100点よりも240点を目指したいオルタナティブな生き方 林雅之さん(2/3 ページ)

» 2009年09月28日 11時30分 公開
[土肥可名子,ITmedia]

 就職活動を始めたときから日経新聞はとっていたんです。で、片付けられないからそのまま部屋のかたすみに積んでおいたんですね。それが役にたちました(笑)。就職先に関する記事は多かったので、切り抜きも大学ノート2冊分になりました。で、それを面接に持ち込んだんです。「実は御社に興味がありまして、勉強してます」とノートを見せながらしゃべりました。そうしたら「すごいなぁ。次は月曜日に来てください」と。

林 雅之さん 「1つのことに集中するよりも、4つ並行で進める方がうまくいくんです」 林 雅之さん

 月曜日に面接に行ったら「当社で何をやりたいのですか」と聞かれたので、意図的にあいまいに「マルチメディアに興味があります」と答えました。「マルチメディアって?」と逆質問されて、ここぞとばかりに「アメリカでゴア副大統領が情報スーパーハイウェイ構想を提唱してまして、これからは――」と用意していたネタを一気にしゃべったところ、「キミよく勉強しているねぇ」と、無事内定にこぎつけました。

 ダメかもと思ってからの追い込みは得意かもしれません。短期間の集中力、瞬間的な反発力は結構あるのかな? 普段はボーっとしているんですけどね。

専門がない? 器用故の劣等感

 最初の配属先は前橋支店。営業担当で中小企業を回っていました。支店で久しぶりの新入社員だったこともあり、社員のみなさんからも取引先からもかわいがってもらいました。地元の小さな企業を回っては、経営とは何ぞやとか、これからICTを使ってこんなビジネスをやりたいとか、そんな話をお茶を飲みながら経営者としていましたね。楽しかったです。

 3年ほどたったころ、東南アジアでのプロジェクトの社内選考に応募しました。当時マレーシアでは、マハティール首相が提唱した「マルチメディア・スーパー・コリドー計画」が進行中でした。どうしてもこの現場を見ておきたかったのです。高い倍率にもかかわらず、これは珍しく受かりました(笑)。

 マレーシアでは、日本だったら入社3・4年目の新人ではやらせてもらえないトップセールスやプロジェクトマネジメント、そして国際イベントの企画運営などを経験し、とてもいい勉強になりました。半年間でしたけれど、英語でいう本当のネゴシエーションとか、接待とか、何から何まで本当に新鮮で貴重な体験でしたね。今でも現地のスタッフとメールでやりとりする付き合いが続いています。

 帰国してからは、事業企画や営業企画からシステムエンジニア(SE)までいろいろやりました。今は事業計画、情報通信政策などの調査・分析、支店の技術支援にクラウド案件の対応、と4つの業務を担当しています。上司も4人おりますが、状況に応じて仕事を自ら作り出すといった自発的な業務も尊重してもらっています。

 いろんなことをやりすぎて専門領域がない、ということに劣等感を抱いていた時期もありました。営業なのか、企画系なのか。SEもやったし、いろんなことに手を出してきたけれど、「お前の専門領域はなんだ?」と聞かれると答えが出せない。「何でも普通にひと通りはこなせます」と言うと、「食い散らかし過ぎだ。それじゃ評価されないぞ」と指摘される始末でした。

 1年間、1つの業務だけにしぼってやったこともあります。でも結局、自分の性格には合いませんでした。1つで100点を目指すより、80点でいいから3、4本走らせた方がいい。1つで目標を100点に設定すると、それがゴールになってしまう。それ以上を目指さなくなって、達成しても他のことをやらなくなる。だったらあえて100点ではなく80点に目標を設定して、他のこともやりながら全体のレベルアップを目指す。結果、合計点が240点になった方がいいんじゃないかって思ったんです。それに、失敗すると結構落ち込んでしまうタイプなんです。だから1つがダメでもほかに合格点がとれるものを持っていた方が、精神的にも大崩れしないで済むんです。

ブログから世界が広がった

 ブログをはじめたのは仕事がきっかけです。Web2.0が流行っていたころ、あるお客様のSNSを提案・設計する案件を担当しました。まだ自分でSNSもブログもやったことがなかったので、とりあえずmixiに招待してもらってやりはじめたんです。

 ブログは、当時まだビジネスに使っている人はそんなに多くなかったので、もう少しビジネスよりにやったらどうかなと思いました。僕はこれまでいろんな部署でいろんな仕事を経験し、専門領域は作れなかったけれど情報はたくさん持っている。それを社内だけでなくて社外に向けても発信したら、少しは世の中に役に立てるし面白いんじゃないかって。ちょうど上司からも社外交流しろと言われていたし、社内外で活躍されているブロガーのみなさんと知り合いになりたいという気持ちもありました。

 大きな会社にいると、30代も半ばを過ぎれば良くも悪くも先が見えてきます。安定はしていますが、もう少し違う顔を持っていてもいいかなと。外の世界を広げたかったんです。そうしないと何も知らないガラパゴス人間になっちゃうんじゃないかって。

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