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» 2014年02月24日 08時00分 UPDATE

IT基盤の共通化を失敗しない理由、王子グループに聞く (1/2)

2008年からIT基盤のクラウド化を推進してきた製紙大手の王子ホールディングス。先進的なユーザー企業としての取り組みが知られるが、その歩みでは“古い概念”からいかに脱却するかがポイントになった。

[國谷武史,ITmedia]

 製紙大手の王子ホールディングスは、グループのIT基盤共通化によるクラウド環境への移行を進めている。その取り組みは仮想化に着手した2008年にさかのぼり、国内ユーザー企業の事例としては先進的といえる。ただ、その道のりは平たんではなかったようだ。このプロジェクトを統括する王子ビジネスセンター 取締役業務本部長の島田政明氏に、仮想化集約におけるポイントを聞いた。

システム管理者の意識改革

島田氏 王子ビジネスセンター 取締役業務本部長 島田政明氏

 王子ビジネスセンターは、王子製紙の情報システム部門を母体とする王子グループのシステム会社として、2001年に設立された。

物理サーバの仮想化に着手した2008年2月当時、グループ内では本体と子会社を合わせて200台以上のサーバが稼働。プロジェクトを立ち上げる以前に一部の就労管理システムで試験的に仮想化を実施し、信頼性や可用性の向上を確認した後、まず仮想化および基盤共通化の対象になるシステムの洗い出しから始まった。

 王子グループでは営業系および工場製品管理の業務にメインフレーム、物流などの業務にUNIXサーバ、会計や人事、調達などの業務にIAサーバを利用していた。

 仮想化はIAサーバで運用するシステムのうち、社内で規定する4つのサービスレベル「S・A・B・C」の中でBランクとCランクに当たるシステムを対象とした。Bランクのシステムは、万一のシステム停止を半日以内とするもの、Cランクは1日以内とするもので、人事や調達、会計などの一部の業務システムやファイルサーバが該当する。

 島田氏によると、仮想化するシステムの洗い出しには半年程度を費やした。というのも、稼働する200台以上のサーバは、同社やグループ会社のIT部門が別々に運用管理する、いわゆる“サイロ化”状態にあり、それぞれのシステムがどのような業務に使用され、重要度はどの程度なのかといった状況を把握しなければならなかった。

 「グループ各社のIT管理者に尋ねると、一様に『システムがダウンしたら困る』と答える。当時はまだ仮想化に不安を抱く人が多く、信頼性を理由に挙げながらも、実際には冗長化していないというケースもみられた」(島田氏)

 サーバ仮想化と並んで、グループのIT基盤を王子ビジネスセンターに集約する取り組みも進められた。グループ会社のIT部門ではそれまで各社が自前でシステムを構築・運用し、社内の業務部門にITサービスを提供していたが、IT基盤の集約によって、以降は王子ビジネスセンターからITサービスを提供してもらう体制に大きく変わっていく。

 こうしたケースでは現場の管理者が「仕事が無くなるのではないか……」と不安に感じるケースが少なくない。島田氏によれば、基盤集約によってグループ各社が自前でITサービスを提供するよりもコストダウンを図れること、IT管理者が運用業務にしばられることなく、IT環境の刷新など戦略的な業務に集中できることをメリットに挙げて、グループ各社の不安を解消したという。

 基盤共通化によるITサービスの提供は、まず2009年9月からグループ本体向けに開始し、2011年5月からはグループ各社への提供もスタート。この時点で50台余りあった物理サーバは6台に集約され、200台以上のサーバが仮想化環境に移行された。現在稼働する仮想サーバは300台以上に増加している。「結果的に、グループ各社から提供の申し込みが相次ぐようになった」(島田氏)

 サービス利用が拡大していくと、今度はITリソースの要求が無尽蔵に増えていく。ITリソースが足りなくなったり、IT部門の把握できない仮想サーバが乱立したりするなど、従前に比べて運用負荷が増すケースも少なくない。だが、王子ビジネスセンターではこうした問題を回避する“ルール”を導入していた。

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