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» 2010年03月08日 19時16分 UPDATE

東証が構築した「arrownet」の実力、運用後の状況が明らかに

東証が1月に運用を始めた「arrowhead」システムと「arrownet」ネットワークの構築と運用後の状況を説明し、計画通りの性能を発揮していると強調した。

[國谷武史,ITmedia]

 東京証券取引所(東証)の新株式売買システム「arrowhead」およびネットワークの「arrownet」について、arrownetの構築を支援したジュニパーネットワークスと東証が3月8日、報道機関向けにネットワーク構築と運用後の状況を説明した。

 東証が1月4日から運用しているarrowheadとarrownetは、株式の注文や約定、注文板などの取引情報およびこれら情報の配信の高速化、海外ネットワークとの連携強化を目的に構築されたもの。ジュニパーは、arrownetにおける基幹装置としてエッジルータの「M 320」「M 120」を提供した

 arrowheadおよびarrownetを構築した背景について、東証の鈴木義伯常務兼最高情報責任者(CIO)は、取引手法の高度化や高速取引への要望の拡大、金融システムおける安定的な事業継続性などを挙げた。「特に証券取引所のシステムはICTの発展と一体で進化するものなければならないと考えている」と語った。

 構築に際して、鈴木氏は注文受付通知の応答時間が10ミリ秒以下、相場配信情報の遅延5ミリ秒以下の高速性、5年間のダウンタイムが10分程度という99.999%以上の可用性、事前の拡張基準を超えた場合に1週間以内で対応できる10年先までの拡張性を、非機能要件として定めたという。

tse01.jpgtse02.jpg arrowhead(左)およびarrownetにおける要件の実装方法

 arrowheadは、富士通のIAサーバ「PRIMEQUEST」やRed Hat Enterprise Linux、データ管理ソフトウェアの「Primesoft Server」、SAN対応ディスクアレイ「ETERNUS」、ネットワークサーバ「IPCOM」、セキュアスイッチ「SR-S」、IPアクセスルータ「Si-R」など組み合わせて構築している。オンメモリデータべースの利用などによる高速処理、サーバの三重化およびネットワークの二重化による信頼性、ピーク値の約4倍というキャパシティなどによって、3つの非機能要件を満たした。

 arrownetは、arrowheadのこうした狙いを支える重要な基盤と東証では位置付けている。証券会社や投資家が接続する2カ所のアクセスポイント(分散収容型)からセンター間の回線に、WDM(光波長分割多重装置)を使用し、プライマリセンターとバックアップセンターを含めたMPLSの光ファイバリング網を構築した。光ファイバリング網の99%は異経路で地下埋設がされており、大規模災害に対処できる信頼性を確保したという(残り1%は橋梁部など)。ジュニパーのM 320は主にMPLS内の10Gbpsのネットワークに、M 120はアクセスポイントおよびプライマリ/バックアップセンターとMPLS網の接続に使用されている。

tse03.jpgtse04.jpg arrownetの構成概略とジュニパー機器の導入状況(右)

 arrowheadおよびarrownet運用後の取引状況では、まず約定率が運用開始前に比べて減少した。鈴木氏によれば、これは新システムによって小口注文が大幅に増加したためだという。主要銘柄の1日当たりのTIKC回数(約定回数)は従前よりも2〜3倍に増加し、全銘柄の平均では約200回から400回に倍増した。

tse05.jpgtse06.jpg 約定率などの変化(左)とTICK回数の推移

 また、運用開始3日目に1月6日おける応答時間では、注文開始時などにおいてもほぼ10ミリ秒以下という要件を実現している。相場配信情報数は、arrowheadおよびarrownet運用開始前の2009年12月21日が216万8495件だったのに対し、運用後の1月7日は762万3488件と約3.5倍に増加した。

tse07.jpgtse08.jpg 時間帯別注文受付レスポンスの推移(左)と時間別情報配信件数の推移

 こうした運用状況に対して鈴木氏は、「小規模な証券取引所と除けば、われわれのシステムは世界トップクラスの取引システムの1つに加わることができたと思う」と話した。今後についても、取引のさらなる高速化や、取引全体の約6割を占める海外機関や投資家がアクセスしやすいネットワークの推進を計画している。

 arrownetへの機器提供について米Juniper Networksのケビン・ジョンソンCEOは、「われわれは米ニューヨーク証券取引所などにも提供しており、金融システムにおける信頼性や迅速処理などの実現に注力してきた。今回は東証の新たな環境に参加でき、大変光栄だ」と語った。

tse09.jpg 東証の鈴木常務兼CIOとJuniperのジョンソンCEO(左)

 鈴木氏によると、arrowheadおよびarrownetの構築に伴う投資額は約20億円。ジュニパーの採用理由について、「入札の結果、われわれの投資予算と要件に適う実績が通信業界で多数あったため」(同氏)と説明している。

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