東京証券取引所は大発会から、富士通が構築した株式売買の新システム「arrowhead」を稼働させた。売買注文の処理時間を500倍短縮し、ミリ秒単位の取引を実現することで、東京市場の国際競争力強化を図る。
東京証券取引所は1月4日の大発会から、富士通が構築した株式売買の新システム「arrowhead(アローヘッド)」を稼働させた。arrowheadは、注文、約定、注文板などの取引情報を異なるサーバ上で三重化して処理し、注文応答時間や情報配信スピードの高速化を実現する。インターネット取引の普及や金融技術の高度化に対応し、東京市場の国際競争力を強化する狙いがある。
arrowheadの最大の特徴は注文処理の高速性。従来は、顧客が注文して情報がマーケットに送信され、1つの取引処理が完了するまでに2、3秒かかっていたが、新システムでは5ミリ秒(1ミリ秒は1秒の1000分の1)となり、500倍程度短縮する。また、各種の情報配信は3ミリ秒にした。ミリ秒単位の高速性を実現し、欧米で主流になりつつあるコンピュータを使った自動売買の注文などにも対応、東京市場への資金流入拡大を見込む。新たな取引スタイルやビジネスモデルを生み出す可能性もあるとしている。
もう1つの焦点となる信頼性も、冗長構成により確保した。注文、約定、注文板などの取引情報を三重化したサーバ上で処理する。加えて、バックアップセンターも構築。広域災害が起きても24時間以内の復旧を可能にした。
拡張性にも配慮した。常にピーク値の2倍のキャパシティを確保し、必要があれば1週間程度で拡張できる。1月4日の稼働時点では、過去のピーク値の約4倍のキャパシティを確保しスタートした。
情報の透明性への取り組みでは、複数気配情報を上下5本から8本に拡大した。全銘柄のすべての注文情報をリアルタイムで配信する。一般投資家を含め、すべての市場利用者はリアルタイムですべての注文・気配情報を入手し、取引できる。また、新システム稼働に伴い、呼値の刻みや制限値幅および特別気配の更新値幅などの一部見直し、板寄せ時などの合致要件の一部見直し、連続約定気配制度なども導入し、売買制度面でも円滑な取引の促進や流動性向上を図るとしている。
富士通は、IAサーバ「PRIMEQUEST」とLinuxをベースに、ミドルウェアなどを組み合わせて新システムを構築した。データ管理ソフトウェアとしては「Primesoft Server」を開発した。これは、メモリ上に取引情報を配置することで、マイクロ秒(1秒の百万分の1)レベルの超高速データアクセスによるレスポンス性能とスループット性能を維持する。さらに、メモリ上に配置した取引情報を三重化して複数サーバで並行動作させることにより、障害時にも秒単位でのサーバ切替えやデータの保全性を確保している。
データベース「Symfoware」の機能も強化 。1分間で1400万回以上のSQL命令を処理し、データ量の増加に柔軟に対応する。
システム構成は、ハードウェアがIAサーバのPRIMEQUEST。PCサーバが「PRIMERGY」、SAN対応ディスクアレイ「ETERNUS」、ネットワークサーバ「IPCOM」、セキュアスイッチ「SR-S」、IPアクセスルータ「Si-R」。OSはRed Hat Enterprise Linux。
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