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» 2011年02月16日 08時00分 UPDATE

中堅中小、勝利の方程式:とことんこだわるサービスで顧客の心をつかむ東急セブンハンドレッド

名門コースとして知られる東急セブンハンドレッドクラブは、外資系ゴルフ場が価格競争を仕掛ける中、こだわりのある、質の高いサービスで差別化を図っている。

[浅井英二,ITmedia]

 少し大げさに聞こえるかもしれないが、日本の牽引役だった「ものづくり」は大きな曲がり角にきている。インターネットの普遍化は、生活やビジネスの至るところでスタンドアロンからネットワークへという変化を引き起こし、企業の競争力モデルも大きく変えてしまった。「製品とサービスの掛け合わせ、つまり商品サービスシステムで競う時代に入ったのに多くの企業はそのことに気づいていない」と話すのは、東京大学 知的資産経営総括寄附講座の特任教授を務める妹尾堅一郎氏だ。

 もちろん、モノとサービスを相乗化し、パートナーの力もまとめ上げ、価値をさらに高められるのは、どちらかというと規模の大きな企業なのかもしれない。競争力モデルの変容はトレンドとして変わらないものの、中堅・中小には別の考え方や言い方もあるだろう。日経BP社で日経情報ストラテジーや日経アドバンテージの編集長を務めた上村孝樹氏は、「20世紀の大量生産・大量消費時代は終わった。企業は商品やサービスにおいて他社にはない独自性や徹底したこだわりを持ち、自前で顧客を獲得・維持しなければならない」と話す。

 「中堅中小、勝利の方程式」と銘打ったこの短期連載では、江口ともみさんと一緒に取材した企業を例に取り、成功の決め手を探ってみたいと思う。

 最初にお邪魔した東急セブンハンドレッドクラブは、ゴルフ好きならよくご存じの名門コースだ。スリーハンドレッドクラブとファイブハンドレッドクラブが東急の創業家と親交のある政財界の名士が会員に名を連ねるプライベートコースであるのに対して、東急セブンハンドレッドクラブは法人会員によって支えられている。プレーも会員の紹介か同伴がないと難しく、良い意味で敷居が高い。秋には女子プロトーナメント(富士通レディース)も行われている。

 多くの中堅中小企業から見れば、何と条件の良い恵まれた事業と映るかもしれないが、ゴルフ産業も厳しい環境にあることは変わりない。

 レジャー白書によれば、ゴルフ場の市場はスポーツ市場において最大の1兆円を超える規模だが、参加人口は決してすそ野が広いとは言えず、50歳以上のシニア率も6〜7割と高い。2009年にはゴルフ場の売り上げは減少しており、新規顧客よりは、既存顧客がどれだけ足を運んでくれるかが重要となっている。

 ほかの多くの業界と同様、外資も参入している。彼らは経営不振に陥ったゴルフ場を買収し、価格競争を仕掛けているという。そうした外資系のゴルフ場では、低料金で気軽に楽しめる反面、ゴルフ「倶楽部」としての雰囲気が損なわれているという指摘も聞くが、事業として成り立たせようとしている経営努力の結果だろう。既存のゴルフ場としては、価格競争を受けて立つのか、しっかりと顧客層をセグメントし、より高い価値を提供することで顧客を維持するかだろう。

 幸い、東急セブンハンドレッドクラブは、良い意味で敷居が高い正真正銘の「会員制」だ。会員企業数の上限は700と決められている。こだわりのある、質の高いサービスで差別化を図ることが、企業として強みを発揮できる。

 「この業界も二極化が進んでいるが、基本的にはキャパシティのある事業。メンバーをどんどん増やせるわけではないし、快適さを考えれば、1日にプレーする組数を増やせるわけでもない」と話すのは、副総支配人を務める遠藤庫夫氏。

 遠藤氏が目指すのは、メンバーをとことん大切にした「社交場」だという。キャディーがプレーヤーの癖までつかみ、その場その場で適した番手のクラブを手渡すのはもちろんのこと、プレー後の食事にまで気を配り、一人ひとりの嗜好に合わせて食材を仕入れたり、酒類をそろえているという。

 こうした質の高いサービスは「人」がカギを握っている。フロントでも限られたスタッフだけでなく、だれでも馴染みのお客様として対応できる必要があるし、キャディーやレストランのスタッフまですべての従業員が必要な情報を必要なときに共有できなければ、「会員として大切にされている」と満足してくれない。よく教育された、優れた従業員が欠かせないが、土曜・日曜や祝日を休めない職場では、従業員の入れ替わりが激しいのも頭痛の種だ。

 「機械でやっているのではなく、人がもてなしている。スタッフが提供するサービス品質の水準をできるだけ高く維持するため、システムを導入した」と遠藤氏は話す。東急セブンハンドレッドクラブは、1995年に富士通のパートナーである富士テレコムのゴルフ場管理システムを導入、予約受付から顧客管理まで幅広く活用している。3世代目となる今では、電話とコンピュータを連携させるCTIシステムも組み合わせ、予約の電話も来客履歴を参照しながらきめ細かに対応できているという。

 「もちろん、システム導入以前には、個々のスタッフがメモを書き留めるなどして気を配ってきたこと」と遠藤氏は至極当たり前のことのように話す。システム化によって、経験の浅いスタッフが多い中でも、サービスの質を標準化できた好例だろう。ITが最も強みとするところを上手く経営に生かしている。

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