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» 2010年01月16日 01時45分 UPDATE

盲導犬の今:ビジネス“ワン”に学ぶ、企業と社員ができるCSR活動 (1/2)

持続可能な社会の実現に向け、企業の社会的責任(CSR)が注目されている。企業が、そして社員一人一人ができることは何か。「盲導犬」に注目して考えたい。

[山本恵太,ITmedia]

 企業で働く犬がいる。社員を癒やす社員犬や、身体障害者の生活をサポートする補助犬だ。こうした「ビジネスワン(犬)」の中でも、視覚障害者の雇用創出に欠かせないのが盲導犬だ。企業が盲導犬の受け入れに必要な設備や運用コストは多くの人が想像するほど掛からないが、現状は導入があまり進んでいないといえる。

 盲導犬の受け入れは障害者雇用を創出するという点で、企業の社会的責任(CSR)への取り組みとも言い換えられる。盲導犬育成を支援する募金箱の設置や社内勉強会の開催など、社員一人一人ができる取り組みも、CSR活動を支えていく。企業のCSRの今を、日立情報システムズが取り組んだ盲導犬の受け入れやNECの社外活動から探っていく。

盲導犬を受け入れるということ

穂刈顕一さん 穂刈顕一さん

 「企業側のサポートは不可欠だ」

 こう話すのは日立情報システムズで盲導犬「イッシュ」とともに二人三脚で働く穂刈顕一さんだ。白内障で視力が低かった穂刈さんが同社に入社したのは2005年。現在、業務サポート本部 人財戦略部 人事課に所属している。白杖(はくじょう)と呼ぶつえを使い、自宅の千葉市から都内の職場まで電車で通勤していた。ある休日、駅のホームからの転落事故を経験し、働くには盲導犬が必要だと感じた。2007年、日本盲導犬協会からやってきたのが、イッシュだった。

 多くの国内企業にとって盲導犬の導入は未知の領域であり、日立グループでも前例はなかった。穂刈さんから相談を受けた日立情報システムズは、盲導犬を受け入れるためのアイデアを一緒に出し合った。「分からないことは受け入れてから考えよう」という姿勢で、イッシュと働くことを決めた。

 実際に受け入れると、幾つかの問題が生じた。その1つがにおいである。イッシュは多目的トイレで食事をする予定だったが、社内に食事のにおいが充満してしまう。穂刈さんは上司と相談し、食事場所を駐車場に移すことにした。盲導犬の受け入れ後までを支援する会社側の努力により、問題を1つずつ解決していった。

待機する盲導犬のイッシュ イッシュは空いているデスクを利用して待機している。盲導犬は待つのも仕事だ

そっと見守るようになった

 盲導犬の受け入れは、関係者だけの問題ではない。共に働く同僚にも理解と協力が求められる。例えば、ハーネスと呼ぶ胴輪を付けた盲導犬は仕事中であり、ほかの人が触ったり声を掛けたりしてはいけない。

イッシュの社員証 イッシュの社員証。同じ職場で働く仲間という証だ

 こうした決まりを職場に周知するために、日立情報システムズは社内報を使い、盲導犬と働くための心構えを従業員に伝えた。盲導犬と歩行体験ができるイベントも企画している。「盲導犬を街で見かけても、触ったりせずに、そっと見守るようになった」と話す穂刈さんの同僚の声からは、受け入れ体制の整備が進んでいることが見て取れる。

 実は、企業が盲導犬を受け入れるための費用はゼロに近い。貸与された盲導犬の食事や健康管理に掛かるコストは、使用者が責任を持って負担しないといけないからだ。企業の盲導犬受け入れについて穂刈さんは、「施設の改修といったハード面より、どうすればスムーズに導入できるかを考え、支援するというソフト面での理解が重要だ」と力を込める。

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