ニュース
» 2011年09月27日 08時00分 UPDATE

まるごと! 中堅・中小企業とIT経営:【第4回】IT導入でやるべきこと (1/3)

中堅・中小企業がITを導入する上で「やるべきこと」とは何か。今回はこのテーマについて事例を交えて解説する。

[春日丈実,三菱UFJリサーチ&コンサルティング]

 前回は、中堅・中小企業がIT導入をするときに、「やってはいけないこと」について整理した。今回は、IT導入で「やるべきこと」について、事例を交えて整理する。

IT導入を成功させるには

 どの企業もITサービス導入は、成功することを前提に決断するはずである。しかし実態は前回説明した通り、7割の企業においては、品質(機能面)、コスト、納期において何らかの問題(失敗)があるということである。これだけITが企業などで利用されているにもかかわらず、である。

 こうした実態を受けてか、経済産業省は「中小企業IT経営力大賞」というものを毎年発表している。これは、『すぐれたIT経営を実現し、他の中小企業がIT経営に取り組む際に参考となるような中小企業等を経済産業大臣等が表彰するもの』で、中小企業がITサービス導入をする成功率を高めていきたいという思いが感じられる。

 2011年の大賞は、スポーツサイクルに特化した事業を展開するワイ・インターナショナルと、卸売事業・物流事業・食品小売事業を総合的に展開しているグルメンが受賞した。筆者から見ると、ともに経営者の“思い”が強くあり、それを実現させる手段としてITサービスを利用したと考えられる。事業戦略を実現するのにITを活用したのであって、IT導入が先ではないことがポイントだろう。企業によっては、「IT導入をすれば経営力がアップ、売上拡大、新規開拓が実現!」というシステム会社の言葉を信じてIT導入をする企業もまだまだ多い。

 また、経済産業省は、「情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集(2010年3月)」というものも公開している。トラブル(失敗)事例を紹介することで、中小企業のITサービス導入の成功率を高めようとしている。この報告書に「トラブル原因」がまとめられているが、これらはITサービス導入を成功させるための要因となり得るので、ここに紹介する(図表1-1)

図表1-1 情報システム・ソフトウェア取引のトラブル要因(出典:経済産業省、「情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集」2010年3月) 図表1-1 情報システム・ソフトウェア取引のトラブル要因(出典:経済産業省、「情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集」2010年3月)

 まずは、「(1)正式契約書を締結していないのに作業を開始してしまう」である。こういった事例は多い。正式契約書の締結まで待っていては、顧客の求める納期に間に合わないことから、システム会社と顧客企業で契約が締結していなくても、プロジェクトをスタートさせてしまっているというのが理由であろう。

 「(2)作業にあった契約形態になっていない」については、ITサービス導入においての契約を一括契約としてしまう場合である。顧客企業側からすると、一括契約をして予算を確定したいという思いがある。一方システム会社からすると要件定義をする段階とプログラム開発をする段階では契約書を分けるのが一般的である。

 要件定義が未確定の状態でシステムの品質や納期、費用が確定できるわけがない。「(3)契約に不備がある」については、図表1-1にあるようにさらに細かい分類になっている。

IT導入で成功した事例

 次にIT導入で成功した企業の事例を見てみよう(図表2-1)。成功の要因は違うが、ほかのプロジェクトにも応用できるので、参考にしてほしい。

図表2-1 IT導入の成功事例 図表2-1 IT導入の成功事例

事例1:雑貨卸業(売上高15億円、従業員20人)

 この企業では、あるシステム会社のパッケージシステムを導入していた。大きな問題はなかったものの、業種特性として需要予測が重要であり、経営者としてはそれをシステムで実現したいと考えていた。そこで複数の会社に提案を依頼し、選定してシステム導入を実施した。システム開発予算は3000万円。

 社内で組成したプロジェクトチームにより、RFP(提案依頼書)を作成して既存システム会社を含めて4社から提案をもらうことにした。それぞれの提案を聞いた結果、パッケージソフトをベースとしつつ、需要予測に関するシステムは、標準機能でカバーできないので、一部カスタマイズするという提案があったA社に決定した。

 要件定義は約2カ月間、開発期間は約4カ月間。比較的短期間でプロジェクトを進めることになった。需要予測については調整(チューニング)が必要だろうということで、この部分に関する稼働は2カ月前倒しして実施する計画を立てた。

 少し無理のあるスケジュールであり、稼働当初は現場で苦労することが多かったが、半ば力仕事でやり遂げた。特に初めての棚卸しは数字の確認をするために新旧両方のシステムで数を確認しながら作業を行った。

 経営者の一番の目的である「需要予測システム」については、計算ロジックや検証ロジックを事前にヒアリングして画面イメージを最初から提示する「プロトタイピング手法」(開発手法のひとつで、システム開発においてユーザーの要望を初期の段階で原型(プロトタイプ)を準備して開発していくこと)を採用することで実際に利用するユーザーに開発の最初から参加してもらい、そのつど修正を加えていった。

 結果、短納期(6カ月間)ではあったものの、ほぼ予定通りに稼働でき、費用については、ほぼ予定通り(当初の仕様になかった部分をシステム会社、顧客企業合意の上で追加開発した部分はあった)で進めることができた。品質については、データ移行は何とかなったが、最初の棚卸しは数値合わせに苦労した。しかし2回目の棚卸しからはスピードアップできて、現在は安定して運用している。

成功要因

 まずは、経営者のプロジェクトへの参加が大きな要因である。経営者がプロジェクトに参加することでシステム開発において何か問題が発生しても、その場で、即断即決で方向性を出すことができた。

 また、経営者が判断しているので、方向性にブレがなかったことも大きい。経営者との間に何人も介在することで、プロジェクトで決めた内容が後で変わったりすることがよくある。

 パッケージシステムの標準機能でカバーできなかった「需要予測システム」に関しては、開発を担当したシステム会社が他社での開発事例を複数持っており、それをベースに最初から画面イメージや帳票イメージを提示してもらうことで、実際に利用する担当者とプロジェクト初期段階から共有することができた。

       1|2|3 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ピックアップコンテンツ

- PR -

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -