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» 2012年04月20日 08時00分 UPDATE

技術の限界を超えて:スポーツ分野への適用も――ビッグデータの新たな価値を見出す

新たな価値創造に欠かせないソリューションとして期待が高まるビッグデータ。JSOLは既存の事業領域における新たな価値提供と、これまでにないビジネスモデルの創出という2つのアプローチから取り組みを始めている。

[白井和夫,ITmedia]

(このコンテンツは日立「Open Middleware Report vol.58」をもとに構成しています)

「当たり前のように行われていた」ビッグデータの活用・分析

 製造業、流通・サービス業、金融・公共分野といった顧客層に、ITコンサルティングからシステム構築・運用までの一貫したサービスを提供しているJSOL(以下、JSOL)。同社は1969年、住友銀行(現・三井住友フィナンシャルグループ)の情報システム部門が分離独立した日本情報サービスに始まり、シンクタンクの日本総合研究所、そこから分社した日本総研ソリューションズ、さらに2009年1月のNTTデータとの業務・資本提携を契機にJSOLへ社名変更するまでの長い歴史と実績を持つ。

photo01.jpg JSOL アウトソーシングサービス本部 基盤サービス部長 システムアナリスト/ITコーディネータ 坂井 司氏

 この間JSOLは、さまざまな顧客企業のビジネスモデルのあり方や業務改革にまで踏み込んだコンサルティングとITソリューションの提供を大きな強みとしてきた。そこでは以前から、現在「ビッグデータ」と呼ばれる大量データの収集と分析・活用が「当たり前のように行われていた」と、アウトソーシングサービス本部 基盤サービス部長の坂井 司氏は言う。

 「当社は日本総研時代から、三井住友フィナンシャルグループの直下で銀行・証券・カード会社などの膨大な顧客情報やログを相手に各種分析を行ってきました。製造業のモノづくりを支援するCAE(設計・開発支援システム)分野でも、衝突解析や構造力学などのシミュレーションツールの開発や受託解析などを行っており、いわゆる“ビッグデータ”を扱うビジネスを長年にわたって展開してきた実績があります」(坂井氏)

 JSOLではCAE分野だけでなく、流通・サービス業においてもマーケティングや在庫最適化などの領域で全国の店舗から集められた膨大な情報を、顧客企業の経営に生かす方策を提案してきたという。

 「その意味でビッグデータを扱うこと自体、われわれにとっては驚くほどの環境変化ではありません。ですが、これまで以上に大量のデータを高速処理できるITプラットフォームが整ってきたことで、お客さまの間に、今までならあきらめていたリアルタイムの分析を、より低コストに行えるようになるのではないかという期待感が高まっているのは事実です」

ITの限界にとらわれない新しいサービス

 データ量の巨大化とその戦略的な活用は、ここ数年で急に登場してきた話ではない。ITを積極的に活用している企業や組織では長年にわたって検討されてきた課題であり、データウェアハウス(DWH)やビジネスインテリジェンス(BI)のシステムで、新たな価値創出に挑戦してきた企業も少なくない。従来との違いは、これまではデータベースに格納されている大部分が文字列や数値などの「構造化データ」であったのに対し、現在はSNSやメール、画像、各種センサーのデータといったリアルタイム性の高い「非構造化データ」を分析対象とする点だ。その背景には、膨大なデータの収集・蓄積と処理・分析を比較的低コストかつ容易に行える環境として、クラウドコンピューティングが普及してきたことがあるといえる。

photo02.jpg JSOL ITコンサルティング統括部長 技術士(情報工学) 土居 智氏

 ならば、これまで不可能と思われていたペタバイト級のビッグデータに対応できる環境を、どのようなスタンスで活用していけばいいのだろうか。

 「コンサルタントの立場から言えば、“ビッグデータ”というキーワードに浮き足立ってすぐに飛びつくのではなく、まず“ビッグデータを使って何をしたいのか”を改めて検討・確認する作業から始めていただきたいと進言したいですね。現在、ビッグデータの活用領域は拡大しています。ですが、本来やりたいことを見据えないままにツールや環境だけを導入すると、IT業界で過去に何度も繰り返されたように、明確な投資対効果を生み出せないおそれがあります」(坂井氏)

 ビッグデータを活用するならば、まずその目的をしっかりと見据えることが必要だと坂井氏は強調する。ゴールが明確でなければ、データに対する有効な視点も見出せず、企業の意思決定を逆に混乱させてしまう場合もある。ただし「何がしたいのか」が明らかになれば、ビッグデータは「これまでの“ITの限界”を払拭できる大きな可能性を秘めている」とITコンサルティング統括部長の土居 智氏は言う。

 「お客さまと新しいソリューションの導入を検討する際に、技術的な制約から自ら要件を狭めていくケースが少なくありませんでした。ビッグデータは、今までのITの限界を取り払い、これまで技術的にもコスト的にもあきらめていたこと実現できる可能性を持っています」(土居氏)

ベンダーと連携し、実証実験の段階から新技術を試用

 こうした観点からJSOLは、ビッグデータを適用したさまざまな提案活動をすでに開始している。そこでは日立のビッグデータ技術が利用されているという。

photo03.jpg JSOL ITコンサルティング統括部 ストラテジスト 久保勝稔氏

 「基盤技術に対する信頼感、中長期的な保守への安心感という意味で、日立の技術やソリューションは、これまでも自信を持ってお客さまにお勧めできるものでした。ビッグデータに関しても、日立の並列分散処理基盤やストリームデータ処理基盤は今までにない高速性や低コスト性を実現できる製品として高い説得力を持ち得ます」と、坂井氏は日立をパートナーに選んだ理由を説明する。

