ITの新たな歴史を作っていく――AWS・長崎社長2014年 新春インタビュー特集

いまや企業の情報システムを考える上で無視できない存在になったクラウド。その急先鋒にいるAmazon Web Services(AWS)が描く2014年の展望とは。AWS日本法人・アマゾン データ サービス ジャパンの長崎忠雄社長に聞く。

» 2014年01月01日 00時00分 公開
[本宮学,ITmedia]

――2013年の振り返りをお願いします。

photo アマゾン データ サービス ジャパンの長崎忠雄社長

長崎社長 日本企業の意識が大きく変わってきたことを実感する1年でした。「クラウドファースト」という言葉が示すようにクラウドを一義的にとらえる企業が増え、今ではスタートアップ企業から大企業、官公庁まで、さまざまな業種・規模の組織にAmazon Web Services(AWS)が採用されるようになりました。

 2012年までと比べて最も変化を感じるのは、企業の意識が「クラウドを導入するかどうか」から「クラウドをいかに自社の戦略に取り入れ、いかに使いこなすか」に移ってきたことです。例えば企業内の情報システム部門であれば、AWSをはじめとするクラウドのポテンシャルをIT戦略の中でどう生かすかが話題の中心になりました。

 以前は「クラウド」というだけで不安を抱く企業も少なくありませんでしたが、2013年はそこから一歩先に出られた印象があります。最近ではむしろ、AWSのように世界規模でスケールし、数十万の企業が採用しているサービスであれば、セキュリティ面でも自社でITインフラを構築するより安心できる――といった声もたくさん受けています。

――2013年に特に成果を上げたこと、苦戦したことをそれぞれ教えてください。

長崎社長 多くの国内大手企業に採用されたことは大きな成果だと感じています。この1年で、東京海上日動火災保険やNTTドコモ、日本経済新聞、トヨタ自動車などさまざまな大企業がAWSを本格的に導入しました。こうした事例をいくつも作れたことで、他の企業も安心して利用を始められる“プラスの連鎖”に入ったと感じています。

 利用シーンも広がりました。従来から多かった開発環境としての利用やWebサイト基盤だけでなく、SAPシステムをはじめとするERPや、会計業務のバッチ処理といった基幹系システムをAWS上に構築する企業も現れました。さらに今では、全てのITインフラをAWSに徐々に移行していこうとする企業も登場しています。

 クラウドが注目され始めた当初は「コスト削減効果」に価値を見出す企業が大半でしたが、いまやコスト削減効果は当然のことと考えられているようです。それ以上に、AWS上でシステムを稼働させることでビジネスをスピードアップしたり、AWSの世界中のデータセンターを活用してグローバル展開を強化したい――といった顧客が増えています。

 一方、顧客サポート面ではまだまだ改善の余地があると感じた1年でした。あらゆる層の企業や組織から引き合いが寄せられる中、その全てにベストな対応をするのは簡単なことではありません。例えばAWSをフル活用してくれている顧客が本当に万全なシステム構成を組めているかなど、当社がこれまで以上に支援できることは多々あるはずです。

 2013年にはそのための具体的な取り組みとして、日本でユーザートレーニングプログラムやエンジニア認定制度をスタートしました。さらにユニークな取り組みとして始めたのが「AWS Trusted Advisor」です。このサービスではAWSユーザーの全システムに対してセキュリティ強化や利用コスト削減のためのアドバイスを提供し、これまでに全世界で約1億4000万ドルもの顧客のコスト削減を実現しました。

 自社の顧客に「安くする提案」をするのは、普通のサービス事業者なら考えられないかもしれません。それを当社ができる理由はただ1つで、物事を短期的に見ていないからです。確かに短期的には当社の売り上げが減るかもしれませんが、より長い視点で見れば、顧客の信頼を勝ち得ることに必ずつながるはずです。

――2014年の事業目標を教えてください。

長崎社長 スタートアップから大企業、官公庁にいたるまで、あらゆる業種・業態のビジネスを引き続きクラウドで支援していきます。また、同時に注力するのはパートナー企業との連携です。AWSの構築パートナーや、AWS上で稼働するソフトウェアの開発会社と三位一体となり、日本企業のクラウド化を強力に支援していく所存です。

 2014年も当社の姿勢はこれまでと変わりません。ただし、われわれを取り囲む環境はこれまで以上に急速に変わっていくでしょう。われわれは今まさに“ITの転換期”の中にいるのです。ユーザー企業がクラウドを活用してビジネスを急速に変革していく中、そのスピードをしっかりと受け止め、支援していくことが当社の役割だと思っています。

――最後に、長崎社長が「組織を率いるリーダー」として絶対に譲れないことをお聞かせください。

長崎社長 1つは「顧客中心」で考えることです。ビジネスをする上ではどうしても“会社の論理”で物事を考えてしまいがちですが、われわれは顧客自身の中に答えがあると考えています。その答えを見出すため、社長である私自身も顧客のもとに足しげく通い、常にユーザーの声を聞くよう徹底して心がけています。

 一方、社内ではできるだけ社員が楽しく働けるような環境づくりを心がけています。Amazonには「Work hard, Have fun, Make History」という標語がありますが、私もこれが気に入っていて。特に3つ目の「歴史を作る」については、クラウドで変革を起こそうとしている顧客と一緒になってITの転換を実現していく――これほど楽しいことは他にないと思っています。

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