クラウド運用の一元化を企業に訴求するHP

日本HPの小出伸一社長は、企業のクラウド利用が本格化する中で「コントロールが難しくなりつつある」と指摘し、さまざまなクラウド環境を一元的に運用できるようにするという同社の戦略を表明した。

» 2012年10月10日 07時30分 公開
[國谷武史,ITmedia]
小出伸一社長

 日本ヒューレット・パッカードは10月9日、同社のクラウド事業に関する説明会を報道機関やIT業界アナリスト向けに開催し、「HP Converged Cloud」という事業戦略の現状や顧客企業の動向などを紹介した。

 クラウドはHPの重点領域の1つといい、代表取締役 社長執行役員の小出伸一氏は、「顧客企業を訪問する中で半数以上の企業がクラウドを話題にする。クラウドをめぐる市場競争は『空中戦』から『地上戦』に入ったという印象だ」と述べた。

 小出氏によれば、クラウドを話題にする企業の7割がクラウドのメリットを実感すると同時に、さまざまな現実的課題にも直面しているという。具体的には、プライベートクラウドやパブリッククラウド、その双方を組み合わせるハイブリッドクラウドが広がる中、これらを利用する上で企業としてのガバナンスやセキュリティなどの確保が難しくなり始めた。

 「さまざまな部門が独自にパブリッククラウドサービスを使うといった状況も生じており、中には適切な運用や管理が難しい『野良クラウド』といえるようなものもある。この状況は今後ますます進むとみられ、統一的に利用していける仕組みが重要になるだろう」と小出氏。それを推進するのがHP Converged Cloudだと述べた。

「HP Converged Cloud」のコンセプト

 執行役員 最高技術責任者(CTO)の山口浩直氏は、HP Converged Cloudのコンセプトを「オープンかつ統合されたアーキテクチャによって管理とセキュリティを実現するもの」とし、「選択」「信頼性」「一貫性」が特徴だと説明する。現状ではオンプレミスや各種のクラウド形態がユーザーに応じてバラバラに利用されているものの、今後はそうした使い方を生かしつつ、企業としてコントロールできる仕組みを取り入れるべきだと提起した。

山口浩直CTO

 同社の長年にわたるハードウェアビジネスや近年に買収などで強化したソフトウェアビジネス、顧客企業に対するコンサルティングやクラウドシステムの構築経験、さらには同社がクラウドサービスプロバイダーおよびマネージドサービスプロバイダーとなって培った経験やノウハウが他社には無い強みだとしている。

 説明会では同社のクラウドユーザー事例として、東京海上日動とGMOクラウドの取り組みも紹介した。東京海上日動は、オンプレミスで運用していたメールインフラをHPのデータセンター上で稼働させるMicrosoft Exchangeに切り替え、運用管理をHPに委託するという。GMOクラウドでは同社のプライベートクラウドおよびパブリッククラウドのサービスでHP製品を全面的に採用したという。

 東京海上日動 常務取締役の宇野直樹氏は、クラウド移行について「日本でオンプレミスの運用を継続できると思うが、グローバル事業が拡大する中ではその形を海外拠点でも行うのは難しいと判断した。HPとは1994年来の関係にあるが、顧客向けのクラウドをHPが自社でも利用していると聞き、それなら信頼に足るものだろうと考えている」と述べている。

東京海上日動でのクラウド移行の概要

 またGMOクラウド 代表取締役社長の青山満氏は、「クラウドサービスや電子認証局のビジネスをグローバル展開しているため、HPであれば運用面でも機器調達の面でもグローバルでサポートを受けられる。SLAをプライベートクラウドで99.999%、パブリッククラウドサービスで99.95%としているが、HPの採用で実際にこれを達成できている」と説明した。

 説明会ではまた、インフラシステム事業やソフトウェア事業、サービス事業、システム構築事業の責任者も登壇し、各方面からの同社の特色をアピールした。

 インフラシステムでは例えば、仮想化ハイパーバイザーに依存せずに柔軟な基盤を構築できるオープン性、ソフトウェア事業では脆弱性対策を始めとするセキュリティや運用自動化、大規模データ処理、システム構築では顧客の要件に柔軟に対応できる点などが最大の特徴だとしている。サービス事業は各事業の総合力を結集して強化していくとし、特にマネージドサービスは米国で事業が本格化。今後国内でも本格展開していくという。

HPがクラウド事業で強みと強調するポイント

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