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» 2009年03月09日 08時00分 UPDATE

SOAへの現実的なアプローチ:SOA成功への第一歩――フロントエンド統合、その正解は

SOAを導入する際に必要なのは、段階的に業務システムを進化させることだ。ここでは特にフロントエンドの統合について考えていきたい。

[大田努(横河ソリューションズ),ITmedia]

SOA導入に向けた課題

 企業を取り巻く環境は日々厳しさを増しており、「より早く、確実に、低コストで、柔軟な」システム化を推進することが企業の命題となっている。その解決策の1つとして注目されているのがSOAである。しかし、いざSOAに取組もうとすると、以下のような課題をクリアすることが必須となり、なかなか最初の一歩を踏み出せないでいるのではないだろうか。

  1. 経営とITの双方からのアプローチが必要なため、社内人材だけで進めるのは困難。
  2. 最適な進め方や実装方法が分からない、またその方法論がない。
  3. SOA化に向けた導入・改修コストはいくらかかるのか、投資に見合った効果は得られるのかが分からない。

 既存システムを活用しながら成果を上げていくためには、いきなりゴールを目指すのではなく、段階的なアプローチを経て、無理なく業務システムを進化させていくことが望ましい。一部の大企業を除いて、ビックバン型開発は影を潜めており、現実には新システム構築時に必ず既存システムとの連携処理が発生する。詳細の仕様は当該システム担当者しか分からない場合も多く、時間とともに保守ドキュメントの陳腐化、保守担当者変更なども発生し、仕様はブラックボックス化されていく。

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SOA化に向けたシステム導入アプローチ

 SOAを見据えた現実的なアプローチを以下に示す。

STEP1:バックエンド統合

 EAIを活用して全社のインタフェース基盤を構築し、データ連携の集中化・可視化を行う。

 これにより、システム間のデータ連携が整備され、多重入力や業務のタイムラグが解消できるとともに、システム連携のメンテナンス性の向上が見込まれる。

STEP2:フロントエンド統合

 業務システムへの入り口をポータルで統合し、ユーザーアクセス権限に応じた画面制御によって、内部統制対応や個別ログインの回避、ルック&フィールの統一などを図る。

STEP3:ビジネスプロセス統合

 バックエンドおよびフロントエンド統合ができると、いよいよSOAである。「SOAは魔法の杖」とばかりに何でも繋がるというイメージがあるが、実際には簡単な作業ではない。既存システムから抽象度の高いビジネスロジックを抽出し、サービスとして実装するわけであるが、ここでポイントとなるのはアプリケーションの構築方法になる。設計開発の方法論であり、モジュールをどう構成すればよいかというアプリケーション・アーキテクチャが整備されていないと簡単には移行できない。

フロント統合の課題はシステム連携とユーザーインタフェース

 ここではさらに、フロントエンド統合について詳細を述べよう。

 社内ではイントラネットを含めて多くのシステムが稼働している。各システムは個別に開発されてきたため、ユーザーは使い勝手で苦労していないだろうか?

 例えば、お客様から製品・サービスに関する問い合わせが発生したとき、担当者が不在の場合を想定しよう。他の担当者がフォローするわけだが、客先との契約状況と過去の問合せ履歴・回答内容は別々のシステムで管理されているために第三者では詳細が分からず、お客様に迷惑を掛けてしまった、といった事象が起きうる。このような問題が起きるのは、コール受付システムと契約管理システムが別々のシステムとして構築されており、その連携方法や見方が、個人に任されてしまっているためである。

 こういった問題の解決や利便性向上のために、各ベンダーからフロントエンドを統合するポータル系ソフトウェアパッケージが販売されているが、ここにもいくつかの課題がある。それは、既存システムと連携するためには、そのインタフェースをパッケージに合わせて作りこまなければならず、またユーザーインタフェースもパッケージ独自の仕様となっているため、使い慣れた既存システムとの親和性がないなどである。さらに市販パッケージは高価なものが多く、投資対効果が不明確であるため導入に至らない、といった点も上げられる。

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 これら多くの課題を解決するためには、自由度の高いスクラッチ型のフロントアプリケーション開発が一番の解決方法だ。しかし、それでは開発工期、費用に課題を残してしまう。そこで注目したいのがカスタムメイドのフロントエンド統合である。

 例えば、横河ソリューションズの「eMethod Portal」は、各種ウィジェットやWebサービスコンテンツをマッシュアップすることで多様なユーザーインタフェースを実現しようというものだ。ポートレットをカスタマイズすることで、新しいコンテンツの提供やユーザー自身による画面レイアウト変更などが可能になっている。また、既存システムとの接続を可能にする部品群やデータ連携基盤を活用することで、システム連携のほか、分散された業務システムから必要なタイミングでデータを自動収集し「見える化」を行う、といった戦略的な活用方法も実装できる。

 このようなフレームワークを活用することにより、経営ダッシュボードのような照会系システムは工期を90%短縮することも期待できる。新規開発か、パッケージ導入か、目的に合ったフレームワーク活用か、自社の状況に応じてじっくり検討してみてはどうだろう。

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忘れてはならないシステムの信頼性確保

 ここで注意しなければならないのがシステムの信頼性である。従来は各システムに業務が分散されていたため、あるシステムがダウンしても他のシステムへは影響を与えなかったが、もし仮にフロントシステムがダウンした場合、配下のシステムが問題なく稼働していても、すべての業務が停止してしまうからだ。

 信頼性を高めるためには、実績のあるフレームワークを活用してもそれに過信せず、設計とテストは確実に行っておきたい。具体的には、ユーザー増に対応したパフォーマンステストや障害発生時にサービス停止を回避するフェイルオーバーテストだ。

 そして、忘れてならないのはこのシステムのエンジンであるWebアプリケーションサーバだ。

 価格を考慮すると、TomcatやJBossなどのOSS活用が考えられるが、信頼性確保の観点から商用のWebアプリケーションサーバ利用を検討したい。例では、国内ベンダーならではのサポート性、FullGCレスで高信頼性が確保できる日立のCosminexusを利用している。このようなSOA対応ミドルウェアを採用しておくことで、SOA移行の際にもベースインフラとして拡張して利用することができ、無駄がなくかつ安心である。

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著者紹介:大田 努(おおた つとむ)

横河ソリューションズ株式会社 情報エンジニアリング事業部 第2統括部長。某製造業生産企画部門を経て、1990年から横河電機グループの全社基幹システム再構築プロジェクトに携わる。その後、eビジネスソリューションやEAIビジネスの立上げ・推進や多くの基幹システム再構築プロジェクトなどを担当。2008年より、ERP・生産管理システム導入およびバリューアップソリューション部門を統括している。アグレッシブかつ柔軟な対応をモットーとしている。


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