クラウド時代のデータベース新潮流

オラクルが提示するデータベースの未来形Oracle Database Summit レポート

ITコストのさらなる削減、変化へのより柔軟な対応、そして終わりなきパフォーマンスへの要求――。さまざまな要件がシステムに求められる中で、DBはどのようにあるべきか。最新の商品やサービスから、その問いに対するオラクルの考えがうかがえる。

» 2009年11月18日 08時00分 公開
[岡田靖,ITmedia]

 11月12日、日本オラクル主催「Oracle Database Summit 2009 - 11g R2 & Exadata V2 登場! in 東京」が都内で開催された。その基調講演では同社の2つの新製品「Oracle Database 11g R2(11g R2)」とOracle Exadata V2(Exadata V2)に関連した話題が主に紹介された。

さまざまな面でITコスト削減を実現する11g R2

 3部構成の基調講演、最初に壇上に上がったのは米Oracleのデータベース・サーバテクノロジー担当シニア バイス プレジデント、アンディ・メンデルソン氏。25年間にわたってデータベース開発に携わり、現在データベース製品開発総責任者を務める。今回の2つの新製品の技術的なポイントについて、主に「コスト削減」という切り口で語った。

米Oracleデータベース・サーバテクノロジー担当シニア バイス プレジデント データベース製品開発総責任者のアンディ・メンデルソン氏

 まず、11g R2では、これまでのOracle DB製品の数々の特徴を受け継ぎつつ、さらに機能が強化されたことを強調した。

 「例えばReal Application Clusters(RAC)では、サーバプールとして管理することで動的なクラスター再配置が実現し、管理を簡素化している。さらに11g R2ではRAC One Nodeオプションが追加され、スケールアウトせずに1ノードだけで使いつつもRACの高可用性を享受できるようになった。RAC One Nodeは低コストで導入でき、後に必要になれば複数ノードへの拡張も容易に行える」

 また、Automatic Storage Management(ASM)によるストレージ仮想化やパーティーショニングを活用した階層化ストレージ管理、OLTPデータベースを最大4倍まで圧縮するAdvanced Compressionオプションといった機能は、ストレージの効率的な利用を可能にし、急増するデータ量に対しストレージへの投資を抑制する効果が得られる。

 一方、Exadata V2では、この圧縮機能を利用することでOLTP(オンライントランザクション処理)のパフォーマンスを飛躍的に向上させている。Exadata V2では、新たに搭載された大容量フラッシュメモリを強力なディスクキャッシュとして用い、ディスクへのランダムアクセスを大幅に減らすことが可能になっており、圧縮機能と組み合わせることでさらなる効果を発揮できるというのだ。

 「データ圧縮が3倍とすれば、もともと搭載している400GBのDRAMに1.2TB、5TBのフラッシュメモリに15TBのデータをキャッシュできる。ほとんどすべての物理ディスクI/Oを半導体の上で処理でき、毎秒100万件のランダムI/Oを実現する」(メンデルソン氏)

 もともとシーケンシャルなアクセスに強く、投資効率の高いデータウェアハウス用アプライアンスとして登場したExadataが、このような機能の追加によって汎用性の高いDBサーバとして使えるようになったといえる。

 メンデルソン氏は、ほかにも数多くのITコスト削減効果を挙げた。

 「11g R2は、ハードウェアコストを5分の1に削減、ストレージ関連コストを10分の1に削減、パフォーマンスを10倍以上向上、停止時間と未使用の冗長構成を排除、ソフトウェア・ポートフォリオを大幅に簡素化、DB管理者の生産性を2倍以上向上、そして9iや10gなど旧バージョンからのアップグレード・コストを4分の1に削減する。さまざまなテクノロジーが、こうしたコスト削減に役立っている」

Oracle DBのバージョンが上がるにつれて、DB管理に要するワークロードは大きく軽減されてきたという

変わりゆく社会、変わりゆくシステム、変わりゆくデータベース

 基調講演の2セッション目は、札幌スパークル システムコーディネーターの桑原里恵氏。システムコンサルタントとして、ユーザーやベンダーに対しシステムのグランドデザインやプロジェクトプランの策定・実践などを長年にわたって手掛けているが「近年ではDBの重要性を再認識させられることが多い。DBについてこれほど考えさせられるのは、個人的にはOracle 7以来だと思う」とのこと。

 「システムの内容が業務に近づいてきており、データの量や種類が多様化してDBの内容が昔とは違ってきている。また、アプリケーションは高度化し、SOA(サービス指向アーキテクチャ)やクラウドコンピューティングが広まるにつれて、DBの自律化が求められるようになってきた。それから、ITに対するコスト低減、信頼性やパフォーマンス向上、柔軟性といった要求が高まっており、そういった要素にもDBの技術が大きくかかわってくる」(桑原氏)

