「クラウドの最強集団を作る」――日本IBM、社長直轄の専門組織を設立

日本IBMが社長直轄のクラウド統括専門組織「Team Cloud」を1月に設立した。クラウド事業のスペシャリストの結集と育成に注力し、同社が一丸となってクラウド型サービスを企業に提案するという決意を表した。

» 2010年01月14日 17時11分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 「2009年から(社内で実施してきたクラウドコンピューティング関連)の教育レベルをさらに上げ、クラウドビジネスの最強集団を作る」

 日本アイ・ビー・エム(日本IBM) クラウド・コンピューティング事業 吉崎敏文執行役員は、1月14日に開かれた記者発表会でこう意気込んだ。日本IBMは1月にクラウドコンピューティング関連の事業やサービスをまとめる統括組織を設立。同社が数十年磨きを掛けてきた仮想化や自動化の技術を軸にしたシステム構築やSaaS(サービスとしてのソフトウェア)の提供など、インフラからアプリケーションまでを含むクラウド型サービスを国内企業に提案する体制を整えた。

Team Cloudのポジション Team Cloudのポジション

 新たに設立した組織の名称は「Team Cloud」。クラウドに関連する事業の企画や開発、サービスの提供を手掛ける「全社の英知が結集」(吉崎氏)した組織であり、橋本孝之社長が直轄する。営業やコンサルタント、プロダクトマネジャーが所属する事業部と調査、開発を担当する研究部門の中間に属する組織で、クラウド関連事業のマーケティング、営業、サービスの展開を考えていく。クラウド最高技術責任者(CTO)と呼ぶ統括担当も任命し、大企業向けサービスの提案の際に、技術的な調査や意志決定を下していく。300人のTeam Cloudの担当者も1月中に任命する。

 日本IBMによると、2009年はクラウド関連の取り組みを強化してきた1年だった。社内では、「パブリッククラウド、プライベートクラウドを実現する技術の基礎的な検証を終えた」(吉崎氏)。また社外向けには、仮想化や自動化の技術を取り入れた情報システム構築のコンサルティングサービスを手掛けてきた。「日本のクラウド市場が重要」という米IBMの意向も取り入れ、これまでの事業をまとめる組織を作った。

 IBMがクラウドコンピューティングの日本市場に注力する理由は、2009年1〜4月に実施した独自調査「The New Voice of The CIO」の結果が示している。日本のCIO(最高情報責任者)の50%が、コスト削減や新サービスの立ち上げをはじめとした企業の競争力強化において、「クラウドコンピューティング/SaaS」を重要テーマに挙げた。一方で、自社の情報システムにクラウドの技術やサービスをどう取り入れるべきか悩んでいる企業も多い。Team Cloudの役割は、こうした顧客企業に「情報システムのどの部分にクラウドを取り入れるべきかを判断し、仮想化、標準化、自動化の3つを軸にしたサービスを提案していく」(吉崎氏)ことだ。

 専門人員の整備にも注力する。3月中には日本IBMの社員1000人に対し、案件の提案に必要なマーケティング、営業、サービスのノウハウを教育する。「今後5年でクラウド関連の人材に100億円を投資する」(吉崎氏)という構想もある。クラウド事業を核にする日本IBMの意向は、スペシャリスト育成の取り組みにも現れている。

日本IBM クラウド・コンピューティング事業 吉崎敏文執行役員 日本IBM クラウド・コンピューティング事業 吉崎敏文執行役員

 現在日本IBMにおけるクラウド型サービスの提案や案件受注は、大企業を中心に進んでいる。吉崎氏によると、2010年中に中堅・中小企業にもサービスを提案する仕組みを作り上げるとしている。中堅・中小企業へのサービス展開は、他社企業とのアライアンスによる提案が主になる見通しだ。

 吉崎氏は「仮想化やオートノミック(自律)コンピューティングの技術がないとクラウドは実現できない。IBMはメインフレームからIA(インテルアーキテクチャ)サーバなど、他社機種の運用を可能にする技術がある。これをいかに早く顧客に届けるかが重要だ」と話し、Team Cloudを中心に日本IBMが一丸となってクラウド事業に取り組むと宣言した。クラウド事業の売り上げ目標は「未公表」としている。



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