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» 2013年03月27日 08時00分 UPDATE

情シス部門よ、ビッグデータ分析を武器に飛躍を【前編】

経営環境が劇的に変化する中、情報システム部門はもはやこれまでのように企業のITインフラやアプリケーションの企画、運用などだけでは存在意義を十分に発揮できなくなるという。では、どうすればいいのか。

[生熊清司(ITR),ITmedia]

変化を求められる情報システム部門

 近年、企業の情報システム部門から、今後の組織ミッションや必要となる人材像の再定義に関する問い合わせが増加している。これは、情報システム部門が将来の存在意義に対して不安を持っている証といえる。この背景には、経営環境の急激な変化、市場のグローバル化、業務におけるITの利用範囲の拡大といったビジネス上の要因と、クラウドコンピューティングの台頭やモバイル/ソーシャルに代表されるITコンシューマライゼーションの浸透という技術的な要因が介在している。

 従って、情報システム部門は、従来の処理時間の短縮や正確性の向上のためにITインフラやアプリケーションの企画、開発、運用を確実に遂行するミッションを果たすだけでは、もはや存在意義を十分に確保することができなくなりつつあり、多くの情報システム部門が将来の方向性を模索しているといえる。

 これまでにも企業におけるIT活用の歴史の中で、エンドユーザー・コンピューティングの台頭、ERPに代表されるパッケージソフトウェアの浸透、IT業務の戦略的アウトソーシングの増加など、幾度となく情報システム部門を取り巻く環境は変化してきた。そのたびに情報システム部門の存在意義が問われてきたが、結局はITシステムを企業内に展開し、運営していく上で技術的な専門性が求められるため、情報システム部門に求められる根本的な組織ミッションが変化するまでには至らなかった。しかし、ユーザー部門が気軽にクラウドサービスやコンシューマーITを活用して業務を遂行できる可能性が高まりつつある現在、情報システム部門は、自ら組織ミッションを拡張していかなければ、将来的に企業内での存在意義を保つことは難しいのではないだろうか。

 では、情報システム部門はどの方向に組織ミッションを拡張すべきなのであろうか。ITRで継続して実施している「国内IT投資動向調査」において、IT戦略の課題テーマを問うている。2013年度は、「ITコスト削減」や「業務コストの削減」を抑えて「売上増大への直接的貢献」が最も重要視される結果となった。情報システム部門が、売上増大に直接的に貢献を図ろうとした場合、最も可能性のある業務の1つとして、マーケティング分野が挙げられる。この分野には、顧客や市場に対するデータ分析、コールセンター、WebやEメールの活用、Eコマース戦略などITが活用できる場が数多く存在しており、最近ではモバイルやソーシャルに代表される新たなテクノロジーとの関連性も高いなど、ITとの親和性が高い領域と言える。

マーケティングとITとの接点

 ただし、ITとの親和性が高い領域であるにもかかわらず、情報システム部門がマーケティング分野に深く関与しているかと言えば、必ずしも十分であるとは言えないのではなかろうか。

 確かにCRM(顧客情報管理)パッケージやデータウェアハウスの導入においてはこれまでも情報システム部門の実績は認められる。しかし、マーケティング分野における潜在的なIT活用の可能性の大きさから見れば、その関与は限定的と言える。特に、今後急速な進展が予測される顧客エクスペリエンスの向上、顧客や潜在顧客の声の収集と分析、ソーシャル分野におけるインフルエンサーの活用といった新規分野に関しては、一部のEコマース企業を除いては、ほとんど手つかずの状況にある。

 また、企業規模の大小や業種を問わずマーケティングにおけるWebサイト活用の重要性が高まっている。以前のWebサイトは企業案内や商品カタログの代わり程度の役割しか担っていなかったが、現在においては、戦略的なマーケティングチャネルの中核を担うものとなってきている。図1は、ITRが2010年にWebサイトの開発や運営に関与している担当者に対して実施したアンケート調査の結果である。これを見ると情報システム部門はITインフラに近い業務では関与している割合は高いが、アプリケーション部分に近づくにつれ関与度合いが下がっていることが分かる。

図1 Webサイトに関する業務担当主管部門(出典:ITR) 図1 Webサイトに関する業務担当主管部門(出典:ITR)

 このことは、今後、パブリッククラウドが台頭した場合、マーケティング部門は情報システム部門に頼らずとも、Webサイトを構築し、運営する可能性があることを意味している。

 しかし、市場への情報発信にとどまらず、市場動向情報の収集、顧客との直接的接点、販売チャネル、潜在顧客の形成など、多様な役割を担う現在のWebサイトは、企業内のさまざまな業務システムのプロセスとデータを連携することが不可欠であり、もはや、Web戦略は企業のITアーキテクチャの一部として取り扱うべきものとなっている。さらに、データ分析はマーケティングにおいて主要な取り組みの1つとなっている。従って、情報システム部門は、これまでのITインフラの整備やデータ基盤とツール提供にとどまらずに、プロセス連携とデータ分析のコンピタンスの提供という組織ミッションを拡張することが求められるのだ。

 次回は、今注目を集めているビッグデータを情報システム部門はいかに活用し、企業のマーケティングに貢献していくべきかについて議論する。

著者プロフィール

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生熊清司(いくま せいじ)

株式会社アイ・ティ・アール(ITR) リサーチ統括ディレクター/シニア・アナリスト

大手外資系ソフトウェアベンダーにてRDBMS、データウェアハウス関連製品のマーケティングを担当した後、コーポレート・マーケティング部門の責任者、アナリスト・リレーション部門の日本代表などを歴任。2006年より現職。現在は、RDBMS、NoSQL、DWH、BIなどのデータ管理と活用に関する製品分野を担当し、ITベンダーのマーケティング戦略立案やユーザー企業の製品活用などのコンサルティングに数多く携わっている。IT専門雑誌への寄稿、セミナーなどでの講演多数。


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