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» 2011年06月27日 08時06分 UPDATE

Weekly Memo:スパコン性能「世界一」の意義

理化学研究所と富士通が共同で開発中のスーパーコンピュータ「京」が、性能ランキングで世界一になった。先週行われた共同会見で両首脳が語った「世界一」の意義とは——。

[松岡功,ITmedia]

次世代スパコン「京」がTOP500リストで1位に

 「京が世界一になれたのは、国を挙げて総がかりで努力してきた結果だ。日本の産業技術がいまだ健在であることを証明できてたいへん嬉しく思う。幅広く利活用してもらえるように尽力したい」

 「最先端技術に挑み続けてきた成果だと自負している。世界一の京のパワーを日本復興のパワーにしていきたい」

 独立行政法人理化学研究所(理研)の野依良治理事長と富士通の間塚道義会長は6月20日に開いた共同会見で、相次いでこう語った。

 理研と富士通は会見で、共同で開発を進めている次世代スーパーコンピュータ「京(けい)」が、同日公開された世界のスパコン性能ランキングで1位になったと発表した。日本のスパコンが1位になったのは、海洋研究開発機構が運用しNECが開発した「地球シミュレータ」以来、7年ぶりとなる。

 スパコンの性能ランキング「TOP500リスト」は、米国の大学などが毎年6月と11月に発表し、今回が37回目。「京」は今回のLINPACKベンチマークで8.162ペタFLOPS(毎秒8162兆回の浮動小数点演算数)を記録。前回1位で今回は2位だった中国「天河1A号」(2.566ペタFLOPS)と3倍以上の性能差をつけての1位となった。

 ちなみにLINPACKとは、行列計算による連立一次方程式の解法プログラムで、TOP500リストを作成するために用いるベンチマークのことである。

 「京」は、文部科学省が推進する「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築」計画のもと、2012年11月の共用開始を目指して開発されているスパコンである。

 富士通が独自開発したCPU「SPARC 64 VIIIfx」を搭載する800台以上の筐体や、8万個以上のCPU間を相互に接続するための「6次元メッシュ/トーラス結合」という最先端技術を駆使したネットワーク機構(インターコネクト)などから構成されている。

 今回のTOP500リストでは、整備途中段階の672筐体(CPU数6万8544個、ピーク性能8.774ペタFLOPS)の構成でLINPACKベンチマークを走らせて8.162ペタFLOPSを達成し、1位を獲得した。

 また、実行効率においても、世界トップクラスの大規模スパコンとしては非常に高水準の93.0%を達成している。これは数万個におよぶCPUとそれらを相互に接続するインターコネクト、そしてそうしたハードウェアの性能を極限まで引き出すソフトウェアのすべての技術が結び付いて実現できたものだとしている。

共同会見に臨む理化学研究所の野依良治理事長(左)と富士通の間塚道義会長

世界一の「京」が優れた人材の吸引力に

 「京」は、2012年6月の完成時にはLINPACK性能で10ペタFLOPSを目指しており、さまざまな計算科学の分野において広く利用されることで、世界最高水準の成果創出に貢献することが期待されている。

 とくにシミュレーション精度や解析計算速度が飛躍的に向上することから、例えば、高効率な太陽光発電に資する新材料開発の加速、防災計画に資する精密な気象予測や地震・津波影響予測など、産業応用から国土・国民の安全に関わる幅広い分野において大きな貢献が期待される。

 スパコン性能「世界一」の意義を問えば、こうした幅広い分野での利活用がまず挙げられるだろう。さらに両首脳からは、こんな異口同音の発言があった。

 「研究者は世界一の研究基盤に集まってくる。したがって世界一の京は、国際的に優れた人材の吸引力になる」(野依理事長)

 「世界一に挑戦する中でさまざまなイノベーションを生み出すことができた。若手のエンジニアたちが目を輝かせてがんばってくれた。そうした姿を見ると、世界一に挑戦するというのは非常に重要なことだと感じた」(間塚会長)

 「若手だけでなく、これまで長い間がんばってきたエンジニアたちも、今回の挑戦があって再度がんばってみようということで、いろんな経験を積んだ人たちが集まって今回の成果に結びついた。世界一を目指すという高い志のあるプロジェクトは、人、そして技術を育てると痛感した。さらにそうした情熱が、ひいては日本に元気を取り戻すきっかけになるのではないかと感じている」(富士通の井上愛一郎 常務理事 次世代テクニカルコンピューティング開発本部 本部長)

 ここでは発言内容のエッセンスしか紹介できないが、各氏の「人材」に関するコメントへの熱の入りようは胸に迫るものがあった。スパコン性能「世界一」の意義は、今後の利活用とともに、まさに人づくりにある。

 とはいえ、やはりこれだけは言っておかねばなるまい。「京」の政府予算は総額1120億円の見通しだ。この予算をめぐっては、2009年の事業仕分けの際に押し問答があった。これについてはすでに数多くの報道がなされているのでここでは触れないが、巨額の費用投入に国民の納得が得られるかどうかは、これからの効果次第だ。

 その意味では、今回の「世界一」を契機に、ぜひとも国民への説明責任というより、プレゼンテーションを積極的に行ってもらいたい。スパコンでできることは、もっと夢を語れるはずだと考える。

 「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく」(劇作家・井上ひさし)

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