進みつつある自治体連携SFC ORF 2012 Report

市町村長が集って議論する全国自治体ICTサミットが「SFC ORF 2012」の中で開催された。

» 2012年11月26日 18時30分 公開
[伏見学,ITmedia]

 慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)が11月22日、23日の二日間で開催した研究発表イベント「SFC Open Research Forum(ORF) 2012」において、地方自治体の課題解決などに向けて討議する「全国自治体ICTサミット2012」が行われた。

 全国自治体ICTサミットとは、ICTの利活用について自治体首長が議論や情報発信を行う場。昨年のORFに第1回が行われた。今回のサミットでは、自治体の連携(ネットワーキング)をテーマに、各首長が自らの自治体での取り組みや考えなどを発表した。出席した自治体は、岩手県遠野市、宮城県登米市、福島県会津坂下町、東京都多摩市、神奈川県茅ケ崎市、山梨県富士吉田市、大阪府河南町、佐賀県玄海町、岡山県瀬戸内市、茨城県つくば市、茨城県高萩市、埼玉県小鹿野町、東京都荒川区、神奈川県藤沢市、三重県松阪市、徳島県美馬市、高知県仁淀川町、鹿児島県鹿児島市、千葉県千葉市、静岡県富士宮市。

全国自治体ICTサミット2012の様子 全国自治体ICTサミット2012の様子

自治体の業務をいかに共有するか

 現在、地方自治体の業務内容は、それぞれの自治体でまったく異なるというものではなく、共通化できる業務が非常に多い。しかしながら、業務を支える行政システムが自治体ごとでばらばらに導入されているため、「たとえ隣接する自治体でも連携が難しい」(多摩市・阿部裕行市長)といった課題がある。また、各自治体が業務に合わせてカスタマイズしているため、「行政システムは癖があって他者は使いにくく」(登米市・布施孝尚市長)、システム連携が容易にできない状況にある。そうした中で注目を集めているのが、自治体システムのクラウド化である。

 玄海町では、唐津市とともに行政システムをクラウド化し、システムコスト削減や業務効率化を図っていく。来年度にはシステムの移行作業を終える予定だという。その先にあるのは県全体での“自治体クラウド”の導入だ。「自治体ごとに行政システムの更新時期は異なる。徐々にクラウド化を進めていきたい」と岸本英雄町長は述べる。

 また、自治体連携に向けた事例として、富士吉田市では、教職員業務支援システムを新たに構築し、将来的には複数の自治体で利用できるようにする。新システムは慶應義塾大学と連携して開発。同市内の市立小中学校(全11校)において、現在手作業で行っている指導要録や出席簿などの事務作業をシステムによって効率化することを目的としている。具体的には、教育研修所で一括管理する生徒児童の基本データ、学校データ、教職員データと、学校ごとに管理する成績データ、出欠データ、健康データ、クラス編成データなどをシステムに集約し、全校で通信票や名簿、調査書などの帳票として出力できるようにする。また、全校の教職員が児童や生徒の情報閲覧、共有を可能にする。「基幹部分はオープンソースを活用し、複数の自治体で共有可能なシステムデザインにしていく」と堀内茂市長は強調する。まずは2013年度に同市での本格稼働を目指す。

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