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» 2012年05月23日 11時30分 UPDATE

テレワークの日 総括(後):テレワークが労働者のマインドを変える (1/3)

テレワークが普及すると、労働者の評価は従来の「時間×生産性」から「成果」へと変化する。時間や場所を自分の裁量でコントロールできる変わりに、成果を最大化するために労働をマネジメントする能力とマインドが労働者には必要になる。

[米野宏明,ITmedia]

 日本マイクロソフトは去る3月19日に、全社員が原則オフィス以外の場所で通常通りの勤務を行う「テレワークの日」を実施しました。前回の「オンライン会議は無駄を省く」では、事後に行ったサーベイに寄せられた特徴的意見を紹介しました。今回はこれらの意見を基に、テレワーク成功の要件について考察します。

No. 日本マイクロソフトのテレワーク事例 バックナンバー
1 実録 日本マイクロソフトが無人になった日:そして誰もいなくなった
2 日本マイクロソフト品川オフィス探訪(前):フリーアドレス制が変えたワークスタイル
3 日本マイクロソフト品川オフィス探訪(後):Lyncが実現する“どこでもドア”
4 テレワークの日 総括(前):オンライン会議は無駄を省く
5 テレワークの日 総括(後):テレワークが労働者のマインドを変える

 本記事は話を単純化するために、対象をいわゆる「ホワイトカラー」に絞り込んでいます。工場での製造や対面サービスなどの物理的な対象物を相手にする業務においてもテレワークを適用できるシーンはあるはずですが、ここでの議論の前提からは除きます。

目的:選択肢を提供する

 テレワークという言葉は長らく、子育て中の女性や障害を持つ方の在宅勤務と同義に考えられる傾向にあり、働く場所はオフィスか自宅かという二元論になりがちでした。「会社に来れないから自宅で働く」という考え方です。もちろん、それでもオフィスのみの一択よりは良いのですが、オフィス以外の選択肢が自宅のみでは、場所の固定による弊害を回避しきれません。

 テレワークの日のサーベイ結果でも、自宅では集中できないという人や、客先に出向きっぱなしの人がいました。となると、テレワークにはオフィスと自宅以外でも生産性を発揮できる、という選択肢が必要になります。

telew005a.jpg 日本マイクロソフトのテレワーク思想 「いつ」「どこで」働いても構わないことが重要。そのとき最も生産性とコストの投資バランスの取れる場所に移動する、これが真のモバイルワーカーだ

 テレワーク最大の価値は「ワークスタイルの柔軟性」を通じたコスト削減と生産性向上にあります。そのためには作業環境やコミュニケーションスタイル、時間や評価のマネジメントなどの千差万別で日々変化する個々人の事情に対して、あらゆる環境で勤務を許容できるような、柔軟なインフラを提供することが必要です。この考え方は「在宅勤務制度」とは本質的に異なるものです。このようなワークスタイルから比較的遠いところにいる、経営や人事などのオペレーション側では特に、意識的に頭を切り替える必要があります。

評価:インプット主義からアウトプット主義へ

 ワークスタイルが柔軟になると目の前から部下がいなくなりますので、管理者は評価視点の変更が必要になります。

 多くの日本企業では、労務は「時間」と「場所」に縛られ、仕事の評価もそれに準じたものになりがちです。しかし、裁量の余地の高いテレワークを有効に機能させるためには、評価の基準を「成果」ベースに移行しなければなりません。これは、単なる人事考課制度としての成果主義ということだけではなく、働き方に対する考え方の変化そのものを意味します。

 日本では長らく「労働投入」に対して評価が行われてきました。仕事の成果は、投入労働時間×投入労働生産性によってもたらされます。しかし縦方向の統制が強い組織構造の日本企業では生産性に差が付きにくく、成果を定量的に証明できるのは時間ぐらいしかありません。つまり労働者にはほとんど裁量などないのです。

 しかしアウトプットである成果に着目すれば、時間は労働者の裁量となります。求められる成果に対して自分の能力=生産性が高くなれば、労働時間を短くできるのです。

 より高い給与が欲しければ、より多くの時間を割くか、より生産性を発揮すればよいのですし、生産性を高めるためにより高度な教育を受けたり、仕事を変えるという選択肢もあります。労働者はこれらの選択肢を自由につかむ権利があり、使用者は労働者を引き付ける高い生産性を発揮できる環境を提供する必要があります。これは米国企業を中心とした多くの外国企業のスタンダードなスタイルです。機能別組織構造が崩れつつある多くの日本企業でも、今後このように変わっていく可能性が高いでしょう。

 そうなると評価される側の仕事のスタイルにも変化が必要になります。インプットを完全に自分のコントロール下に置く権利を得る代わりに、アウトプットを約束しなければなりません。時間と生産性という資産を使って自らのアウトプットを最大化すべくポートフォリオを組む「投資マインド」が労働者に必要になってくるのです。

 オフィスでのFace-to-Faceで実現すべきもの、長時間集中可能な場所で行うべきものを適切に分類し、そこに仕事のサイクルを掛け合わせ、どのような順番でどれぐらい時間をかけてタスクを処理していくのかを常に考え、俊敏に行動する必要があります。

 例えば重要度が低い要件をメールで受け取ったとき、そのまま処理すれば2分で済むのに、後回しにすると読み直しを含めて5分掛かるのなら、すぐに処理した方がよいかもしれません。自分の作業と他の人の作業が並列でできるなら、他の人に先にやってもらった方がトータルで効率的かもしれません。決められた時間に決められた場所に集まって、決められた順番で直線的にタスクを処理するのとは、大きくワーキングスタイルが異なってきます。

telew005b.jpg 自らの時間と生産性を資産とした投資ポートフォリオを組み、優先順位をつけることが重要だ

 このような働き方は刻々と変化する状況に対応するのに適したものであり、今後の世界を生き抜くうえで必要なものになるはずです。むしろテレワークの実践により、そのような俊敏性を身に着けることができるようになるかもしれません。

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