エンタープライズモバイル戦略を加速する英Vodafone(1/2 ページ)

世界を代表するモバイル関連カンパニーのVodafoneは、自社の業務システムを順次モバイル対応させてエンドユーザーの作業効率化を促進する。

» 2012年06月26日 08時00分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

 スマートフォンとタブレットの波がエンタープライズにも押し寄せている。コンシューマのトレンドがエンタープライズに影響を与える現象は「コンシューマリゼーション」ともいわれ、IT部門に新しい挑戦をもたらしている。

 世界約30カ国でモバイルオペレータ事業を展開する英Vodafoneは、独SAPおよびSybaseの製品を導入し、モバイルでユーザーのニーズに応じるプロジェクトを社内で展開している。「(稟議や経費などの)承認のためにわざわざPCに向かうのでは効率化といえない。日常業務を社員がモバイルでリードするのを支援する」と話すのは、同社のグローバル財務トランスフォーメーションプログラム担当ディレクター、ナイアル・オサリバン氏。Vodafoneのモバイルエンタープライズプロジェクトについて、同氏に聞いた。

「スーパーモバイル戦略」を推進

英Vodafone グローバル財務トランスフォーメーションプログラム担当ディレクターのナイアル・オサリバン氏 英Vodafone グローバル財務トランスフォーメーションプログラム担当ディレクターのナイアル・オサリバン氏

 英国を本拠地にグローバルで展開するVodafone。同社のネットワークを利用する加入者は世界に4億人を数え、売り上げベースでは世界最大手のオペレータだ。オサリバン氏らのIT部門は世界中の拠点に分散する7万5000人の社員にITサービスを提供している。

 Vodafoneがコアのエンタープライズシステムとして、SAP製品の導入を開始したのは約5年前だ。その狙いについてオサリバン氏は、「Vodafoneはグローバル企業であり、グローバル規模でのSAP利用により経済規模を最大にしたかった」と説明する。SAPは1、2カ国をのぞきすべての実装を終えている。実装という点ではプロジェクトは成功したが、問題が浮上した。ユーザーの受けがいまいちなのだ。規模のメリットと迅速な導入のために標準のままでSAPを実装したところ、「直感的とはいえず、使いやすさの点で人気がいまいちだった」(オサリバン氏)という。ユーザーが使わないシステムは、成功とはいえない。

 そんな折に、SAP/Sybaseのモバイルソリューションを知った。「SAP利用を促進して数年経つが、これだと思った」とオサリバン氏。ユーザビリティの改善、モバイル化の2つを一気に前進できると期待してSAPとの共同開発に着手した。モバイルオペレータである同社は社内でも「スーパーモバイル戦略」を敷いており、社員ができるだけモバイルで業務することを推奨している。「承認プロセスのためにPCに向かうのでは効率化は進まない」とオサリバン氏は強調する。

 約7カ月間のSAPとの共同イノベーションプログラムの最初の成果が、出張中の経費計算アプリ「SAP Travel Receipt Capture」だ。モバイルアプリ基盤「Sybase Unwired Platform(SUP)」でSAPと接続し、携帯電話のカメラでレシートの写真を撮影。日時、目的、金額などの項目を入力して送信するとバックオフィスに保存されるというものだ。すでにライブ状態だが、少しずつユーザーを拡大するソフトローンチの形をとる。これには、モバイル特有のある特徴があるという。

「通常のシステムなら一気にロールアウトした後、ユーザーに不具合の可能性を説明すれば、最初の6カ月程度は微調整をしながら使ってもらえる。だがモバイルでは最初の1回目できちんと動かない場合、ユーザーが2度と使ってくれない」(オサリバン氏)

 検証作業を確実にして、きちんと動くアプリを5〜6種類そろえてから、ユーザーにプロモーションをしていきたいという。

画像 「SAP Travel Receipt Capture」
画像 レシートの写真を撮って送ることで出張時の経費計算を簡素化する

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