『日本』復活に向けてオルタナティブ・ブロガーの視点

東北地方太平洋沖地震で日本は傷つき、悲しみにくれた。しかし我が国は必ず復活する。オルタナティブ・ブロガーの林雅之氏が日本再建を信じ、課題を洗いあげた各メディアの記事を取り上げ、復興までの道のりを解説する。

» 2011年03月24日 15時35分 公開
[林雅之,ITmedia]

(このコンテンツはオルタナティブ・ブログ「『ビジネス2.0』の視点」からの転載です。エントリーはこちら。)


 東北関東大震災が発生してから10日が過ぎました(編集部注:元のブログは3/22に書かれたものです)。被災者の支援が最優先かと思いますが、この三連休はTwitterのタイムラインで日本の復活や復興、未来などについての意見もちらほら見られるようになりました。被災地が復興し、日本が復活するのか、今後の非常に大きなテーマとなっていくでしょう。

 日本再建には5年

 世界銀行は3月21日、日本の再建には5年を要する可能性があるとの見解を明らかにしています。本報告書では、実質国内総生産(GDP)は2011年半ばまではマイナス成長で、その後の数四半期は復興努力が加速することで成長が上向くと予想し、再建の努力は5年間続く可能性がある、と指摘しています。

 日本の被災総額は10兆円〜19兆円か? それとも35兆円?

 世界銀行の調査によると、今回の震災による被害総額は、1220億〜2350億ドル(約9兆9000億〜19兆円)に達するとも言われており、日本の成長率の一時的な鈍化によって貿易や投資が抑制され、短期的には地域経済にある程度の影響があると予測しています。特に自動車や電子機器産業が最も影響を受ける可能性が高いと指摘しています。

 国内の専門家はもっと厳しい数字を算出をしています。ダイヤモンド・オンライン(2011.3.15)の「未曾有の東日本大震災による経済的損失の全貌 一橋大学大学院経済学研究科 佐藤主光教授 緊急インタビュー」では、今回の地震で予測される経済的インパクトについて、(A)日本経済全体と(B)被災地域に区別した上で、前者を(1)短期と(2)中長期に分け、シナリオ2の場合は、直接損害額を35兆円と算出しています。数字を見る限りは非常に厳しい現実と言えるでしょう。計画停電と福島第一原発による損害額を考慮すれば、さらに金額が増す可能性は否定できないでしょう。

 「復興庁」は創設されるか?

 政府(民主党)は3月20日、東日本巨大地震の被災地復興などに取り組む「復興庁」を創設する方向で検討を始めています。専任の担当官僚を設置し、省庁横断の復興事業を統括し、迅速に復興を進めていくことを狙いとしています。「復興庁」の創設にあたっては、関東大震災後に首相直属機関として設置された「帝都復興院」を参考にしています。今回の震災の場合は、復興予算規模が阪神大震災の10兆円を大きく上回る可能性があるため、新たな統括組織が必要と判断しています。「復興庁」が主導する政策の動きが、今後の日本の復興を左右すると言えるでしょう。

 日本復興に向けて

 さまざまな課題も山積しています。超少子高齢化社会、年金・社会保障など課題先進国として取り組んでいかなければならないテーマがある上に、さらに今回の震災が追い打ちをかけました。被災地が復興し、関東大震災後に高度成長を遂げたような日本が再び復活するのでしょうか?

 ITproの「巨大地震から学ぶ『日本再設計の論点』」(2011.3.18)に10の論点が示されています。

 マネジメントの論点

【判断】顧客のために秩序や組織の枠組みを超える

【実行】判断、計画立案、指示、説明を少数精鋭で担う

【広報】顧客が理解できる情報発信

【報道】事実を系統立てて冷静に伝える

 テクノロジーの論点

【自力】技術は一人称で舵取り

【制御】異常時に優先順位を付けてさばく

【遠勤】モバイルワーク禁止を解除

 グランドデザインに関する論点

【代替】インフラのバックアップ

【設計】全体像から描き直す

【理想】全員が協業するために

 この記事は、情報システムを中心に書かれていますが、金融政策も重要となるでしょう。3月16日のニューヨーク市場で、円相場が1ドル=76円25銭まで急騰し、16年ぶりに最高値を更新しました。なぜ震災なのに、政府が介入しなければならないほど、急激に円高が進んだのでしょうか?

