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» 2014年02月25日 08時00分 UPDATE

田中克己の「ニッポンのIT企業」:石狩DCをアジア拠点に! さくらインターネット

データセンター専業のさくらインターネットが、これまでのラックの“場所貸し”から、事業の構造転換を図ろうとしている。

[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]

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 データセンター(DC)専業のさくらインターネットが、ラックの“場所貸し”からサーバやストレージなどITリソースの提供へと事業の構造転換を加速させている。その一環で主力DCを東京や大阪の都市から、北海道石狩市に移す。加えて、サービスメニューの拡充や営業体制の強化、パートナーとの協業体制の整備を急ぐ。

都市型DCを縮小

 さくらインターネットの2013年度(2014年3月期)は、当初予想をやや下回りそうだ。東京や大阪に設置した都市型DCの解約が、同社の予想を上回る速さで進んでいることによる。田中邦裕社長によると、現在、賃貸ビルに設置した都市型DCを縮小しており、東京の2カ所にあった約300ラック、大阪の約160ラックなど、これまで500ラック弱を閉鎖したという。

石狩データセンターの概観 石狩データセンターの概観

 だが、田中社長は心配していない。「7年、8年前まで場所貸しで収益を得ていたが、今はクラウドのビジネスが大きく伸びている。売り上げの3分の2以上はサーバをリソースとして貸し出すクラウド事業になった」。2011年11月、石狩市に竣工した石狩DCがその拠点になる。

 約5万平方メートルという東京ドームの約1.1倍の敷地面積に自社所有のDCを建設する。500ラックを収納できる建屋を8棟建てる計画で、100ラックずつ段階的に拡張できる構造になっている。目下のところ稼働するラック数は約600で、稼働率は8割を超える(2014年1月時点)。

 石狩を選定した理由はいくつかある。1つは、災害に強い場所だということ。地震の発生確率は低く、台風や雷も少ないなど、リスクが小さい。2つ目は、寒冷地であること。暑い夏でも30度を超えないので、冷却に外気を利用できる。3つ目は、札幌市から15kmと近いこと。4つ目は、光ファイバの中継地になっていること。通信事業者の海外ケーブルの陸揚地で、ロシア、ヨーロッパへつながるアジア拠点に発展する可能性もある場所だという。

 ただし問題は、クラウド事業を伸ばしていくための道のりだ。1つは営業力にある。同社DCのユーザーは、ホームページやブログなどに利用する個人が多く、彼らの口コミで利用者が広がっている。ちなみに月額500円程度で利用できるレンタルサーバのユーザーは約40万件もいて、これらユーザーが料金や品質などを評価し、「会社でも使ってみよう」となっている。売り上げが約25億円という利益率の高いビジネスで、田中社長は「このコンシューマー向け事業を大切」にする。だが、競争が激化している。

成長のカギはITパートナーとの協業

 そこで、さくらインターネットは2013年からIT企業との協業に取り組み始めた。自社ソフトとさくらインターネットのクラウド基盤をセットに売り込むIT企業をどれだけ増やせるかだ。現在のところ、オービックのグループ会社、オービックオフィスオートメーションが会計システムに活用するなど、それほど多くないようだ。

 クラウド基盤、つまりパブリッククラウド市場で先行するのは、アマゾン ウェブ サービス(AWS)だ。さくらインターネットは、パートナー制度など、IT企業との協業体制作りに出遅れている。「クラウドは、みんなが使っていることが最も重要なこと。AWSがIT企業から選ばれる理由は、そこにある」と、田中社長は後発と認識している。

 そのため、AWSなど競合のパブリッククラウド事業者との差異化をアピールする作戦を練る。その1つは、物理環境を持っていること。「ユーザーはすべてをクラウドに移行するわけではない」(田中社長)ので、仮想環境と物理環境の両方を持つことを強みにする。自前のDCを持たないパブリッククラウド事業者との差別化にもなる。

 ITベンダーや通信事業者らとの違いも明確にする。ITベンダーはハードやソフトを売りたい、通信事業者は通信回線を売りたい、などとなり、DC事業は既存ビジネスの延長線になっている。「当社は箱を売るのではなく、サーバをリソースとして貸し出している。商材が違う」(田中社長)。既存事業を主にするのか、DC事業を主にするかということだろう。

 サービスメニューも拡充する。2014年2月にストレージのサービスを開始するなど、さらなる強化を進めている。セキュリティ監査などのコンサルティングやサポートも充実させる。例えば、サーバ環境の構築はセルフサービスになるが、その際に「どんな構成にするのが最適なのか」とユーザーが悩んだら相談に乗る、などだ。そうした体制強化に向けて、営業はこの1年半で10人弱から約20人に増やした。エンジニアなどを含めた社員総数も約50人増やし、約230人にした(2014年1月時点)。

 グローバル展開も視野にある。とはいっても、自ら海外にDCを設ける方法ではなく、北海道という地の利を生かし、石狩DCを海外企業や日本企業の現地法人に活用しもらう。田中社長によると、北極海経由の光ケーブルが設置されつつあることから、アジアのDC拠点になり得ることが期待できるという。


一期一会

 田中社長は国立舞鶴工業高等専門学校の在学中に起業した。「モノ作りより、インターネットが面白い」と思って、サーバのレンタルサービスから事業を始めた。だが、単純なレンタル事業ではない。1ラック当たり何台のサーバを搭載し、どう運用するのか、という点に知恵を絞った。例えば、1ラックに通常ならば25台しか積めないのに、倍の50台を積み、かつ効率的な運用を行う。そんなDCの全体最適化に関するノウハウを蓄積してきたのが、同社の最大の強みだ。

 実は、最適化を図るために、自前でサーバを開発したこともあった。今はDC専用サーバがITベンダーから発売されているので、汎用品を使う。しかも、カスタマイズをしないで最適化を図れる。「製造業と同じように、安くて高品質なプロセッシングとストレージ、ネットワークのリソースを提供する」。こう物静かに田中社長は語る。

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