日本マイクロソフトが従来のパーテーションで囲まれた個室風のデスクからフリーアドレス制にオフィス環境を変更したところ、従業員の時間と場所の使い方に大きな変化が現れたという。
No. | 日本マイクロソフトのテレワーク事例 バックナンバー |
---|---|
1 | 実録 日本マイクロソフトが無人になった日:そして誰もいなくなった |
2 | 日本マイクロソフト品川オフィス探訪(前):フリーアドレス制が変えたワークスタイル |
3 | 日本マイクロソフト品川オフィス探訪(後):Lyncが実現する“どこでもドア” |
4 | テレワークの日 総括(前):オンライン会議は無駄を省く |
5 | テレワークの日 総括(後):テレワークが労働者のマインドを変える |
社団法人日本テレワーク協会は、テレワークを「情報通信技術(ICT)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」とし、1 在宅勤務、2 モバイルワーク、3 サテライトオフィス勤務の3形態に分類しています。1と3はメインの勤務地以外の場所に勤務地と同様の環境を再現するという考え方なのに対し、2は移動中も含めた場所を問わない業務環境の提供を想定しています。日本マイクロソフトが目指すテレワークは、2の「モバイルワークのさらなる進化形」です。
一般にモバイルワークと言われるものは、コミュニケーションや生産性が制限されることを前提にしています。しかし我慢が強いられる環境は、働く側に不都合が多くなり、決して長続きしません。会社に行かなければ十分なコミュニケーションを取ったり、同僚に十分な情報を提供できないとなれば、相手にとって適切なタイミングで出社せざるを得ません。そうなるといくら制度が整っていても、自分の意思で働く場所や時間を自由に選択できなくなります。
日本マイクロソフトは、どんな場所でも自分のデスクと限りなく同等の生産性を発揮できるようなツールと環境を整え、フレキシブルワークスタイルを実践しています。自分のデスクや自宅といった限られた場所ではなく、会議室や社員食堂、フリースペースなどのオフィス内のデスク以外の場所、さらには客先やカフェなどの外出先、電車やタクシーなどでの移動中でも、そのシーンと目的に合わせた最良のコミュニケーションと業務遂行ができるようになりました。われわれは「場所」を意識する必要なく、自分がいま最大の生産性を発揮できる場所を、自らの意思で自由に選択できるようになったのです。
日本マイクロソフトは2011年2月に、本社を現在の品川に移転しました。移転に先立ち2009年に実施した「ワークプレイスリサーチ」と題した社内調査から、いくつか面白いことが分かりました。
第1に、日本マイクロソフトのモビリティ=自分のデスクを離れる頻度は、同じアジアの他のマイクロソフト現地法人よりも高いことが分かりました。先日ITmedia エンタープライズにも掲載されていたVMwareの調査によると、自宅や移動中に仕事をする人は、中国やインド、韓国などの他のアジア地域では軒並み80%を超えているのに対し、日本は域内で最も低い水準である37%だったそうです。しかし日本マイクロソフトでは、モバイルワークのニーズはむしろ日本の方が高いことを示しています。もしかしたらほかの日本企業でも、ニーズはあるのに許可されていないからできない、そのような環境に対して文句も言わない、ということなのかもしれません。
第2に、従業員が自席で作業をするのは、ピーク時でもせいぜい40%程度であることが分かりました。デスク以外のオフィス内での作業が約20%、残る40%はオフィスにすらいなかったのです。言い換えれば、モバイルワークの生産性向上は、組織全体の生産性向上において非常にウエイトの高い要素になるということです。
第3に、モビリティの高い人と低い人それぞれが選択した働く場所を見ると、モビリティが高まれば高まるほど、「オフィス外」での就労時間が長くなる傾向が読み取れました。会議室の利用時間もやや長いのですが、短いオフィス滞在時間中に定例会議などの情報交換の必要性が増すためと考えられます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.