プライベートクラウドはオンプレミス? ――富士通が独自調査で示した見解Weekly Memo(1/2 ページ)

富士通が先週、クラウド関連製品を発表した際に、今後のクラウドビジネスの方向性について興味深い見解を示した。同社の独自調査に基づくその中身とは――。

» 2009年11月02日 07時38分 公開
[松岡功ITmedia]

ハイブリッド型で新ビジネス創出へ

 「プライベートクラウドはオンプレミス、パブリッククラウドを利用したのがクラウドサービスと言ったほうが、単純で分かりやすいかもしれないが……」

 富士通の山本正己 執行役員常務システムプロダクトビジネスグループ長は、同社が10月27日に開いたクラウド関連製品の発表会見でこう語った。クラウド事業を展開する大手ITベンダーの会見で、「プライベートクラウドはオンプレミス」との表現が出てきたのは、これが初めてだろう。

会見に臨む富士通の山本正己 執行役員常務システムプロダクトビジネスグループ長

 ただ、この発言には続きがある。そこに富士通のクラウドビジネスにおける今後の方向性が示されている。今回は、そうした富士通が描くクラウド像にフォーカスを当てながら、「クラウド」の定義をあらためて考えてみたい。

 富士通が同日発表したのは、プライベートクラウドの構築を支えるインフラ製品群だ。仮想化や自動化などのクラウド技術でシステム最適化を実現するための製品強化に加え、マルチベンダー、マルチプラットフォーム環境に対応した新製品および支援サービスの提供を始めた。製品群や支援サービスの内容については、すでに報道されているので関連記事などを参照いただくとして、さっそく富士通が描くクラウド像をひも解いてみよう。

 まず、山本常務は、クラウドがもたらす変化についてこう語った。

 「クラウドがもたらす変化としては、所有から利用へのシフト、それによるコストの最適化、さらには開発環境の大幅な改善などが言われているが、最も大きな変化は“クラウドの集合知による新たなビジネス創出”にあると、われわれはとらえている」

 そして、今後のクラウド市場については、1.企業などにおける既存システムのITインフラのクラウド化によるコストダウン、2.SaaS(サービスとしてのソフトウェア)や高生産の開発などへの取り組みによるフロント業務のスピード化、3.社会システムの新たなサービス展開によるIT利活用分野の拡大、といった3つの領域での動きが進展すると指摘した。

 これらを踏まえた富士通の見解によると、1の「企業などにおける既存システムのITインフラのクラウド化によるコストダウン」がプライベートクラウドに相当する一方、3つの領域を支えるインフラとしてパブリッククラウドが今、注目を集めているという。さらにこれからは、「両方のクラウドがハイブリッドにインテグレーションされていき、新たなビジネスの創出につながっていく」(山本常務)というのが、富士通のクラウド像である。

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