Window 7移行プロジェクトを指揮、1万5000台を完遂 マツダ・山根さん情シスの横顔(1/3 ページ)

“XPのサポート切れ”に伴い、マツダは全社員のPCをWindows 7に刷新。リーダーとしてプロジェクトを推進した山根さんは、たび重なる試練を乗り越えプロジェクトを見事成功に導いた。特に最後の半年間では7200台を一気に刷新したという。約3年の歳月をかけた同プロジェクトの全貌に迫る。

» 2013年10月23日 08時00分 公開
[伏見学,ITmedia]

企業のIT部門で活躍する方々を追ったインタービュー連載「情シスの横顔」のバックナンバー

 1920年1月、第一次世界大戦後の特需景気から恐慌へと移り変わろうとする激動の時代に、広島の地で産声を上げた東洋コルク工業。その後、東洋工業、そして1984年に現在の社名であるマツダに変更した同社は、今や世界的な自動車メーカーとなった。

広島にあるマツダ本社(写真提供:マツダ株式会社) 広島にあるマツダ本社(写真提供:マツダ株式会社)

 現在、社員数はマツダ単体で約2万1000人、連結で3万7000人以上。生産拠点は、国内にとどまらず、中国、タイ、来春稼働予定のメキシコなど12カ国に構える。

 そんな同社に1984年に入社し、長年にわたって情報システム部門の現場を支えているのが、山根恵慈さんだ。現在は、ITソリューション本部 インフラシステム部 オフィスインフラグループに所属する。

 入社後、情報システム部門に配属となった山根さんは、大型コンピュータのオペレーターとしてキャリアをスタートした。その後、自動車販売店への出向を経て、再び情報システム部門にてメインフレームのシステムメンテナンス、バージョンアップ、カスタマイズなどの業務を経験した。2004年からはPCを中心にエンドユーザーを支援する現在の部署で働いている。

 170人ほどの人員から成るマツダのITソリューション本部は、大きく4つの部門に分かれている。システムの契約やセキュリティ規定、予算などを統括する「システム管理統括部」、財務、営業、生産管理、人事などのアプリケーションを開発する「ビジネスシステム部」、研究開発にかかわるシステムを担当する「エンジニアリングシステム部」、そして、インフラ基盤全体を統括する「インフラシステム部」である。

 さらに、インフラシステム部は3つのグループで構成。山根さんのいる「オフィスインフラグループ」は、エンドユーザーのオフィス内の仕事にかかわるIT機器全般を担当し、彼らが仕事を円滑に進められることをミッションとしている。そのほか、アプリケーションを構築するためのプラットフォームを用意する「アプリケーションインフラグループ」、サーバ、メインフレーム、ネットワークなどの技術を検討する「技術インフラグループ」がある。

 このたび、オフィスインフラグループにおいて、大規模なプロジェクトが遂行された。それが、「Windows 7の全社展開プロジェクト」だ。

平坦ではなかったWindows 7移行プロジェクト

 同プロジェクト発足のきっかけとなったのは、2014年4月9日(日本時間)にWindows XPのサポート終了を迎えることに伴い、社員PCの刷新が必要だったことである。これはマツダに限らず多くの企業が取り組んでおり、今なおその対応に追われている会社は少なくない。

マツダ ITソリューション本部 インフラシステム部 オフィスインフラグループの山根恵慈さん マツダ ITソリューション本部 インフラシステム部 オフィスインフラグループの山根恵慈さん

 マツダでは、2010年4月にプロジェクトが立ち上がり、2011年4月にWindows 7の全社展開を開始。2013年3月31日に1万5000台の刷新を完遂した。これだけを見ると順風満帆なプロジェクトだったように思えるが、その道のりは決して楽なものではなかった。「本来ならば1年前倒しで終わる予定だったのです……」と山根さんは苦笑いしながら振り返る。

 同プロジェクトは、オフィスインフラグループと外部パートナー企業が約50人、ユーザー部門の各代表が約200人という、文字通り全社を挙げた大規模プロジェクトとしてスタートした。

 元々、マツダでは、IT部門とユーザー部門をつなぐ役割として、各部門にオフィスシステム(OS)を管理する担当者をその部門から選出し、配備している。今回のプロジェクトではその担当者200人がリーダーとしてそれぞれの部門の窓口となったのだ。

 「IT部門とユーザーが一体となって効率的に動けるよう、OS担当者にプロジェクトメンバーに入ってもらいました。どうしてもIT部門のメンバーだけだとユーザー部門に即した話ができないので、OS担当者にプロジェクトの方針や施策を理解してもらい、部門メンバーに伝える役割を担ってもらいました」(山根さん)

 山根さん自身は、PMO(プロジェクト管理オフィス)のリーダーの1人として、ほかの3人と役割分担しながらプロジェクト全体を指揮して進めていった。

 全社で1万5000台のPCを入れ替えるという展開計画はプロジェクト発足時から立てており、最初の段階で既にどのPCをいつどこの部門に展開するのかという詳細までを決めていたという。従って、月々の台数を途中で変更することはできないということをあらかじめユーザー部門と合意を取った上でスタートした。

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