としている」(青野社長)など、地域ごとのニーズをくみ取った販売促進を手掛けるという。

 欧米では多くの企業でグループウェアの導入が進んでいるが、「アジアではそこまで進んでいないため、ゼロからの真っ向勝負ができる」と青野社長。「Lotus Notesのように専任の管理者を必要とせず、簡単に扱える」という特徴を売りに、製品の優位性を訴求していく。既に設立している上海の子会社などを、顧客開拓の窓口として活用する考えも示した。

サイボウズ Office 8は「Google製品よりも使い勝手を良く」

 青野社長は決算説明会において、グループウェア製品の最新版「サイボウズ Office 8」を2009年春をめどにリリースすることを明らかにした。サイボウズ Office 7ではAjaxなどの技術を駆使し、ユーザーインタフェースの改良に努めた。今回の開発もそうした流れを踏襲し「ユーザー向け機能の向上」に力点を置いている。

 「初心者のユーザーがとまどうような画面の遷移は極力避けるようにする」(青野社長)機能や、トラブル発生時の原因の調査にかかる時間を短縮するサポート機能を追加していく。

 Office 7のリリースは前バージョンから4年を要したが、そこからわずか1年強でOffice 8が発表される。また「(Googleカレンダーのような)Google製品よりも使い勝手を良くしたい」という青野社長の言葉からも、同社がサイボウズ Officeに込める期待の高さがうかがえる。

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