日体大が新設した図書館の情報端末――稼働まで2カ月も、コストは5分の1に導入事例(1/2 ページ)

日本体育大学は、世田谷キャンパスに新築した図書館の情報端末としてHPの「HP MultiSeat Computing」を採用した。検討から稼働まで2カ月という短い期間ながら、最大限の導入効果が見込まれる選択だった。

» 2011年02月09日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 日本体育大学(日体大)は、2010年に竣工した新しい図書館の情報端末として、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)の「HP MultiSeat Computing」を導入した。時間とコストの厳しい制約の中で、同製品が最善の選択肢であったという。検討から本番稼働までのエピソードを、電算課 主任の荒井俊嘉氏と図書館課の衞藤俊介氏に聞いた。

端末を増やして、コストは削減

管理部 電算課の荒井俊嘉主任

 日体大の図書館は、「東京・世田谷キャンパス」(世田谷区)と「横浜・健志台キャンパス」(横浜市青葉区)の2カ所にある。世田谷キャンパスでは、2009年から図書館を含む校舎の建て替え工事が進められている。2010年7月に竣工した新図書館は2フロアの構成で、延床面積も従来の約2倍の2013.73平方メートルに増床された。

 以前の情報端末は2つのキャンパスに合計40台のPCが設置され、端末ごとにインターネット閲覧やレポート作成、教材の視聴といった用途が決められていた。図書館のリニューアルに伴って情報端末の刷新が計画され、設置台数を増やすことや1台の端末でさまざまな用途に対応できることが図書館課で検討された。図書館課の要望を受けて、電算課が具体的な検討を開始したのが2010年5月のこと。竣工まで2カ月間ほどしかなく、短期間で構築できる手段を急いで検討しなければならなかった。

 荒井氏によると、当初は従来と同じPCの導入を検討した。だが設置台数が増えることで運用体制の見直しが必要になり、導入・運用コストが膨れ上がることも判明した。そこで、「ニュースサイトで見たMultiSeatの存在を思い出し、急遽日本HPに相談した」(荒井氏)という。荒井氏は、日本HPの紹介先を含めてMultiSeatの導入を手掛けて実績を持つ代理店を選んだ。

 MultiSeatは、ホストPC(親機)の「HP MultiSeat ms6000 Desktop」と、クライアント(子機)の「HP MultiSeat t100 Thin Client」で構成され、親機と子機をUSBケーブルで接続して利用する。1台の親機に15台程度の子機を接続できる。親機にはWindows Server 2008 R2をベースにした「Windows Multipoint Server 2010」がインストールされ、リモートデスクトップサービスで子機がアクセスする仕組みだ。電算課では、MultiSeatを世田谷キャンパスに61台(うち親機は9台)、横浜キャンパスに36台(同5台)を導入。予備となる子機を含めると導入規模は全体で100台あまりとなっている。

世田谷キャンパスの図書館2階に設置された情報端末スペース。子機が並ぶ机の中央に親機がある

 一見すると導入初期のコストは、運用に慣れたPCよりもMultiSeatのような新しい製品の方が結果的に割高になると思われがちだ。だが荒井氏によれば、導入コストはPCの5分の1程度であり、ハードウェアの調達価格やディスクイメージの作成・管理などにかかる費用、ネットワーク構築など費用がコストの圧縮に大きく貢献した。

 例えば子機本体の価格は7000円程度であり、これにディスプレイやキーボード、マウスが必要になるが、ハードウェアの故障を考慮してもPCより安価になる。また、ディスクイメージもPCであれば1台ごとに用意しなければならないが、MultiSeatであれば親機の台数分で済む。ネットワークも100台のPCなら単純に100台分のポートが必要になるが、親機の台数分をそろえるだけとなり、スイッチなどを増備したり、全ての端末にネットワークを設定したりする手間も少ない。これらの特徴から、保守コストもPCに比べて4分の1から5分の1程度に圧縮できる見込みだという。

子機の「HP MultiSeat t100 Thin Client」。ディスプレイの背面にカートリッジのようにはめ込み、親機とキーボート、マウスを接続して利用する

 「MultiSeatの採用でも2カ月間の構築作業は大変だったが、新しい図書館の竣工に合わせて情報端末を無事に稼働できた。PCでは不可能だっただろう」と荒井氏は話している。

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