世界で勝つ 強い日本企業のつくり方

グローバルサイトの運用 体制とルール決め世界で勝つ 強い日本企業のつくり方(1/3 ページ)

グローバルサイトの運営には、本社と現地法人の意思疎通が不可欠だ。「運営の主体」「Webガバナンス」「監視機能」という3つの観点から、サイト運営の最適解を考える。

» 2010年07月15日 08時00分 公開
[大里真理子(アークコミュニケーションズ),ITmedia]

 第1回2回3回で、グローバルサイトの構築、そしてコンテンツやデザイン制作について取り上げた。今回はグローバルサイト運用にポイントを当て、組織体制およびルールの作り方を紹介していく。

運営の主体をどこに置くか

 コンテンツの更新は、グローバルサイト運営の生命線となる。最新情報をこまめに発信することで、検索エンジン経由でWebサイトに来訪する人が増えるからだ。コンテンツの更新体制は大きく、「本社主導」「現地法人主導」「特定の外部リソース主導」の3つに分類できる。

本社主導

 本社主導とは、全コンテンツの更新作業を本社1カ所に集中させることだ。更新の一元管理ができ、ノウハウもたまりやすい。グローバルサイト運営の全体像を本社が把握でき、サイトの均質化も図りやすいという点で、最も効率が良い組織体制といえる。デメリットは、対象とする市場から離れた場所でグローバルサイトを運営しなければならないことだ。現地のニーズに即したコンテンツのカスタマイズがしにくくなる。

 本社主導でグローバルサイトを運営する場合は、業務の切り分けが必要だ。HTMLの制作・チェック・承認を本社が担当し、コンテンツの企画や制作は現地法人に任せるといった具合である。作業をうまく分担することで、グローバルサイトの使い勝手やアクセシビリティ、デザインに一貫性を持たせている例も多い。

現地法人主導

 現地法人主導とは、グローバルサイトの更新を現地法人に一任することだ。専任の広報担当がいる現地法人は、グローバルサイト運営の起点にしてもいい。市場のニーズをくみ取りやすく、現地の人の共感を集めるコンテンツ作りにもつなげられる。

 注意点もある。本社がグローバルサイト運営を現地法人に任せてしまうと、Webサイトに対する関心や更新作業にばらつきが生じてしまうのだ。

 一例を紹介しよう。グローバルサイトのトップページに30以上の自社バナー広告を掲載している企業があった。本社はバナー広告の運営を現地法人に任せていたため、各部署がこぞってトップページからリンクを誘導したいと考えた。バナー広告は増える一方だった。

 同社はグローバルサイト刷新に当たり、全体最適を見据え、運用を一度本社主導にすることにした。バナー広告掲載の上限を5つと決め、掲載の優先順位を定めた。これにより、グローバルサイトの一貫性を取り戻した。不具合が生じた場合は、現地法人の運営に本社の統制を効かせることも必要といえるだろう。

特定の外部リソース主導

 グローバルサイトの全運用を外部委託する方法もある。主な理由は、Webの専門部署を社内に置きたくない、内部で関連するワークロードを管理できないといったところだ。外資系企業の場合、グローバルサイトを含むすべてのマーケティング資源の制作を代理店1社に委託し、コスト削減を図る例もある。

 委託先のWeb制作会社に専門家がいる場合、グローバルサイト担当者が細かい運営ルールを知らなくても、コンテンツをスムーズに更新できる体制を整備しやすい。外部委託の主な対象は、HTML制作やガバナンスの確認であり、コンテンツの企画を外注している企業は少ない。


 グローバルサイト運営に適した3つの体制を紹介したが、実際にはどれか1つに固定するよりも、ケースバイケースで使い分けている企業が多い。具体的には、企業案内や商品紹介のコンテンツ制作は本社が担当し、それ以外は現地法人に任せるといった運用の切り分けをしたり、現地法人の規模やグローバルサイト運用の実績から体制を柔軟に整備したりしている。

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