 ITコンサルティング統括部ストラテジストの久保勝稔氏も、「新技術の展開においては、製品開発の早い段階からベンダー側と足並みを揃えてお客さまに提案し、ニーズの確認と喚起を進めていく必要があります。日立が東京大学と共同研究開発している超高速データベースエンジンのような製品化前の技術についても、実証実験の段階から試用することで、鮮度の高い提案につなげています」と付け加える。

データを捨てることなく新たな価値を生み出す

 現在、JSOLのビッグデータ提案軸は、大きく2つに分けられているという。1つ目は大量分析による精度向上やリアルタイムサービスの実現をベースとした「既存ビジネス領域での新たな価値提供」、2つ目は従来ならビジネスモデルそのものが描けなかった「新分野への適用」だ。

01_zu01.jpg ビッグデータで語られる領域

 既存領域での代表例となるのが、コンビニエンスストアや量販店などの流通小売業に向けた大量データの高速処理によるマーケティング分析である。これまでも数々の先進的な企業が、POSデータの活用やDWHによって大規模なデータ分析の仕組みを作ってきた。だが、そのデータをうまく活用して収益拡大や競争力強化につなげることができた企業と、そうでない企業がある。そうした場合もビッグデータ活用は双方にメリットとなる提案ができると、ITコンサルティング統括部コンサルタントの長堀 亨氏は言う。

 「POSデータやDWHの分析結果を利益率や集客率の拡大に生かしている企業には、さらに大量のデータを使うことで分析精度の向上とコスト低減が図れるというご提案をしています。既存のDWHにも処理性能の高い製品がありますが、多額の費用がかかるため、採用できる企業は限られています」

 上記のようなケースではHadoopや日立独自の並列分散処理、ストリームデータ処理などを適用するという。これにより幅広いプラットフォーム上で費用対効果の高いソリューションを望めると長堀氏は語る。

 また、これまで効果が出なかった企業にとっては、機材やコストの制約により、止むなく捨てざるを得なかった大量のデータの活用が期待できる。

 「もうデータを捨てる必要はありません。そのまますべてとっておけば価値を生み出すチャンスに繋がります、という提言からスタートできるのです」(長堀氏)

 既存ビジネス領域へのビッグデータ適用例として、久保氏は情報漏洩などの不正行為をリアルタイムに監視するなど、コンプライアンス強化も実用性が高いと指摘する。DBやファイルへのアクセスログ、入退室ログ、監視カメラの映像ログなどを日常的に集めている企業は少なくないが、従来はインシデントの原因や被害状況などの究明には多大な手間とコストがかかっていた。

 「ビッグデータの分析技術を使えば、業務で発生するさまざまなイベントログを解析して、正常な状態とそうでない状態のパターンを容易に抽出できます。ほぼリアルタイムに不正行為の予兆を発見し、迅速な対応が行えるようになるでしょう」(久保氏)

スポーツ工学分野へのビッグデータ応用

 では、これまでならビジネスモデルが描けなかった新しい分野では、どのようなビッグデータの活用例があるのだろうか。

photo04.jpg JSOL ITコンサルティング統括部 コンサルタント(中小企業診断士)長堀 亨氏

 「例えば人間工学系や自然科学系への適用が考えられます。予測できない突発的で不連続な事象などの非線形や複雑系の科学。その数値化によるシミュレーションにビッグデータ技術が使えないだろうか――そんな発想から、いま日立と取り組んでいる一例として、スポーツ工学分野があります」(坂井氏)

 現在日立とともに企画調整中の実験では、フィールド内を縦横無尽に駆け回る選手たちの動きや体温・心拍数、走行距離などを、日立の超小型ICチップやICタグなどの高度なセンシング技術によって収集し、大量データ処理技術によって細かくメッシュを切りながら時間軸で解析していく。そこに各種プレーの成功率や、トレーニング時ならばケガの発生率とその状況などを掛け合わせることで総合的に選手をフォローできるという。

 「戦術のベストプラクティスはもちろん、選手生命を縮めるケガの予兆検知や安全で効果的なトレーニング法など、今まで見えなかった仮説を立てることができます」と坂井氏は言う。その仮説を現場で検証していくことで、チーム力の強化や効果的なトレーニング法、選手の健康維持に生かしていくのが当面の大きな目標だ。このソリューションが実効力を発揮すればグローバル市場でも通用するはずだ。

 「われわれも正解を持っているわけではありませんが、日立との協業で今まで不可能と思われていた領域への挑戦が現実的になってくると考えています」(久保氏)

目的を明確化しビッグデータを生かす

 「ビッグデータ活用の裾野を広げていくには、企業の規模に合わせたニーズに沿った商材の品揃えも重要なポイントになってきます。すでに日立では、こうした要件を満たす製品がラインアップされていますので、今後も安心して使える基盤製品やサービスを提供し続けていただければ嬉しいですね」(長堀氏)

 ビッグデータ活用は、かつてない多様なデータの組み合わせから新たな価値を見出し、現場にいち早く適用しながら継続的に効果を生み出していくことにこそ本質がある。だが、業務目的に応じたデータの組み合わせ方や、的確な解析方法の選択、最新技術へのキャッチアップなどは、常にマンパワー不足に悩む日本の企業や自治体のIT部門だけでは手が回らない。このため、ビッグデータ技術を提供する各ベンダーの動向を見極めながら、それぞれの顧客に最適な製品の選択と活用法、新たなビジネス/サービスモデルの創出を支援していくのは、ITコンサルティングを基軸に早くから大量データ活用の実績を積み上げてきたJSOLの役割となる。

 「目的をしっかり定めれば、今までできなかったことができるようになる。そして今まであきらめていたことに、もう一度挑戦することができる――それが今、ビッグデータ活用を検討されているお客さまに対するわれわれからのメッセージです」(坂井氏)

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