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» 2013年09月26日 08時00分 UPDATE

「垂直統合型システム」に対する思惑

ITインフラやプラットフォームの迅速な構築や統合による効率化を実現する「垂直統合型システム」がベンダー多数リリースされるようになったが、ユーザー企業の関心や導入状況の実態はどうか。IDC Japan サーバーリサーチマネージャーの福冨里志氏に聞いた。

[國谷武史,ITmedia]

「評価するも導入せず」

idc0001.jpg IDC Japan サーバーリサーチマネージャー 福冨里志氏

 2000年代の後半に登場した垂直統合型システム(インテグレーテッドシステム)は、2013年4月時点でNECや富士通、日立製作所、HP、Dell、IBMから20種類以上の製品がリリースされている。IDC Japanが6月に発表した調査結果によると、2012年の国内市場規模は246億2000万円だが、2017年にはその5倍以上の1387億1900万円になると予測されている。順調が見込まれるが、受け入れるユーザー企業にも、提案するベンダー側にも課題は多いようだ。

 インテグレーテッドシステムとは、サーバやストレージ、ネットワーク、管理ツールなどがベンダーの推奨構成をもとに統合化された製品。IDCの定義では「インフラストラクチャ」に特化したものと、これにデータベースシステムなどが追加された「プラットフォーム」に分類される。前者は主にIT基盤の共通化、後者はアナリティクスのような特定目的での利用が想定されている。

 IDC Japanは、この調査で5台以上の物理サーバを利用するユーザー企業にも調査を行っている(有効回答307件)。

 まず、今後2年間におけるインテグレーテッドシステムの導入の可能性について、11段階(スコア0〜10)で評価してもらったところ、「4〜6(可能性は半分程度)」とした企業が、どの人員規模でも最も多かった。次に高いのが「7〜9(導入に前向き)」で、特に2500人以上の企業では51.4%に上る。50〜99人の企業では19.6%が「0(導入しない)」と回答しつつも、23.9%は「7〜9」と回答した。

 次に検討状況について、「評価中」と回答したユーザー企業がどの規模でも最も高い割合を占めた。2500人以上の企業では56.3%、1000〜2499人の企業で47.2%と特に高く、50〜99人の企業でも35.5%に達する。一方、「評価の結果、導入せず」とした企業は、1000〜2499人の企業が19.4%と最も多く、50〜99人の企業でも16.1%に上る。

 IT基盤の共通化を目的とした場合、運用規模も人員規模も大きな企業ほどインテグレーテッドシステムの導入に前向きとされる。調査からも特に2500人以上の企業ではこの傾向が強い。だが、1000〜2499人の企業では「評価の結果、導入せず」とした割合が高く、導入の可能性についても「10(導入決定)」と回答が企業は1社も無かった。

 この点について福冨氏は、流通・小売のように人員規模が比較的多いながら、多数の拠点を抱える業種では拠点ごとに分散しているサーバを、インテグレーテッドシステムで物理的に集約するニーズが低いと分析する。

 インテグレーテッドシステムの導入で期待するメリットは、「管理ツールの削減/スタッフの作業効率の改善」が51.1%で最も高く、以下は「ITリソースの効率化(34.5%)」「ビジネスの俊敏性の改善(32.6%)」「TCOの削減(31.9%)」である。

 なお、インテグレーテッドシステムに移行する上での課題としては、「ITスタッフのスキル不足(52.1%)」や「コスト/ROI改善効果が不透明(46.6%)」の2つが突出して多かった。特に後者の点は、インテグレーテッドシステムの導入コストが高いために、規模の小さな企業では投資対効果をあまり見込めないといったことが理由になっている。

 上述の検討状況に関する質問の回答から、どの規模の企業でも6割以上が「評価」以降のフェーズ(試験中や導入準備、稼働中など)にある。

 サーバーリサーチマネージャーの福冨里志氏はベンダー側に対して、インテグレーテッドシステムの導入でユーザー企業が期待する「導入容易性」「導入工程の短縮」「システムの安定稼働」「ワンストップサービス」などのメリットを踏まえ、「早急にROI(投資収益率)がどのようになるかといった具体的なプランをユーザーに提示することが求められる」と解説する。

ユーザー企業のIT部門に問われること

 インテグレーテッドシステムへの移行課題に挙げられた「ITスタッフのスキル不足」は、主にサーバ管理者とネットワーク管理者が異なるといったIT部門における旧来型の役割分担が背景にあるという。

 アプリケーションなどに応じてサイロ化している基盤を共通化するためには、システム構成や運用状況ばかりではなく、ITを利用する側も含めた全体視点で取り組む必要があるためだ。

 「米国でも、業務プロセスやセキュリティ、ポリシーなどと衝突して失敗している事例がある。業務設計から運用体制まで包括的に考えることが重要で、ユーザー企業はそれができるパートナーに相談すること、ベンダーやSIerもそれをユーザー企業に提案できないといけない」(福富氏)

 上述したように、インテグレーテッドシステムの導入ではコスト削減や効率化に主眼が置かれがちだが、実は「IT部門のこれから役割とは何か?」という命題にも関わってくるテーマでもある。インフラ基盤を最適化した先に、IT部門はどのような形で自社に貢献していくべきか、というものだ。

 「例えば、アナリティクス向けのインテグレーテッドシステムをどう活用するかという点では業務部門が主導することになるだろう。ただ、データを集めて分析するという部分はこれまでのITのアプローチと同じであり、IT部門の力が必要になる。IT部門は業務部門との関わりをしっかり捉えながら、自らの役割を再定義し、プロフィットセンターのような存在にどう変化していくべきかを考えていくべきだろう」(福富氏)

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