「照準はMicrosoft Azure」、IBMに聞くパブリッククラウドの行方IBM Impact 2014 Report

IBMはラスベガスで開催中の「Impact 2014」で、βサービスで提供するPaaSの「BlueMix」に関するさまざまな強化を発表している。パブリッククラウドの今後の展開について聞いた。

» 2014年04月30日 12時09分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 米IBMは、2月のカンファレンス「Pulse 2014」で新たなPaaS「BlueMix」(βサービス、開発コードネーム)の提供を発表した。4月28日に開幕した「Impact 2014」ではPulse 2014に引き続き、BlueMix関連の新たな施策を発表している。BlueMixを中心とするパブリッククラウドについて同社はどんな方向性を描いているのか。クラウドプラットフォームサービス担当ゼネラルマネージャー(GM)のスティーブ・ロビンソン氏、Rational Software担当GMのクリストフ・クロエックナー氏にそれぞれ聞いた。

パブリッククラウドの舞台は「IBM Cloud marketplace」

 Impact 2014初日に発表された新施策の1つが、BlueMixやIaaSのSoftLayer、約100種類のSaaSの全ての“窓口”になるという「IBM Cloud marketplace」だ。IBM Cloud marketplaceでは開発者、IT部門、業務部門(LOB)のリーダーという3種類のユーザーが、それぞれに必要とする各種のサービスを1つのポータルサイトから利用していく。

クラウドプラットフォームサービス担当ゼネラルマネージャーのスティーブ・ロビンソン氏

 現在提供されるパブリッククラウドは、IaaS/PaaS/SaaSの“窓口”が別々か、IaaS/PaaSでは一緒という形態が一般的になっている。IBMが3つの“窓口”を1つにした理由をロビンソン氏は次のように説明する。

「ユーザーの求めるさまざまなサービスを蓄積してきた結果、各ユーザーがクラウドを介してそれぞれの立場からつながり始めている。従来の形ではサービスの調達に手間がかかるケースもある。IBMとして彼らにどのようなクラウドを提案すべきか検討し、共通性の高いサービスを中心として気軽に試すことができるなど、それぞれのユーザーが相互利用できる形態を提供すべきだと判断した」

 現状ではそれぞれのユーザーの視点から異なるパブリッククラウドが選択されるケースが多い。ただ、システムを大規模に利用するといった場合ではサービスが異なることで、構築や導入、運用などが煩雑になり、多くのコストや時間が費やされてしまうだろう。

 ロビンソン氏は、現在では中小企業を中心に企業の1割程度がパブリッククラウドを選択しているとみる。これがデータの取得や処理などのスピード、あるいはセキュリティに対する不安などの課題が取り除かれていけば、、大企業を含むより多くの企業がパブリッククラウドを選択するだろうと予想する。

 同氏は、「IBMにおけるパブリッククラウドは、Cloud marketplaceが活動の舞台になる」と語っている。

BlueMixの照準はMicrosoft Azure

Rational Software担当ゼネラルマネージャーのクリストフ・クロエックナー氏

 ここ数年でPaaSサービスが相次いでリリースされるようになった。IBMのBlueMixはやや後発にあたるが、競合はどこになるのか――クロエックナー氏は「私たちが見ているのはMicrosoft Azureだ」と明言した。

 IBMはBlueMixにおいて、オープンソースのCloud Foundryを全面的にサポートし、Cloud Foundryを推進するPivotal(EMCとVMwareの合弁企業)とは協力関係にある。OpenSiftサービスを手掛けるRed Hatとも、Linuxを中心とした協業関係は深い。

 Microsoft Azureに対してクロエックナー氏は、2013年にマイクロソフトが日本でデータセンターを開設したことにも触れ、Microsoft Azureがエンタープライズクラスのエコシステムを持った強力なサービスを実現していると評価する。

「IBMはMicrosoft Azureを超えるべきだし、OpenStackやCloud Foundryなど標準でオープンな世界にコミットしている。SoftLayer上で動くBlueMixは限りない可能性を秘めたものだと自信を持っている」(クロエックナー氏)

 BlueMixでIBMは、まず同社が「Systems of Engagement」と呼ぶモバイルやソーシャルといった新しいデータソースからの情報を活用するための仕組みを提供し、将来的には「Systems of Record」と呼ぶ基幹システムなどに蓄積された情報も活用していく仕組みを提供する方針を打ち出している。Impact 2014では統合システム「PureApplication System」で利用されるアプリケーションパターンをBlueMixでも利用できるようにするという方向性も打ち出された。

 「企業でDevOpsによってアプリケーションのライフサイクルを加速し、ビジネスの変革を加速させていくことが求められる」とクロエックナー氏。BlueMix自体もIBM Cloud marketplaceの1つの“要素”に組み込まれていく。

 Impact 2014でIBMは「Composable Business」という新たなメッセージを打ち出した。Composable Businessとは、ビジネスを構成するさまざまな“部品”を自在に組み合わせて新規ビジネスを実現するという概念を指し、“部品”はクラウドやAPIを介して提供されるものだとしている。

 「将来はComposable Businessというスタイルが当たり前となっていくだろう。IBMのクラウドはそれを可能にするパワフルなものだ」(クロエックナー氏)

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