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» 2011年02月14日 08時36分 UPDATE

Weekly Memo:グローバルな合従連衡の予兆

NEC、富士通とOracle、日本HPが先週、相次いでITのプラットフォーム事業に関する発表や説明会を行った。一連の発表から見えてきたのは――。

[松岡功,ITmedia]

相次いだサーバ事業強化策の表明

 まずは各社が先週行った発表や説明会の大まかな内容とキーメッセージを順に紹介しておこう。

 NECが2月9日に行った記者説明会のテーマは、プラットフォーム事業成長戦略。ちなみに同社のプラットフォーム事業は、サーバやストレージなどのハードウェア製品、OSやミドルウェアなどのソフトウェア製品、PBXやユニファイドコミュニケーション(UC)向けをはじめとしたネットワーク製品からなる。

 同社のプラットフォーム事業を統括する山元正人執行役員常務は今後の事業展開として、「プラットフォーム事業の基盤としてサーバ事業をグローバルに展開する」「クラウド指向サービスプラットフォームの基盤として整備拡充する」「UCのトータルソリューションプロバイダーをめざす」という3つの方針を挙げた。

 さらに、ものづくりの観点から日本製ならではの品質の高さを、もっとグローバルにアピールしていきたいと強調した。

 3つの方針に基づいて山元常務が重点事業に挙げたのは、UC、クラウド共通基盤、サーバの3領域。具体的な取り組みとして、UCでは中核製品「UNIVERGEシリーズ」の拡販、クラウド共通基盤では同社のクラウド基盤である「REAL IT PLATFORM G2」の強化、サーバでは省電力化、高密度化、軽量化をさらに追求していくことなどを説明した。

 サーバについてはさらに、グローバルですでに実績のあるネットワーク製品の販売網を活用して、「国内中心からグローバルサプライヤーへ転進したい」(山元常務)とし、先頃PC事業で合弁を発表した中国レノボグループとも、中国市場を皮切りにグローバルで協業を図っていく検討を進めているという。

 山元常務はこうした取り組みによって、2009年度で3737億円だったプラットフォーム事業の売上高を、2012年度には4100億円に引き上げるとともに、09年度で17億円の赤字だった同事業の営業損益を、12年度には200億円の黒字に転換したいとした。

記者説明会に臨むNECの山元正人 執行役員常務 記者説明会に臨むNECの山元正人 執行役員常務

グローバルで販売契約を統一

 NECがプラットフォーム事業戦略の説明会を行った2月9日、富士通と米Oracleがこちらもプラットフォーム事業に関連する協業強化を発表した。内容は、UNIXサーバ「SPARC Enterprise」の共同開発の延長、両社共同による開発・マーケティング・販売活動の強化、広範囲な製品販売契約について合意したというものだ。

 SPARC Enterpriseの共同開発における契約は従来、Oracleが買収した米Sun Microsystemsと富士通との間で結ばれていたもので、今回それをOracleがあらためて延長した格好となる。

 ただ、両社が2010年12月に発表したSPARC Enterprise Mシリーズの新製品は、両社のロゴを配した共通デザインの筐体となっており、同時にSPARCプロセッサの性能を2015年までに15倍にするという開発ロードマップも共同で発表済みだったことから、今回の契約延長は既定路線といえる。

 今回はさらに、富士通がOracle製品を全世界で再販することが可能となる「オラクル・パートナーネットワーク契約」を結んだ。これまで富士通はOracle製品の販売契約を各国の拠点ごとに結んでいたが、これを全世界で統一した形となる。

3大勢力によるグローバルな合従連衡に期待

 今回の協業強化にあたって富士通とOracleが連名で発表したニュースリリースには、「今回、Oracleと販売およびサポート分野でグローバルに連携を強化していくことで、お客様にこれまで以上に強力で充実したソリューションを提供してまいります」(富士通の山本正已社長)、「Oracleと富士通との関係は新たなフェーズへと進み、最適化や評価・試験を行った製品を両社一体となって開発し、全世界で販売します」(Oracleのラリー・エリソンCEO)と、両社トップのコメントが記されている。

 両コメントが象徴するように、今回の協業強化で両社の関係が一層深まったのは間違いない。この発表を受けて感じたのは、説明会が同じ日だったNECのプラットフォーム事業もグローバル展開を一段と強化するならば、もっと大胆な動きに出てもいいのでは、ということだ。

 そんな折、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)が翌10日、ネットワーク事業戦略に関する記者会見を行った。内容は、米HPが2010年4月にネットワーク製品の有力ベンダーだった米3comを買収し、手薄だったネットワーク事業を強化したのがポイントだ。

 会見に臨んだ日本HPの小出伸一社長は、「3comをはじめとしてここ10年ほどで数十社のM&Aを行ってきたことにより、HPはサーバからストレージ、ネットワーク、サービスまでフルポートフォリオで、クラウド時代に向けた顧客ニーズに対応できるようになった」と胸を張った。

 記者会見に臨む日本HPの小出伸一社長 記者会見に臨む日本HPの小出伸一社長

 小出社長が個別の事業戦略に関する会見に姿を見せるのは珍しい。それも「今年はぜひともネットワーク事業を大きく伸ばしたい」との強い思いからだ。会見では小出社長の決意表明後、フルポートフォリオを生かしたネットワーク製品の営業戦略などが説明された。

 こうした先週行われた一連の発表から頭に浮かんできたのは、本連載コラムで幾度か述べてきた「グローバルな合従連衡」への期待だ。あくまで私見としての仮説だが、あらためて説いておきたい。

 企業向けクラウドサービスを幅広く展開でき、オンプレミス(自社運用)向けにもハード、ソフト、サービスを総合的に提供できるグローバルなメジャープレーヤーといえば、IBM、HP、そしてSunを買収したOracleなどに絞られる。国産IT大手の富士通、NEC、日立製作所もこの一角に名を連ねたいところだ。

 そこでグローバルな合従連衡へ向けて期待したいのは、Oracleと富士通、HPとNEC、IBMと日立製作所が、それぞれさらにパートナーシップを深めることだ。この3つの組み合わせに共通しているのは、ミッションクリティカルなサーバ分野で長年の戦略的協業関係を築いてきたことだ。それぞれにそうそうたる顧客企業が名を連ねていることが、パートナーシップの礎となっている。

 いずれの組み合わせとも互いに競合する分野はあるが、総じて米国勢にとっては日本勢の製品開発力や高品質、ITサービス力を魅力に感じているはずだ。一方、日本勢にとってはそれぞれのパートナーのグローバルブランドを生かしたボリュームビジネスを展開できることに大きなメリットがある。

 今回、Oracleと富士通の関係は、OracleのエリソンCEOが言うように新たなフェーズへと進んだ。HPとNECの関係についても、ネットワーク事業を伸ばしたいHPとグローバル展開を強化したいNECという先週の両社のメッセージからすれば、協業を深めるメリットは少なくない。

 そう考えると、先週の一連の発表はグローバルな合従連衡の予兆といえまいか。そんな期待が少し膨らんだ一週間だった。

プロフィール 松岡功(まつおか・いさお)

松岡功

ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。



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