「ビッグデータの利活用は段階的に」 日本オラクル

ビッグデータに対する戦略や取り組みを日本オラクルが説明した。

» 2012年03月22日 17時53分 公開
[伏見学,ITmedia]

 日本オラクルは3月22日、ビッグデータに関する戦略説明会を開催した。企業がビッグデータを活用する上での勘所や、そうした取り組みを支える製品などを紹介した。ビッグデータの専門組織を立ち上げることも明らかにした。

日本オラクル 専務執行役員 製品事業統括 兼 テクノロジー事業統括本部長の三澤智光氏 日本オラクル 専務執行役員 製品事業統括 兼 テクノロジー事業統括本部長の三澤智光氏

 昨年来、IT業界を中心に注目を集めるビッグデータは、バズワードの領域を超えて、ビジネス市場における認知を着実に高めているかのようにみえる。しかし一方、多くのITベンダやシステムインテグレーターが矢継ぎ早にビッグデータソリューションを提唱することで、ユーザー企業に戸惑いを与えているのも否めない。

 「ビッグデータを活用せよと言われても、多くの企業はどこから何に手をつければ良いか分からない。そうした状況を変えていきたい」と、日本オラクル 専務執行役員 製品事業統括 兼 テクノロジー事業統括本部長の三澤智光氏は話す。

まずは社内に眠る構造化データから

 三澤氏によると、企業がビッグデータを効果的に利活用するためには、3つのステップで取り組んでいくことが望ましいという。第一段階は「構造化データの利活用」である。ビッグデータというと、ソーシャルメディアの書き込みや写真、動画といった非構造化データの扱いばかりに目がいきがちだが、既存の業務系および情報系データベースに蓄積された構造化データを、コスト削減と売り上げアップに貢献する仕組みとして確立することが先決だとしている。「現在、企業が持っているデータを利活用するだけでも十分な成果が出るのだ」と三澤氏は力を込める。

 次のステップとして、「構造化データと非構造化データを融合した利活用」を検討。最後に「ビジネスインテリジェンスやビジネスインサイトとしての利活用」に移ることで、データマイニングや統計解析などの高度なデータ分析によって、それぞれの企業や事業にとって価値ある洞察を掘り出せるようになるという。日本ではこの段階に進んでいる企業は少ないが、最終的にはビッグデータの活用をここまで広げていくべきだと三澤氏は考える。

 そのような企業のビッグデータ活用を支援する製品として、オラクルはキーバリュー型データベース「NoSQL Database」、大規模分散並列処理フレームワーク「Hadoop」のオープンソースディストリビューション、オープンソース統計解析言語「R」などで構成されるビッグデータ専用マシン「Oracle Big Data Appliance」や、データベースマシン「Oracle Exadata」、インメモリ型データ分析マシン「Oracle Exalytics」など、あらゆるデータを網羅的に活用するための統合情報基盤を提供する。

“あなたのため”だけの特売チラシ

 今回、具体的なビッグデータ活用事例として紹介されたのが、全国で約1800店舗の食品ボランタリーチェーンを運営する全日本食品による取り組みだ。同社は割引クーポンやチラシ情報の分析の効率化、POSデータの集計および分析の高速化を目的に情報系システムを再構築し、Exadataと統合型ストレージ製品「Sun ZFS Storage Appliance」を採用した。

 これにより情報系帳票の検索速度が最大27倍に向上したほか、これまで3時間かかっていた数億件のマスタ更新処理が1時間に短縮した。さらにExadataからの1次バックアップ先となるストレージをZFS Storage Applianceにしたことなどで、RMAN(Oracle Databaseでバックアップおよびリカバリタスクを実行し、バックアップ計画の管理を自動化するユーティリティ)での2テラバイトのフルバックアップを約30分で完了できるようになった。

 このシステム基盤を活用して、同社は顧客別の特売チラシを提供する仕組みを構築。顧客の購買履歴から購入頻度の高い20商品を抽出し、そのデータを基に顧客ごとのチラシを作成する。チラシは店舗で月初に顧客の会員カードを読み取り、その場で作成される。POSでは、チラシの提示がなくても期間中であれば対象商品をいつでも安く買える。これによって購買履歴商品のヒット率は通常のチラシの50〜60倍になり、売り上げは10%以上も上昇したという。この仕組みは3月末時点で約400店舗に導入されており、今後1000店舗に広げる予定である。

 そのほか、日本オラクルでは、製品の提供だけではなく、ビッグデータビジネスを推進するための新たな組織も発表した。約20人体制のビッグデータ専任部隊を設立するほか、本社内にソリューションの開発およびデモ環境を整備する。それに合わせて、パートナー企業や先進的なユーザー企業(ともに5社程度)との取り組みを開始していく。

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