海外進出する中堅企業が抱える3つの課題 その解決は?――IBMに聞く

中堅企業が海外進出するに当たっては、例えばワークフローを現地の慣習に対応させたり、ネットワークの品質を確保したりする必要がある。とはいえすべて自社で対応するのも難しい。そのような場合に検討すべき選択肢を日本IBMに聞いた。

» 2011年12月02日 08時00分 公開
[ITmedia]

 「中堅企業のグローバル化は、まず海外進出から始まります。とはいえ文化やビジネス慣習の違い、そして電力やネットワークといった社会インフラの質の低さに悩む企業も多いようです」と日本IBM理事の伊藤昇広域事業部長は指摘する。

日本IBM理事 広域&パートナー事業 広域事業部長 伊藤昇氏

 既にグローバル化を果たしている大企業が新しい地域に進出する場合は、ある程度以上の規模の情報システム部門を既に有しているし、ノウハウも資金もある。またそのような大企業では、経営の意思決定に携わるCIO職が設けられており、海外への進出が決まる過程を情報システム部門も把握できるため、準備をして臨めるだろう。だが必ずしも、恵まれた状況にある中堅企業ばかりではない。そのような場合、中堅企業の情報システム部門はITベンダーやシステムインテグレーターなど外部パートナーを頼ることになる。

 伊藤氏は興味深いレポートを紹介する。ノークリサーチの調査「2011年版中堅・中小企業の海外展開におけるIT活用の現状と展開レポート」によると、海外進出を図る中堅企業がパートナーを選択する際に重視するポイントは1位が「ビジネス展開先国内にサポート拠点を持っている」であり、2位が「ビジネス展開先国の法制度や商習慣に精通している」となっている。なお3位に挙げられているのは「ビジネス展開先国企業を顧客とした実績が豊富である」であり、中堅企業がパートナーに期待するのは(国内だけでなく)現地でのサポート力、ノウハウ、実績だと言えよう。

 この3点は、中堅企業が抱く不安の裏返しであり、課題だとも言える。自社の海外展開に当たりIT基盤の整備を求められた情報システム部門にとって、普段取引のあるパートナーに相談した際に「ウチでは難しい……」と言われてしまうことは避けたい。とはいえ、自社のビジネス規模を考えると普段から大手パートナー付き合うのは現実的ではないという中堅企業も多いのではないか。

 伊藤氏は「日本IBMは実績のある販社と共同で“Team Global”を結成しています。具体的にはウェブのフォームから直接問い合わせられる、中堅企業向けの“コンシェルジュ”窓口を設けました」と紹介する。

 問い合わせはまずIBMが受ける形になるが、ニーズに応じてソリューションパートナーとの間で調整を行い、適切な提案を行うという。「すべてのパートナーが自ら海外展開しています。実績は豊富です」(伊藤氏)

 またIBMの「広域事業」は、伊藤氏が所管する日本だけでなくグローバルに設置されている。伊藤氏自身、北米、ヨーロッパ北東、ヨーロッパ南西、そして新興市場の各マネージャーとひんぱんに横断的なコミュニケーションを取っているという。「国を問わず、中堅企業が抱える課題には共通性がありますから、参考になります。またユーザーが進出する地域のIBMスタッフに対し、話を通しておくこともできます。こういった対応ができることは、グローバルカンパニーであるIBMの特徴だと考えています」(伊藤氏)

 伊藤氏は「計画的に海外進出するというよりも、外部要因により否応なく進出せざるを得なくなるというケースが多く見られます」と話す。

 実際にIBMとそのパートナーが手掛けた事例を挙げると、名古屋市に本拠を置くあるメーカーでは、既に中国に進出している大手の取引先から「日本のサプライヤーの製品を中国でも調達したい」という理由で中国への進出を求められたという。回線の品質管理だけでなく、中国の法規制にも対応しつつ現地展開する必要があったが、ソリューションとしてはクラウドをベースとし、現地スタッフの教育までもパートナー企業が対応。ヘルプデスクも日本語と中国語の両方で対応できる体制を構築できたという。

 また浜松市の産業機械メーカーの場合は、既に日本市場が飽和したため、ビジネスの成長を図るために米国およびタイへの進出を決定した。生産は現地工場で行うが、設計自体は引き続き日本で行う予定であった。

 だが、現地のネットワーク品質が安定せず、また転送しなければならない設計データが大きなものであるため、送信エラーが多発したという。そこでネットワークの構築と運用、そしてデータ圧縮ツールの導入などを“Team Global”のサポートのもとで実施し、2012年2月には本番稼働する見込みだ。

 5年でおよそ30%もの円高が進行したり、EU圏が経済的な不安定さを増したりする中、中堅企業が海外進出するに当たり、自社で市場調査し、IT基盤を構築し、運用していくのは現実的ではない。「“Team Global”のような実績のあるベンダー、パートナーと協力し、実現するのが近道ではないでしょうか」(伊藤氏)

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