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» 2014年01月24日 08時00分 公開

2014年 新春インタビュー特集:先端の医療ICTを日本から世界へ――富士通・合田執行役員

日本が世界に誇る医療分野にICTの側面から長年取り組んでいる富士通。同分野を率いる執行役員 インテグレーションサービス部門 公共・地域担当兼未来医療開発センター長の合田博文氏は、2014年に医療ICTのさらなる活用とグローバル展開を目標に掲げる。

[聞き手:國谷武史,ITmedia]

―― 医療ICT分野での2013年のトピックスはどのようなものですか。

合田博文氏 富士通 執行役員 インテグレーションサービス部門 公共・地域担当兼未来医療開発センター長 合田博文氏

合田 ここ数年、大規模病院でのシステム更改が多いのですが、それと併せて300床程度までの中規模病院における電子カルテシステムの導入が加速しています。電子カルテの普及率は、以前は2桁にも満たなかったのですが、2013年は20%近くにまで高まるだろうと思われます。

 その背景には厚生労働省による地域医療再生への取り組みもありますが、特にICTの観点では地域の診療所や医師、拠点病院などをネットワークで結び、情報連携を推進していこうという機運が全国的に広がりました。富士通としても従来の大規模病院向けのシステムを中規模病院でも使いやすいように開発し、精度の高い情報を医療の現場で活用していただけるように取り組んできました。

 例えば、北海道では旭川赤十字病院を中核とする地域医療連携システムを構築していますが、周辺の医療機関との連携や電子カルテによる情報共有が進み、地域医療の向上を非常に実感できるところまで来ています。特に中規模病院は地域の診療所と拠点病院をつなぐ大事な役割を担っていますので、情報活用の取り組みがますます促進されることが期待されます。

 また、スマートフォンやタブレット端末などのモバイル機器を利用した情報活用も広がり始めましたね。従来はセキュリティ要件などから電子カルテの利用は病院内に限られていました。富士通ではデータやネットワーク、デバイスといったシステム全体で高いレベルのセキュリティ対策を講じ、例えば、医師が学会など外出先でも安全に医療情報を参照できるソリューションを提供しています。こうした取り組みは、大学病院などでも高い評価をいただいています。

 山中先生(京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授)も語られていますが、医療が社会に貢献できる点はこれからますます広がっていくはずです。そこではICTの活用もより不可欠になるでしょう。日本の医療従事者は海外に比べて精度の高い情報を活用しているといわれます。海外で先行している研究が必ずしも日本のケースに適合するとは限らず、ICTの活用によって世界の先端研究と日本の先端研究を融合させていくという取り組みも始動しています。

―― ビジネスの観点ではいかがでしたか。

合田 国内では地域医療ネットワークが全国で広がり始めたことやモバイル活用が注目されますが、グローバル市場では当社の電子カルテソリューションをアジア圏に展開できるようになった点が大きいですね。

 医療の情報システムは各国の制度などによるところもありますが、電子カルテは医師が患者の診療内容を記録するというものであり、カスタマイズの伴わないシステムに対する期待が高いといえます。日本では既に2005年頃からパッケージを活用するようになっていましたが、アジア地域でも同様にシステムに運用を合わせていく方が、スピードでもコストの点でも有利だと判断されるお客様が多いようです。もちろん、全てが日本流に合うというわけではないので、富士通の現地法人やパートナーと密に連携しながら、各国のお客様に最適なシステムを提供できるように努めています。

 ただ、一部では国際情勢の影響もあって計画通りに進められないところもありました。

―― 2014年の展望をお聞かせください。

合田 昨年4月に「ライフイノベーション事業部」という組織を立ち上げましたが、ここでは従来の病院における情報システムに加えて、バイオやゲノム、創薬といったより広い領域を含めて社会貢献を目指しています。12月にはセンシング技術や情報の秘匿化といったセキュリティ技術、スーパーコンピュータ技術などの活用も含めた「未来医療開発センター」を設立しました

 富士通グループでは「パーソナル・ヘルス・レコード(個人の医療記録)」を社会貢献に役立てることを目指していますが、こうした新たな組織がその中核を担います。データ活用に加えて、例えば、創薬の分野ではスーパーコンピュータを利用した高精度のシミュレーションなどが不可欠になります。今年は全国の大学病院や研究機関との連携によるこうした社会貢献への取り組みを推進していく予定です。

―― 医療ICTにおける富士通の強みとは何でしょうか。

合田 富士通のDNAといいますか、「まずはやってみよう!」という文化がありますね。いろいろな人々と出会い、語り合い、考え、挑戦します。若い社員でも様々な分野の識者と積極的に交流していますし、社内での提案コンテストではユニークなアイデアが多数登場しています。「こうしたい」という意欲で溢れていますね。医療ICTでは昔から部門や地域といった枠を超えた協働作業が全国で行われており、担当者が専門領域に閉じこもるということも少なく、マルチに活動している点も特徴的です。

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