 日経ビジネスオンライン(2010.3.18)の「円高阻止へ、震災復興資金計画示せ 加藤隆俊・元大蔵財務官インタビュー」では、今回の震災と福島第一原子力発電所の事故は、日本だけの問題ではなく、貿易活動に大きく影響する世界経済全体の問題としています。円高の背景には、世界経済全体が悪化が予想される中で安全資産である円を買う動きがあったことと、日本企業の決算末で円資金があり、海外からの利益送金がこれまでよりも大幅になると見越して投資家が円買いに走ったことなどがあげられます。そして円高を阻止するためには、復旧、復興コストを調達する計画を示す必要があると指摘しています。国債発行による資金調達が難しい中、どのように今回の復興資金を調達できるかがポイントとなると考えています。

 ダイヤモンド・オンライン(2011.3.18)の「震災復興に向けた経済運営を考える|岸博幸のクリエイティブ国富論」によると、総額10兆円規模の被害であった阪神淡路大震災の際には、1年の間に3度の補正予算が講じられ、総額3兆3800億円の震災対策費が計上されたとのことです。岸氏の記事では、戦後最大の困難を乗り越えていくためには、経済運営について与野党の枠を超えて、民間の“正しい”有識者も巻き込んだ体制で、経済財政諮問会議のような経済運営の司令塔を構築すべきであるとしています。先述した「復興庁」の動きも1つの流れと考えることができるでしょう。

 日経ビジネスオンライン(2011.3.15)の「大震災を平成版マーシャルプラン作成につなげよ!」では、今こそ世界を驚かせ、日本の復活につながる「平成版マーシャルプラン」を作り上げる必要があると指摘しています。テーマごとに12カ月、24カ月、36カ月、10年と期限を設定し、資金需要も緻密に計算し、資金の調達計画まで含めて、現実的で効果的なものを描き、復興計画を政治・行政・民間・国民が一体となって作り上げることが求められるとしています。

 一方、ダイヤモンド・オンライン(2011.3.18)の「危機が続く今、国家が本当に果たすべき役割 ――田中秀征・福山大学客員教授」では、原発の問題、救援活動、新しい災害への対応(余震や津波など)、中長期的ビジョンも大切だが、財源確保と県境を超えた国家主導での緊急対応策を重視すべきだとしています。

 これらの復興策の記事をまとめると、復興のための資金調達を可能にする財源確保策と、国家主導の復興策を明確に示すことが、重要であると考えることができます。


 日本の復活と未来を信じて

 そして、日本の復活と未来を信じる記事が多く掲載されていますので、最後に紹介します。

 日本復活の日を確信して(沢部肇氏の経営者ブログ):日本経済新聞 (2011.3.18)

 今回の災害を乗り越えた先には、新しい社会が待っているような気がする:永井孝尚のMM21:ITmedia オルタナティブ・ブログ(2011.3.18)

 [FT]日本の奇跡は終わっていない:日本経済新聞(2011.3.18)

 危機的状況の中の希望 - Time Out Tokyo (2011.3.18)

 東浩紀氏、東北関東大震災についてNew York Times紙に寄稿:木蓮の陰から(2011.3.18)

 世界は日本の復活を信じている:日経ビジネスオンライン (2011.3.19)

 日本再創造は必ず成る - 風観羽 情報空間を羽のように舞い本質を観る (2011.3.20)

 これからの日本の姿:コデラノブログ4(2011.3.21)

 がんばろう日本 大震災で見えてきたこの国の課題:日本経済新聞 (2011.3.21)

変更履歴:文中に脱字がありました。お詫びして訂正いたします。[2011/03/24 18:20]

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