講演の冒頭、「データベースマニアのようなものです」とあいさつする札幌スパークル システムコーディネーターの桑原里恵氏

 近年の企業ITの方向性として、桑原氏は幾つかのポイントを挙げている。例えばアプリケーションの変化として、ECサイトのように顧客が自らWebで入力するようなシステムが増えてきたことなどを例に、次のように説明した。

 「これまでのように従業員が確定済みのデータを入力するシステムとは違い、顧客が考えながら入力を進めていくため、入力されたら即時に回答を示したり、顧客の次の作業を誘導するといった工夫が必要になってきている。そのためには高度な検索・分析機能が必要となるし、処理が確定するまでには何ステップものSQL処理が必要となり、パフォーマンスも重要。システムの背後には複数DBが組み合わさって動いており、それぞれの連携も、より厳しくリアルタイム性が求められてくる。事業環境の変化への対応も欠かせない……」(桑原氏)

 こうした近年の動向から、桑原氏はDBに求められる特性を以下のように示した。

 一方、システムを構築するユーザーやインテグレーターは、DBとどのように付き合っていくのか。桑原氏は「教科書的な正攻法だが、やはりグランドデザインをDB視点から見直すことが重要」としている。DBが持つようになったさまざまな技術をいったん見直し、DB側でできることは、できるだけDB側でやるようにすべきだろうという考えだ。

 「Oracle 7の時代からずっとDBを扱ってきて、DBが担うことのできる機能は増えてきている。トレードオフの関係にある要素も、新しい技術でブレークスルーを迎えている。最新のテクノロジーを改めて調べてみて、新しい可能性が感じられる」(桑原氏)

脅威的なパフォーマンスや次世代のサポートを、すぐに使える

 桑原氏のセッションを受け、日本オラクル 常務執行役員 システム事業統括本部長の三澤智光氏は、「OracleDBに求められているものは既存資産の継承。昔から、ユーザーが最も必要とする情報を入れているだけに、このことは欠かせない。そこに加えて、新しいテクノロジーを融合させている」と語った。長年にわたってOracle DBを使い続けているユーザーやシステムインテグレーターなどの存在が、オラクルにとって重要ともいえる。

Exadata V2を示して力説する、日本オラクル 常務執行役員 システム事業統括本部長の三澤智光氏

 日本オラクルは11g R2の市場投入に先立ち、国内のユーザー企業やパートナーの参加を得て、Oracle GRID Centerでベータプログラムを実施した。日本では初の取り組みだという。その主なテーマは、次世代グリッドテクノロジー、データ処理の高速化、コスト効果の高い災害対策サイト構築の3つ。

 「単なるβ版の検証や新機能の確認にとどまらず、すぐにでもシステム提案に使えるような実践的な形で検証している」(三澤氏)

 すぐに使えるということは、導入期間やコストを抑えられることになり、IT投資効率にも大きく寄与する。Exadata V2も迅速に導入できることが大きな特徴だ。

 「このようなシステム環境をすべてセットアップすれば、動き出すまでにはどれだけの時間とコストが掛かるか。それがDWHだけでなく、新たにOLTP性能が強化されたことにより、脅威的なパフォーマンスを発揮する新しい統合DB基盤として使えるようになった」(三澤氏)

 Oracle Industry Data Modelも、やはりすぐに使えるソフトウェアだ。短期間・低コストでDWHを構築できるよう、業種ごとに正規化されたデータモデルとなっており、それをベースとして拡張をすることで、スクラッチ開発より迅速かつ低コストにDWHの構築が可能となっている。

 新たなサポート手法も、すぐに使えるようになっているという。My Oracle Supportは、インターネットを経由してユーザーのリポジトリを収集、グローバルなナレッジとして蓄積し、それを基にパーソナライズ化された専用画面を通じてサポートを行うという内容だ。三澤氏は、デモを交えつつ、その使い勝手を紹介した。

 「この次世代型サポートモデルも標準のサポートサービスに加えて提供される。リポジトリを収集するために、お使いのシステムをインターネットにつないでいただく必要があるが、それによってシステム環境に合わせたパッチの検索や検証から、複数パッチをマージして適用するなど、管理を大幅に効率化できるようになる。プロジェクトごとにシステムをグループ化するなど、細かなパーソナライズも可能」(三澤氏)

My Oracle Supportの概要とデモ画面

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