クラウド戦略の第一歩を踏み出す 独Software AGCeBIT 2011 Report

情報通信の国際見本市「CeBIT」開幕を直前に控え、地元ドイツを代表するソフトウェア企業のSoftware AGが新戦略を発表した。

» 2011年03月01日 12時38分 公開
[伏見学,ITmedia]

 日本とドイツの関係は古い。昨年は日独交流150周年を迎えるとともに、両国でさまざまな記念事業が行われた。スポーツ、とりわけサッカーにおいての交流が盛んで、多くの日本人選手がドイツのプロサッカーリーグ「ブンデスリーガ」で活躍している。

 ビジネスに伴う企業進出も活発だ。デュッセルドルフ日本商工会議所によると、2011年2月末現在、545社の日本企業がデュッセルドルフのあるノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州に拠点を設けている。

 そのドイツにおける北部の主要都市・ハノーファーで、毎年春に開かれるのが情報通信の技術や製品に関する世界最大級の展示会「CeBIT」である。1970年から40年以上も続く同イベントは、今年は3月1日〜5日の日程で開催する。

 CeBIT 2011開幕前日の2月28日(現地時間)、会場となるハノーファー・メッセにおいて、ソフトウェア大手の独Software AGは全世界のプレスに向けたカンファレンスを実施した。計画を上回るスピードでの売上高10億ユーロの突破を報告したほか、BPM(ビジネスプロセス管理)ソフトウェアの「webMethods」と「ARIS」を統合した新製品「Enterprise BPM」や、クラウドサービスに関する新コンセプトとなる「Software AG Cloud Ready」を発表した。

早くも経営統合の効果あり

独Software AGのカールハインツ・シュトライビッヒCEO 独Software AGのカールハインツ・シュトライビッヒCEO

 リーマン・ショック以降、企業の投資低迷によって多くのITベンダ企業が苦戦を強いられる中、BPMソフトウェアを軸に事業を展開するSoftware AGが好調だ。2010年度に10億ユーロを超える売り上げを達成。10億ユーロという数字は同社が中長期計画の中で目標に掲げていたが、計画より1年以上も早く実現した。同社CEOのカールハインツ・シュトライビッヒ氏は、「(昨年12月に経営統合した)独IDSシェアーとのシナジー効果が早くも表れるなど、ビジネスが順調に進んでいる」ことをアピールした。

 同社のビジネスを下支えするのが高い技術力だ。米Businessweek誌が発表した急成長ハイテク企業ランキング「Hot Tech 50」2010年版において、同社は米Oracleや米Microsoftなどをしのいで7位にランクインした。

 そうした技術力を背景に市場から高い評価を得ているのが、主力事業のBPMソフトウェアである。従来の製品であるwebMethodsに加えて、IDSシェアー買収によりARISを獲得。このたび、両者の強みを補完する統合製品として、新たにEnterprise BPMをリリースする。これは、設計や実行、モニタリングなど、企業のビジネスプロセスにおけるライフサイクルすべてをサポートする。

 同社CTO(最高技術責任者)兼開発&プロダクトマーケティングのウォルフラム・ヨースト氏は「双方の統合によって、機能ベースと技術ベースのプロセスが処理できるようになった」と強調した。例えば、リアルタイムでプロセス処理が可能なwebMethodsのエンジンをARISに組み合わせることで、業務プロセスの実績測定をリアルタイムで管理できるという。

さまざまなアプリケーションをつなぐクラウド

 もう1つの目玉となるのが、2011年第3四半期に提供予定のCloud Readyだ。これはコンセプトであり、具体的な製品と呼べるものではないが、同社のクラウド戦略に向けた重要な足掛かりといえる。現在、多くの企業がSaaS(サービスとしてのソフトウェア)およびクラウドサービスを活用しており、人事や購買、ビジネス分析など企業に散在する業務アプリケーションとクラウド上のアプリケーションを統合するニーズが高まっている。

 Cloud Readyで提唱するのは、あるプラットフォームに存在するさまざまなアプリケーションやシステムそれぞれの間の統合およびガバナンスの両機能を提供し、1つのビジネス基盤を構築することである。バラバラに分かれているものをつなぎ合わせ、共通基盤に統合するという考え方であり、SOA(サービス指向アーキテクチャ)の延長線上にあるものといえよう。

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